対米従属が使命の自民党政治を打ち破る時が来た
『日本の進路』編集部
石破茂氏は昨年9月、「政治は変わる。自民党は変わる。それを実現できるのは自分だ」と唱えて総裁選を勝ち抜き、総理の座を射止めた。そしてこの9月、「変わらない自民党」らしい党内抗争で辞任に追い込まれた。
間もなく新総裁が選ばれる。マスコミは過剰宣伝しているが、われわれはそんなことに関心はない。
石破氏は1年前に「私などが首相になるようなことがあるなら、それは自民党や日本国が大きく行き詰まった時だ」(石破茂著『保守政治家』)と指摘していた。
今まさに、日本が大きく行き詰まっていることが問題なのである。国民はそのことを生活で実感し、「日本を変える」ことを望んでいる。国政や地方の選挙での既成政党の総後退と「新興政党」の急登場はその表れだ。
自民党だけでなく公明党も、野党の立憲民主党もなぜ国民から見放されたのか問題にしない。どの党も、内外の危機に備えようとせず、党の基本政策を検証せず、「政治を変えられない」党を問題にしようとしない。
根本問題は、国民に向かず「米国を向いた」政治である。ここを変えなくては日本国の危機、すなわち国民の危機の打開は不可能である。
国民生活の危機と平和の危機。それに対処できない対米従属の自民党政治終焉の時が来た。自立日本の姿を鮮明にし、「日本国再生」を実現する政治を急がなくてはならない。
自民党崩壊の最終局面
自民党は「表紙を変えて」乗り切ろうとしている。何度もやってきた。
国民は自民党を完全に見放している。全有権者の中で自民党に投票した人は衆院選では100人に14人(絶対得票率、比例代表)、参院選では12人(同、比例区)に過ぎない。それでも多党化で比較第一党である。
1955年結党からしばらく自民党の絶対得票率は衆参どちらの選挙でも40%前後あった。それが「山が動いた」と言われた89年参院選では17%に激減、93年総選挙で与野党逆転となり自民党は政権を失った(細川政権成立)。すでに90年前後には自民党政治の崩壊過程が決定的となっていた。
その後が自民党の「真骨頂」である。社会党を巻き込み「自社さ」連立政権(94年)、その後は小沢一郎氏を引き込み「自自公」連立(99年)から「自公」連立へ(2003年)。国民の支持を失った自民党はこの30年、他党との連立という政治術策で政権を維持してきた。
だが、自民党支持票はさらに後退を続けた。自民党を離れた有権者は他党支持に回らず、棄権が激増した。かくして今日、自民党政治の崩壊は最終局面に入った。
それでも自民党の老獪な政治家たちが自ら政権を放棄することはあり得ない。野党にも政権亡者はいる。さらなる術策を繰り広げるであろう。自民党政治を根本から打ち破る国民的闘いが求められる。
対米従属の日本の盛衰
敗戦国日本は米軍の直接占領となった。その後米国は、発展するソ連や革命を成功させた中国などの社会主義陣営に対抗して世界支配の強化をたくらんだ。
1951年、サンフランシスコ講和条約と日米安保条約が日本に押しつけられた。米国は「永続的に軍事的に日本を米国に従属させる」(後のダレス国務長官)体制に成功した。
吉田茂首相は「安全保障」を米国に依存しながら、当時世界最大の経済大国であった米国の市場と経済援助にすがり再興・発展を遂げるという日本独占資本の野望に従った。「対米従属・軽武装・経済成長」路線である。沖縄は異民族支配に差し出され、米軍の要塞と化した。米国の余剰農産物を押しつけられ、働き手を工場に奪われ、農業農村は徹底的に犠牲にされた。
輸出大企業中心の高度経済成長で対米従属の日本はある時期「繁栄」した。「安保繁栄論」などと言われた時期である。製造業を中心に独占企業は年率15・7%といった驚異的なスピードで輸出を増やした。戦前はアジア貿易中心だったが、戦後は対米輸出が急増し、重化学工業中心の大企業は急成長を遂げた。「安保繁栄」は自民党長期政権を保障した。国民の生活問題から遊離した野党の弱さもあった。
だがその後、経済関係においてもアジア、とりわけ中国の比重が急激に大きくなる。今日、わが国総貿易の20%が中国、米国は15%、アジア全体では50%であり、戦後一時期の状況は完全に一変した。
対米関係は疫病神のようだ。石破総理は参院選の街頭演説で、「国益を懸けた戦いだ。なめられてたまるか」とトランプの米国に怒りをぶつけた。
国民生活の深刻な危機
衰退する米国は1970年代から日本などへの犠牲の転嫁を進めてきた。自民党政治は抵抗もしたが結局は国民を犠牲に差し出してきた。
とくに安倍政権にいたっては「アベノミクス」などと言って、極度の円安と超低金利で輸出大企業を支えるとともにドルを支え、米国に貢ぐ売国政策を進めた。その経済金融政策の骨格は今も変わらない。その上にトランプ関税攻撃である。国民皆が怒るのは当然である。
さらに国民生活の危機は深刻である。著しい貧困化、賃金水準の低下と格差が広がる。
OECD加盟38カ国で日本の労働者の平均年収は上から24番目である。『新しい階級社会』の著者・橋本健二氏が名付けた「アンダークラス」(パート主婦を除いた非正規雇用の労働者)は890万人で、就業人口の13・9%。賃金は正規雇用労働者の4割強にとどまる。生きていけるだけの低賃金で、未婚率は69・2%、他の階級に比べ際立って高く、男性では74・5%だという。
これが対米従属政治、自民党政治の下で直面した日本社会の現実である。
「自立した国家」へ決断の時
自民党は1955年、朝鮮戦争を経た米国の資金面も含めた後押しで「保守合同」し結党した。米国の狙いは自民党を使って意のままに動く「従属国家」日本を導くことだった。
それから70年、世界は文字通り激変した。米国はもはや政治も経済も世界の中心ではない。衰退した米国は「自国ファースト」で経済も世界戦略も日本などに負担を強要する。「米国に追随する日本」を導いた自民党の行き詰まりは今日必然である。
世界では、米国と同盟関係であった「西側」の国々も、インドのような国も、急速に自立傾向を強めている。そうでなくてはやっていけないからだ。
日本も決断の時だ。日本経団連は7月の軽井沢セミナーで「自立した国家」をめざすことを打ち出した。世論調査でもトランプ関税攻撃や平和を脅かす米国に追随すべきでないとの世論が示されている。
だが、政治、政党は立ち遅れる。与野党どの党もほぼ、「強大化した中国」に対抗するには「日米基軸」は当然とする、旧態依然である。平和と繁栄への国の進路は思いもつかないようだ。
戦後政治の根本「日米基軸」の検証が求められている。賃金など国民生活の大幅な引き上げで国民生活危機突破、アジアと共に経済発展する日本へ。
「日本を変える! 政治を変える!」広範な国民の連合が求められる。