各地の活動 ■ 日中不再戦九州議員の会・訪中報告を広げる

衝撃の「七三一部隊罪証陳列館」訪問を報告

 日中不再戦・平和友好を進める九州自治体議員の会(準)は4月21日~26日、10人の団で中国を訪問した。昨年に次ぐ第二次訪中団で、団長は原竹岩海福岡県議会議員、副団長を中川義行宮崎市議会議員が務めた。団は、北京、ハルビン、瀋陽、撫順の各都市を訪問して各方面の方々と交流し、特に中国東北部では旧日本軍の侵略行為の実相を学んだ。概要については、「日本の進路」6月号で報告されている。
 参加したメンバーはそれぞれの地元で訪中報告会など日中不再戦・友好協力の発展に取り組んでいる。

福岡県の報告会に
中国総領事挨拶

 訪問団としての全体報告会が6月21日、筑紫野市で開催された。報告会は、第一次訪中団に参加した森あや子福岡市議員の司会で進められた。主催者を代表して原竹議員が、会の立ち上げまでの経過、平和こそが大事でありそのために地方自治体の議員が先頭に立つ必要があると挨拶した。
 続いて中国総領事館の楊慶東総領事が来賓挨拶された。楊総領事は、中国と九州との地理的・文化的なつながりを踏まえた上で日本が世界に向けて平和をアピールすることの重要性を語り、そのために中国側もさまざまな交流やイベントなどを通して日本との関係を強化していき、国民感情の改善に努め両国間に幸せをもたらすように努めると述べた。この報告会に総領事が駆け付けられたことからも、中国側からの注目度の高さがうかがわれた。
 次に福岡県人権平和フォーラムの松尾純一事務局長が挨拶され、高校生平和大使の活動などに触れながら、次の世代にどうやって継承していくかといった観点を述べた。
 続いて春口あかね筑紫野市議会議員(福岡県)、牧瀬あき子鳥栖市議会議員(佐賀県)、船原基近大牟田市議会議員(福岡県)の3人が報告内容を分担して、パワーポイントを使っての詳細な報告を行った。
 春口議員は、「世界平和をバックキャスティングから考える」と題して報告し、①日本と中国との比較、②歴史と文化をつなぐ旅、③世界平和をバックキャスティングから考えるという構成で報告した。
 牧瀬議員は、七三一部隊罪証陳列館(中国黒竜江省ハルビン市)参観を中心にして、自分たちが被害のことしか知らずに戦後80年間を過ごしてきたことを、オスプレイが配備されようとしている地元佐賀の現状も交えて報告した。
 船原議員は、九・一八歴史博物館(遼寧省瀋陽市)訪問を中心にした報告を行い、また柳条湖事件現場訪問、撫順炭鉱と平頂山記念館についても述べた。
 中川議員、田上辰也熊本市議会議員、柴田正彦桂川町議会議員(福岡県)の3人からは、自らの議会や地元での活動を通しての報告があった。また何度か中国を訪れた方からは、そのつど変化していく中国のスピードや今や日本を完全に追い抜いているという中国の発展について語られた。資料館での日本語の表記が少なかったことなどについても触れられ、もっと多くの日本人が訪れるべきだとの訴えもあった。
 それぞれの報告が終わった後、8月14日から訪中する若者訪中団について、全体統括をしている大島克彦氏よりその意義が紹介された。その後若者訪中団の長崎のメンバー二人と福岡の一人が、自分たちの思いや決意を語った。自治体議員の活動に続いて若者たちが中国を訪問するということで、以降の展望を見据える上でもとても希望の持てる内容だった。
 閉会にあたって、上村和男筑紫野市議会議員が、まだ準備会であるこの会が各地での報告会などを通して活動を広げて、正式に発足できるように皆さんの協力お願いしたいと挨拶し、和やかな雰囲気の中で会を閉じた。

「日本軍は中国で
何をしたか」報告

 牧瀬あきこ議員は7月5日、「憲法茶会とす」主催の「敗戦から80年を振り返る~いま私たちが学ぶべきことは何か」という集会で、七三一部隊罪証陳列館視察などを報告した。
 この集会では冒頭、元毎日新聞記者で『日本軍は中国で何をしたのか』などの著者でもある大賀和男さん(福岡市日中友好協会会長)が、「日本軍の中国の方々に対する加害の歴史」について講演された。大賀さんは、この第二次訪中団の事前学習会で講師を務められた。中国の戦地を巡る旅を10回以上経験されている大賀さんは、2012年8月に三光作戦(殺し・焼き・奪う)が展開された南京の農村を訪ねた時の衝撃、81歳の老婆が「父親が日本兵に切り殺された」と怒りの表情で訪問団に言い寄ってきたことから話を始められた。
 「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館」、「平頂山殉難同胞遺骨館」などに展示されている写真や、当時の日本の新聞記事など、豊富な資料を駆使して、日本軍が中国で何をしたのかを説明された。
 また氏の父親が中国での戦線に従軍し、病気と戦闘中の負傷で3度入院したこと、なぜか多くの戦地の写真を残していたこと、直接的な行為は否定しながらも虐殺行為にも加担したこと、戦後は戦場での体験がトラウマとなり苛まれ続け、それから逃れるようにアルコールに走ったことなどを報告。「農村の純朴な青年たちが赤紙一枚で徴兵され、戦地では人が変わったように虐殺行為に走っていった。日本に戻った兵士たちは、中国での行為に口を閉ざし、よき夫、よき父として戦後を生き続けた」と語られた。そして最後に、「前事不忘、後事之師」を心に刻み、歴史に学んでいこうと訴えられた。
 続いて牧瀬市議が、ハルビンでの「七三一部隊罪証陳列館」訪問で受けた衝撃について報告した。部隊跡の面積は東京ドーム6個分に相当し、敷地内に鉄道の引き込み線や飛行機の滑走路まであるという規模の大きさはもとより、そこで行われた人体実験や細菌兵器の研究などの非人道的な犯罪行為を直視する必要があることを語った。
 また、七三一部隊の展示を見た夜、同行の春口市議と街を散策して、偶然立ち寄ったお茶屋での出来事を報告した。春口さんと同年齢だという店主から、「何をしにハルビンに来られたのですか」と話しかけられたことから会話が始まり、店主から「歴史を学んでください。そして私たちの世代で友好を築いていきましょう」と語られたということ、民間交流の大切さを強調した。

若者訪中団とも連携し
全九州の運動へ

 これは予告になるが、船原市議の地元大牟田市で8月30日に報告会が予定されている。この会は、県教組の大牟田支部や国民連合・大牟田地区懇談会などの共催で計画され準備中である。
 8月14日から19日までの間、「アジアの平和と未来をひらく」若者訪中団が北京とハルビンを訪ね、大きな成果を得て帰国した。こうした動きと連携しながら、自治体議員の会の正式な発足に向けて努力したいと考えている。

 日中不再戦・平和友好を進める九州自治体議員の会(準)事務局西川真人