広範な国民連合全国世話人会議での発言

若者を先頭に、東アジアで二度と戦争をさせない政治めざして

広範な国民連合 代表世話人 羽場 久美子(青山学院大学名誉教授)

 皆さんこんにちは。三つのことについてお話ししたいと思います。
 今年は、日清戦争130年、日露戦争120年、昭和100年、敗戦80周年です。二度と大陸と戦争をしない、ということを誓いたいと思います。
 国連は創設80周年の記念すべき年です。国連では、原爆投下80周年に核廃絶に向け国際会議なども積極的に取り組まれています。私も4月末、その国際会議に行ってまいりました。

核廃絶、核不拡散の
国連国際会議で

 現在グローバルサウスの国々が、核廃絶、非核地帯の拡大に積極的に取り組み、戦争に反対して平和の声を上げています。グローバルサウス諸国は、今や人口でも世界の3分の2になり、2050年には、GDPでアメリカ、中国をもしのぐと言われます。それらの国々が、戦争反対、平和を訴えていることは大きな意義があります。ぜひ彼らと連携していきたい。
 国連での核廃絶の会議ということで、会場では最初に岩屋外務大臣が発言、広島、長崎からも知事や市長、高校生など若者はじめ多くが参加、発言していました。
 サイドパネルでも広島・長崎が企画した核廃絶、核不拡散条約の拡大の場には、多くの国の代表が駆けつけていました。
 広島・長崎は、核廃絶では先頭に立っており、世界の平和勢力からも支持を得ています。ぜひ連帯していただきたい。沖縄や全国の地域もぜひ核廃絶、非核地帯形成に声を上げていただきたい。

強まる「核抑止」の主張

 他方で、残念なことに、ロシア・中国の核の脅威が強調され、「核抑止」を拡大する傾向も出てきています。米、英、欧州が積極的な核抑止を主張しています。枕ことばのようにロシアの核使用に反対しなければならないとして、核抑止を強調しています。
 しかし、実際に使うのはアメリカだと誰もが思っています。
 昨年12月の国連総会での核兵器廃絶決議に反対したのは、アメリカとインドの2カ国だけです。残念なことに中国も棄権しているという状況です。特にアメリカは2019年にINF(中距離核戦力)全廃条約から脱退して、中距離・短距離核戦力を拡大中で、大変危険な状態にあります。
 核兵器を持つ国と持たない国の政策が真っ向から対立しつつあります。米中が共に短距離ミサイル配備を双方でやっていくことになれば東アジアは非常に危険になります。
 特に中国をにらんで、米軍は在日米軍基地だけではなく日本各地の自衛隊基地、沖縄本島や琉球諸島、山口、秋田などにミサイル配備を拡大しようとしています。政府も核廃絶を謳いながら、日本列島全体がミサイル基地化していく非常に危ない可能性があります。
 日本でも核抑止は仕方がないという考えが特に若者たちにも広がる、大変危険な状況です。

日本全体を「非核地帯」に

 米ロ中に対して核削減の圧力をかけていく必要があります。
 同時に日本国民を守るためには、アメリカの強い反発が予想されるものの日本列島全体を「非核地帯」にしていく、地域を非核地帯にする声明を各自治体が打ち出していく必要があると思います。
 8月の原爆投下80周年に向け、日本とグローバルサウスによる核廃絶、核禁条約、核拡散防止条約(NPT)を拡大していくこと、地域から非核地帯の宣言をしていくことが重要と考えます。
 グローバルサウスなど世界の多くが、核廃絶に向かおうとしているのに、先進国が、いま逆方向に動いています。その危険性を認識していただきたい。日本列島のミサイル基地化が着々と拡大している状況に抗して、日中不再戦、東アジアでの戦争禁止を、アメリカ、中国、世界に呼びかけていく必要があると思います。

トランプ関税攻撃を
日中韓協力のチャンスに

 トランプの勝利の背景の一つには、国内での白人貧困者層の支援がありました。また、戦争を終わらせるということで、これまでにないほど、黒人、イスラム、ヒスパニックの市民の支持を得ました。しかしすべて裏切られつつあります。
 トランプの世界への関税攻撃の打撃は、トランプを支持したアメリカ国内の貧困層へ向かっています。また不法移民逮捕と国外送還が、多くのラテンアメリカの移民の失望を招いています。さらに、ガザ、ウクライナ戦争どちらも終わらせられず、死者が拡大していることでイスラムからの反発も強まってきています。
 そもそも「アメリカを再び偉大に(MAGA)」は、実現できず、むしろ衰退の方向を加速しています。各国25%関税を実施すれば、アメリカのGDPは2・5%下がると言われますから、実際には関税政策は修正せざるを得ないでしょう。
 こうした中で、日中協力など日本とアジアとの協力関係推進にはチャンスとも言われています。中国とASEANの経済協力関係も進んでいます。
 アメリカの関税攻撃に対抗し、アジアとの貿易関係を広げていく方向性が、経済界にも政府にも出てきています。民間、地域においても、これに連動して経済協力を進める必要があります。沖縄の経済界も中国との関係強化が進んでいます。ぜひ各地でもアジアとの経済連携を深めていただきたい。

東アジアとの文化交流、若者交流の促進

 この間、中国との文化交流、経済交流、歴史交流が飛躍的に進んでおり、多くの皆さんが中国を訪れられ、また企画も進んでいます。素晴らしいことで深く尊敬いたします。
 私も昨年、中国の国際平和会議に参加し、グローバルサウスの平和団体と交流させていただきましたし、新疆ウイグルに行きウイグルの方々とも交流してきました。
 自治体議員さんや若者たちの中国訪問の企画をぜひ成功させていただきたい。九州自治体議員の訪中団の報告にあったように、ぜひ、抗日戦争記念館や七三一部隊罪証陳列館など、あるいは南京などを訪問して歴史を体験していただければと思います。とくに若者交流で深い話、戦争の話をお互いに話し合ってみてもらえるといいと思います。ある大学で「南京!南京!」の映画を見せた時に、感想で、日本はやられるばかりで、侵略したとは知らなかった、と言う学生が多くいました。近年、歴史を十分教えられていないわけです。ぜひ行って体験してほしい。ぜひとも若者たちの中国訪問、韓国訪問、交流を実現していただきたい。
 もう一つは、北東アジア8カ国91自治体連合の交流です。日・中・韓・北朝鮮に加え、ロシア、モンゴル、ベトナム、キルギスが参加し、日本からもオブザーバーを含めて14自治体が参加しています。私は、日本の顧問に任命されました。自治体連合にまずはオブザーバーでもよいので参加し、東アジアの自治体との直接交流をしていただければと強くお願いいたします。
 アメリカ一辺倒ではなく、アジアとの連携、日本の市民の貧困化や食料自給の問題やトランプ関税問題などを解決するためにも、選挙での勝利、そして、東アジア、東南アジアの国々との若者交流をぜひ実現していただきたいと思います。
 私も可能な限り一緒にサポートしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 (本稿は5月11日開催の広範な国民連合全国世話人会議での羽場久美子代表世話人の発言を要約したもの)