戦争止めよう! 大分・湯布院の闘い

戦争の火ぶたを切らせない 大分・湯布院の闘い

戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク 大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会
運営委員 池田 年宏

大分駅前スタンディング

一、戦争を拒む大分の思い

 ミサイルを使って殺したいと思うまでに憎い人が、海の向こうにいるのでしょうか。「自衛のため」という大義名分による相手国への攻撃が「報復」を伴うことはないのでしょうか。弾薬庫のある大分市やミサイル連隊の司令部がある湯布院が標的になるのは明らかで、基地の強靱化により自衛隊幹部は守られるとしても、周辺住民や一般隊員の命と暮らしは奪われます。私たちの死は80年前のように「尊い犠牲」として片づけられ、挙げ句、骨や血肉の混ざる土が次なる戦争のための基地建設に使われることになるのでしょうか。
 私たちは加害者にも被害者にもなりたくはありません。戦争を止めなければなりません。大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会(以下、「敷戸市民の会」)は、そんな思いで反戦・平和運動に取り組んでいます。駅前で声を上げ、弾薬庫問題を問うチラシの配布や署名活動を定期的に行っています。
 政府は米軍の「カウンターパート」となる「統合作戦司令部」を発足させました。実質的に自衛隊と国民は戦争遂行を目的とする米軍の指揮下におかれ、平時から戦争指揮体制が確立されることになります。さらに、「『先島諸島』住民の避難計画」が発表されました。まさに「宣戦布告」の一歩手前です。

二、軍拡にあらがい声を上げる湯布院

 「統合作戦司令部」発足の3月24日、陸自湯布院駐屯地では第8地対艦ミサイル連隊配備完結式が行われました。「湯布院駐屯地『敵基地攻撃ミサイル』問題を考えるネットワーク」(以下、湯布院ネットワーク)が指摘していた通り、防衛省は住民にそのことを伏せたまま、少しずつ部隊を運び込み、その日「完結」させたのでした。駐屯地前では「敷戸市民の会」や、2月に結成された「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク(以下、沖西ネットワーク)」の面々も駆け付け、抗議の声を上げました。
 第8ミサイル連隊は、「ミサイル『防衛』の拠点」として沖縄の地対艦ミサイル連隊など5つの部隊を指揮下に置く「第2特科団」の下に設置され、愛知県小牧市にある三菱重工の工場で生産される「12式地対艦誘導弾」や「88式地対艦誘導弾」が配備されることが予想されます。
 湯布院が狙われたのは「近隣に日出生台演習場があり、訓練環境が整っている」から。西日本最大の日出生台演習場では米海兵隊の155ミリ榴弾砲の実弾砲撃演習が強行されており(今年ですでに16回)、近年では米日、英日など多国間での共同訓練が頻繁に行われるようになっています。
 すでに住民の平穏な暮らしと静かな環境はズタズタにされています。この上、この地域の住民に戦争の加害者になれと言うのです。設置に抗し、湯布院ネットワークでは記者会見を開き、防衛省による住民説明会の開催を、市から働きかけるよう求めました。国や防衛省は説明責任を果たすべきです。

三、「九州先行配備」は
「全国配備」の始まり

 時を同じくして、政府は「長射程ミサイル九州先行配備」を打ち出し、中国との緊張をこれまでにないほど高めています。沖縄でなく九州に配備する理由を「近隣諸国の反発を考慮した」と言いますが、あきれるほど稚拙な言い分です。沖西ネットワークの呼びかけにより、沖縄・九州各地で抗議行動が行われました。大分でも、自衛隊の大分分屯地と行政としての大分市、大分県に抗議声明を渡し、文書回答を求めました。
 また、琉球弧の島々に住む12万人を、大分を含む九州・山口に移送する「避難計画」も発表されました。これは防衛省による「抑止力」論の破綻と戦争遂行に向けての意思表示です。国民の基本的人権を保障する意思が政府にないこともわかりました。加えて、軍民分離原則を無視し、民間の空港・港湾を平時から自由に自衛隊が使用できるよう「特定利用空港・港湾指定」が拡大されています。「大分ハローキティ空港」も指定されました。近い将来、12式ミサイルの模型を携え、迷彩服のコスプレをしたキャラクターの着ぐるみが中国からの観光客を出迎えるという光景を目にすることになるかもしれません。サンリオさんはこのような戦争の準備に反対すべきなのではないのでしょうか。

四、軍人と政治家に
とって「分別」は死語か

 自衛隊制服組トップの元統合幕僚長が、「台湾行政院」の政務顧問に就任したのも大問題です。
 私は、人間というものは年齢に従い分別も身につくものだという「見通し」を持っていましたが、とんでもない間違いでした。有事になっても戦地に行かない者が、こともあろうに「仮想敵」として中国を挑発するような人事をよくも引き受けることができたものだと、怒りを覚えます。
 また、「相手の立場に立って物事を考える」能力を持ち合わせていないのか、それとも「確信犯」か、国会議員たる者たちが「正式に」台湾を訪問し、中台両岸の緊張を高めています。
 こうした一つひとつの行いが戦争を引き寄せ、私たちの命を危険にさらすことになっています。

五、韓国民衆の闘いに学ぶ

 韓国では「非常戒厳」の撤回と尹錫悦大統領の弾劾を求め、連日数十万人規模のデモが行われました。民主主義獲得のための闘いにより、大統領の罷免を勝ち取りました。
 翻って日本では、統一教会問題や裏金問題でやましさを持ち、自らの保身と利益を求め国民の生活を顧みることのない政治家たちが、韓国の非常戒厳にあたる緊急事態条項を盛り込む憲法改悪に躍起です。
 戦争を企図するような為政者や軍需産業、一部の金持ちの好き勝手を許してはなりません。

六、「知り、つながり、止める」人類の英知を
集めて

 平和憲法を生かし、現在と未来の世代のために立ち上がる時がきました。自衛隊の増強が着々と進められているというのに、情報は私たちのもとには届かず、テレビは芸能人のスキャンダルやスポーツに興じる変わらない日常が進行しています。
 しかし、戦争の当事者となる高校生や若い世代は少しずつ意識を変えつつあります。沖西ネットワークも、軍拡の火の粉が降りかかる各地の情報を共有し、反戦・平和のために繰り広げられている運動に学び合い、戦争を止めていくために行動を起こします。4月20日の「平和といのちをみつめる福岡大集会」をはじめ、6月には防衛省交渉を予定しています。保安距離や軍民分離原則を無視し、住民の生命・財産を顧みず戦争に突き進もうとしている国や防衛省の姿勢を糾し、全国の皆さんとの連携を進めていきます。
 「あの時、平和のために立ち上がる人たちがいたから、戦争を回避できた」と、教科書で学ぶ未来の世代を思いながら、誇り高く運動を進めていきたいものです。