これ以上沖縄だけに頑張らせないために
慶応大学法学部学生 崎浜 空音
1 私の夢
私の夢は「日米地位協定」を変えることである。そのためにまずは根本となる法を学びたい思い、沖縄から上京した。これまでの沖縄の不条理に対抗し、すべてのウチナーンチュの人権を守るためだ。
日米地位協定を改正することは沖縄のみならず、日本の主権を守り、日本にいるすべての人の人権を守ることにつながると信じている。
2 自分の言葉に
裏切られた
昨年12月22日に開催された「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止求める県民大会」で、私は「もう絶対繰り返さない」そう強く発言した。それは私が2016年のうるま市での女性殺害事件の後の県民大会に参加した時に感じたことからだった。
あの時、13歳の私は大勢の大人が「子や孫のために」そう言っている姿を見て、希望を持った。しかし、その私も大人になり、当時の被害者の年齢を超えてしまった。そして「もう繰り返さない」はずだった県民大会で発言している。
自分が感じたことをもう次の世代には感じてほしくない、そういう思いから「もう絶対に繰り返さない」そう語った。県民大会後、私は安堵していた。声を上げたから、自分は行動した気になってホッとしていた。
しかし、県民大会から1カ月もたたない時に新たな性暴力の事件が発覚した。事件を知って、最初に感じたのは怒りではなく、無力感だった。
私は東京にいて、忘れていたのだ。沖縄の現状を。
沖縄では県民大会を開いても、その次の日には事件が起きる可能性だってある。
しかし、東京にいたらそれを感じなくて済む。授業も騒音で止まらなければ、夜も不安なく歩ける。そんな当たり前の日常に麻痺していた。私はあの県民大会で言った自分の「もう絶対繰り返さない」という言葉に裏切られた。
裏切ってしまった。
3 無力感、そして希望
事件を知り、無力感で何をしたら良いのかわからない日々が続いた。県民大会を開いても、どれだけ声を上げても変わらない、そんな現状に苦しくなった。
しかし、ここで黙り続けるのは自分の思いと違う。この自分の無力感やおのおのそれぞれの想いを皆で共有しようと思った。
1月17日に新宿駅でサイレントスタンディングを行った。30人から40人近い方がたが集まってくれ、おのおのの想いを共有することができた。
先日も、神奈川県で伊勢崎賢治さんを招いての日米地位協定の勉強会に参加した。ここでも、日米地位協定に対して熱く、思いのある人が大勢いるのだと感動した。
日米地位協定は「沖縄」の問題でもなければ、「基地がある県」の問題でもない。「日本の主権」の問題である。
4 沖縄の声
沖縄の女性は、女性蔑視と、米軍の暴圧と、「二重」に人権を侵害されている。私は県民大会でこう述べた。しかし、それは「三重」であったのではと思う。
女性への性暴力の根源である「女性蔑視」
日米地位協定による特権を持つ「米軍」
そして、「沖縄の問題」として目を背ける「無関心」
沖縄は日米地位協定見直しについてずっと声を上げ続けている。国政選挙になれば、候補者アンケートには地位協定の見直しの賛否を問う項目がある。
1996年には日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小について賛否を問う県民投票が行われた。最終投票率は59・53%、そして開票結果は基地整理・縮小と日米地位協定の見直しに賛成が89・09%であった。既に30年前に多くの沖縄県民は基地の整理縮小・地位協定の見直しを求めているという結果が出ている。それなのにもかかわらず、基地はいまだに全体の7割は沖縄にあり、日米地位協定の条文は何一つ変わっていない。日米地位協定は「日本の主権」の問題のはずなのに、沖縄以外で、日米地位協定を変えたいという世論はあるのだろうか。
5 「変えない言い訳」
日米地位協定を変えない、変えられない言い訳として、「外交」の問題を多々聞く。「日米地位協定を改正しようとすると、その他のところで大きな譲歩を迫られる」こういった言い訳を何度も耳にする。もう既に何人もの命や、人権が蔑ろにされてきているのに、これ以上「譲歩」できる話ではないはずだ。失われてからではもう遅い。そしてもう既に失われた命は戻ってこない。石破首相は総裁選もその後も日米地位協定改正を掲げていたが、最近はあまり言及しなくなっている。
「変えなくても国民は怒らない」―そう思っているのではないか。自分の言ったことを守らなければ、政権が危ういというほど、世論はあるのだろうか。
6 「本土」で具体的に行動しよう
私は自分が日米地位協定改定という夢を掲げて上京してきたが、上京し2、3年のうちに沖縄で性暴力の事件が何度も起きた。「いつか」変えるというのは希望が持てるかもしれない。「世論ができてから」といえば、今やらなくてもいい免罪符になるかもしれない。しかし、被害にあった子の人生は、青春はどうなるのだろうか。被害者の人生は「難しい外交・政治」のなかで犠牲になって良いはずがない。
何も行動しなくては世論ができるはずもない。事件が起きてから世論ができるというのも皮肉だ、新たな被害者が出てからでは遅すぎる。
今、私も含め、本土にいる私たちで行動しよう! 沖縄にだけ頑張らせるのはもうやめたい。
政治家・政府を批判するだけでない。世論を作る具体的な案を提示する。
①日米地位協定についての勉強会を開きたい。
日米地位協定について何が問題なのか一人一人がきちんと知り、それを広めていきたい。講師を呼ばなくとも、日米地位協定についての本を読む会など小さなことから始めていきたい。
②地方議会(都道府県・市町村)で日米地位協定改正の議決をしてもらいたい。
全国知事会は既に2度、政府に地位協定の改定を求める意見を出している。これを力に変えていきたい。
皆さんの住む議会の議員さんにアプローチしていただきたい。
③全国規模で日米地位協定改正の是非を問う「全国住民投票」を行いたい。
①、②を行い、一人一人の声を目に見える形で政府に示したい。沖縄だけではなく、全国各地で行い、首相が、政府が無視できないほどの世論を作りたい。
7 もう絶対繰り返さ
ないために
もう県民大会も開きたくない。「子や孫のため」という言葉を自分の子供に言わせたくない。大学生の私に皆さんの力を貸してください。私は「バタフライエフェクト」を信じて行動している。私が直接、日米地位協定を変えられないかもしれない。しかし、ここで行動したことはどこかで世の中が変わる小さなきっかけになると信じている。そのきっかけを皆さんと作っていきたい。
4月19日15時から東京北区でお話しする機会があります。ご参加いただけますと幸いです。詳細と申し込みはQRコードから