中国・朝鮮への戦争態勢構築阻止

〈東アジアの平和〉実現を!

ノーモア沖縄戦・えひめの会 高井 弘之

 いま東アジアでは、戦争への危機がかつてなく高まっている。いや、高められている。
 日本では、「中国への攻撃・戦争態勢」が急ピッチで構築され、沖縄・奄美を中心に中国軍への攻撃用ミサイル基地が次々と造られた。全国各地で、巨大なミサイル弾薬庫の建設が進められ、民間空港・港湾の軍事拠点化も企てられている。そして、米日両国にNATO主要国などを加えた合同軍事演習が中国の近くで、中国に圧力を加える形で、頻繁に行われている。
 朝鮮半島では、米国・韓国による朝鮮民主主義人民共和国への軍事圧力が、かつてなく強化されている。米国は、この1年近くの間に、ミサイルを搭載した原潜や空母、爆撃機などを頻繁に派遣し、朝鮮のすぐそばで展開させている。そして、朝鮮を攻撃対象とする米韓の軍事演習・軍事態勢には日本も加わっている。
 日米欧帝国主義諸国による、かつて自らが侵略・植民地化した中国・朝鮮へのこのような軍事包囲網の構築は、どのような世界史的状況の中で行われているのだろうか。

「戦後の国際秩序」とは

 岸田首相は4月米議会での演説で、「米国が何世代にもわたり築いてきた国際秩序は今、新たな挑戦に直面しています」と語った。
 第2次世界大戦後から1960年代にかけ、植民地支配されていた国々の独立が続く。だが、その多くは形式的独立で、経済的・政治的・軍事的に欧米列強に支配される状況が続いた。
 ただ、帝国主義列強は「先進国」と呼ばれるようになり、元・被植民地などは「後進国・発展途上国」と呼ばれ、その間の支配―収奪関係がもたらす格差問題などは「南北問題」と呼ばれたのである。岸田が言う、米国が築いてきた「国際秩序」とは、このような、「西側・帝国主義国による世界支配秩序」のことである。
 そして、岸田が、その「国際秩序」に挑戦していると見なしている国は、かつて、日欧米に侵略・植民地化された中国・朝鮮や「グローバルサウス」の国々である。

世界史の大転換期の現在

 岸田は、上のような現在の状況を「歴史の転換点」とし、「私たちは今、人類史の次の時代を決定づける分かれ目にいます」とも語った。
 たしかに、いま世界は、「近代500年の歴史―世界の支配構造」の大転換期にある。この「500年間」は、西欧によるその外部への侵略―支配によって徐々につくられてきた「世界の支配・被支配構造」の中にあった。
 特に1800年代半ばから1900年代にかけて、世界各地を侵略し、植民地支配を行った英仏独伊露米日などの国々は、帝国主義列強と呼ばれた。その中心は、世界の覇者としての大英帝国であった。これら帝国主義諸国による世界支配の構造は、その覇者をイギリスからアメリカに交代させながら、第2次世界大戦後も基本的に変わらなかった。

「被侵略・被植民地国」の台頭

 しかし、現在、この構造がその根本から大きく転換している。第2次世界大戦後も世界経済を支配してきた帝国主義諸国―「先進国」は、その経済的地位を大きく落とし、中国・インド・ブラジル・インドネシアなどの元「後進国」に追い抜かれつつある。そして、「西側諸国による世界支配秩序」に異議を唱えるグローバルサウスの国々が、この間、とても増えてきている。米国を筆頭とする「西側」諸国を後ろ盾に行われているイスラエルによるガザへの攻撃・虐殺を止めるために精力的に動いているのもグローバルサウスの多くの国々である。
 世界を自らの利益と欲望に合わせて「秩序化」してきた帝国主義諸国の前には、今、その諸国に侵略・植民地化された国々が大きな存在感をもって立っている。そして、これらの国々は、米欧日諸国と違って、他国への軍事侵略・軍事支配を行わない形で経済発展を実現させてきていることを確認しておきたい。

「軍事帝国主義国としての日本」宣言

 以上のような歴史的大転換期の現在、つまり、岸田の言う「米国が築いてきた国際秩序が新たな挑戦に直面している」今、日本が何をしようとしているかを、彼は次のように語り、宣言した。
 共にデッキに立ち、任務に従事し……なすべきことをする、その準備はできています。/日本は既に、米国と肩を組んで共に立ち上がっています。/日本は長い年月をかけて変わってきました。/日本は国家安全保障戦略を改定しました。/2022年、日本は27年度までに防衛予算を国内総生産の2%に達するよう相当な増額を行い、反撃能力を保有し、サイバーセキュリティーを向上させることを発表しました。
 戦後日本は、米国の軍事力で維持されてきた「国際秩序」のなかで世界からの経済収奪を実現させてきた。欧米日のためのその「秩序」が中国を筆頭とするグローバルサウスの国々からの「挑戦」を受けている(と考えている)今、日本は、軍事力も出して、米国と共に、その「秩序」維持の「任務に従事」するというのである。つまり、岸田の演説は、「日本は強大な軍事力行使を伴う正真正銘の帝国主義国に変わった」という「軍事帝国主義国としての日本」宣言だった。
 現在、着々と進められている日米らの中国・朝鮮に対する軍事包囲網の構築は、以上のような人類史の大転換期において、自らの没落を防ぎ、自らが優位に立つ「東アジア―国際秩序」を維持して世界を支配し続けようとする帝国主義列強の目的・欲望のためになされているものである。

東アジアの戦争を止める!

 近代日本国家は、150年前のその成立以降、周辺諸国への軍事侵略を次々と展開し、膨大な数の人々を殺戮―支配し、アジアの大国となっていった。
 この長い期間、日本は、アジアの人々・国々に対する支配者―加害者として、独自に、あるいは欧米列強と共に、東アジアを軍事的・経済的に侵略し、戦争を起こし、平和を奪ってきた。欧米と共に、東アジアの国々・人々に対してそのようにしたのは、東アジアで日本だけである。
 中国に対する軍事封鎖態勢の構築と戦争は、琉球弧と日本列島を使わなければなし得ない。米国政府・軍部は、はるか遠くからの遠征軍だけで中国に勝利できるという展望をもっていない。朝鮮に対する米国の攻撃―戦争も、七十数年前の「朝鮮戦争」がそうであったように、日本を大規模な後方―出撃拠点にしない限り、なし得ない。
 したがって、日本が、米国によるこの二つの「戦争態勢」から抜ければ、アメリカは中国とも朝鮮とも戦争ができない―戦争をしない。
 私たちは、全国各地・各団体・各個人の連携・連帯態勢を早急につくり、共に力を合わせて闘い、政府の戦争準備を挫折させ、日本を「中国・朝鮮包囲網」から抜けさせなければならない。そうして、今度こそ、東アジアでの戦争を阻止する側に、〈東アジアの平和〉を実現させる側に、私たちはならなければならない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする