「日中不再戦九州自治体議員の会」訪中団 劉 江永

新しい「日中不再戦」の旗で、「日中再正常化」をめざす

中国清華大学国際関係院教授 劉 江永

 皆さん、おはようございます。いま団長の西聖一先生からすばらしいご発言を聞かせていただきました。私も西団長の考え方に賛成です。皆さまはすごく多忙な中、それぞれ地方の自治体議員としてのお仕事をもっていてとてもお忙しいところをわざわざ北京においでいただきました。また、新しい組織というか団体というか、「日中不再戦、平和友好を進める九州自治体議員の会」という組織を発足させたか準備しておられるわけです。そして、一緒になって中国の大地に足を踏み込み、中国の各方面と交流するということです。とてもとてもありがたいことです。


国交正常化を導いた
「日中不再戦」の志

 なぜなのか、皆さまは名簿から見ますと、ほとんど1960年代、70年代生まれの方ですね。皆さんみんな、日中国交正常化の後の両国の友好の雰囲気、地方の友好の雰囲気を自分の体験でよくご存じですね。それが自分の身の中の一部に、知識と体験をしてきてもっているわけです。そこから見ると、今のような中国と日本の関係はほんとに悲しいというか、厳しいものですね。
 ですからこの「日中不再戦」という言葉は、私にとって古い言葉です。つまり山本先生ですね、国交正常化のころ、おそらく若かったですね。当時は、みんなこういう「日中不再戦」という言葉、精神をみんな自分の志というか、「誓い」であったんですよね。それで平和の自分の気持ち、お互いに国境を越えて、通い合ったんですね。また「友好の船」「友好の翼」ですね。西先生は中国から学ばなくてはいけないといった趣旨を話されましたが、そのころは「友好の船」が福岡から出る、あるいは神戸からも出たですね。こうしてお互いに大いに交流していた時代がありました。
 しかし、今現在は非常になんだかみんな心配している状況になってしまっています。安倍さんから今の岸田さんまでずいぶんと変わってしまった。日本の国家安全保障戦略では、今までなかった「中国を最大の戦略的挑戦」と位置づけました。さらにそれを一応根拠にして軍事費を増やしている。もちろんその財源は日本の国民の税金ですね。GDP2%を防衛費として使う。
 しかし、私の知っている限り日本の国民が苦しいですよ。いま他にもいろいろ問題がある。原発汚染水問題とか、また物価の問題、少子高齢化社会の問題……ですね。いろいろ国民が思っていることを日本政府がやってくれてはいない。その逆に軍事増強をどんどん進める。これからおそらく暴走する恐れがありますね。2%はこれからおそらくもっと増えるかもしれない。NATOの基準は「少なくとも2%を永続的に」ですから。日本もそうなるかもしれない。
 歴史を振り返ってみますと、1937年から38年、つまり盧溝橋事件の後、日本が全面的に中国を侵略するころの1年間、そのころの日本の軍事費は、なんと1年間でその前の1年間、38年の軍事費は37年より3倍も増えました。これは戦争のためですね。あとは太平洋戦争のころ、さらに3倍、4倍という。すなわち、戦争する前にバーンと増え、戦争するとさらにバーンと増えるんです。
 今4年間で倍増、しかしその中にはミサイル配備で反撃能力をつくる、それを維持するために実際に2023年に使ったお金、前の年より3倍以上です。つまり、海の向こうの中国、あるいは朝鮮に攻撃できるようなミサイルシステムのために使ったその防衛費ですね。実際には1937年からの戦争するための軍事費の伸び率を超えました。
 こういうのが実際です。なんで中国を敵視して敵基地攻撃のミサイルを買うのか、こういう国防費を使うのか。ほんとに中国にとっても平和を愛する日本の国民にも、なかなか理解しづらい、理解できない、納得できない。そして、そういうふうにやれば日本の安全保障の問題は解決するのか? 解決できない。できない前提で考えている。
 西先生の北京は40年ぶりですね。私も1985年から87年の間、日本に留学していました。そのころの日本は安全ですね。安定ですね。豊かな日本でした。いま毎日テレビで事件が報道されますが、非常にひどい犯罪ですね、ほんとにひどいです。国内の安全を守るのが私は非常に重要じゃないかと思います。
 隣の国との関係はですね、大きな志で解決することが重要です。田中角栄先生、大平正芳先生の国交正常化のころのやり方ですね。その政策は非常に低いコストで両国とも、戦争の時代から平和時代に変われたですね。またさらに、経済交流と協力の中で両国共に平和的に付き合って、また共に繁栄してくれたほうが、むしろほんとの安全保障だと私は理解しております。

平和は中国の国益。中国の平和と発展が日本の国益に

 そういう意味で、皆さまの「日中不再戦」という言葉はですね、私にとって古いものでもありますが、新しいものでもあります。つまり中国と日本は国交正常化してから今51年ですけれども、逆戻りしてしまいました。非常に「正常」じゃないですね、不正常な状態です。だから「再正常化」のために、また「日中不再戦」の、昔の言葉ですが、新しい意味も入っている言葉として、中国と日本の国交を再正常化しなければいけないではないでしょうか。
 そして、皆さん、それぞれ福岡から、熊本から、鹿児島から、九州から中国のことを考えたり、また日本のことを考えたりしていらっしゃるんですね。私は、皆さんは地方の代表なんですけれども、これから日本の政治、こんなになっちゃっていいのでしょうか。裏金の問題、統一教会の問題、これは民主主義社会の政治としてはとてもとてもちょっと恥ずかしいんじゃないですか。だからお願いしますよ。だから地方から中央を変えよう。地方の日本の代表として、日本全体の流れをこれから、変えよう。
 そういうことだと、私は皆さんの会を理解しています、そこが最終的に皆さんがめざしている本当の目的ではないかと。別に地方だから、中央のことはわれわれと関係ない、ではないですね。みんな人民社会の一人ですから、日本のために平和を維持すること、実際は中国のためでもありますよ。中国の国益ですよ、逆に。中国の平和と発展が日本の国益につながるんです。そういうことで、ただ地理的に近い深い関係にある地理条件、それだけじゃありません。高い志、それが平和友好です。平和友好ということですね。これからわれわれの共通の志としてもって、共に張りましょう。

日中不再戦の碑(中国・杭州市)1962年、当時の岐阜市松尾吾策市長の提案で、同市長の揮毫(きごう)
「日中不再戦」と杭州市の王子達市長の揮毫「中日両人民世世代代友好下去」の碑文が交換された。後者は、岐阜市にある日中友好庭園に建立されている。
裏面には「この碑文が日中両国、特に岐阜市と杭州市の平和で友好的な関係促進に貢献し、共に侵略戦争に反対する助けになることを願う」と記されている。