沖縄を再び戦場にさせない 県民大集会へ
沖縄を再び戦場にさせない県民の会共同代表 瑞慶覧 長敏
ずけらん・ちょうびん
東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター長。米州立セントラルワシントン大学、琉球大学卒。元衆議院議員、前南城市長。
「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が今年7月25日に沖縄で発足した。その名の通り、戦争を起こさせないぞという意思で活動する会だ。離島を含む全県的に参加を呼び掛けて、今の時点で(9/18)60を超える個人や団体が呼びかけ人として名を連ねている。最終的には100を超える団体の参加を目指す。大きな数だと言える。
県民の会発足のきっかけになったのが2022年12月16日の岸田政権による「安保関連3文書」の改定だ。国会の審議もされないまま閣議決定という手続きのみであっさりと改定をされてしまった。敵基地攻撃能力を手にしたということはすなわち〝戦争ができる国〟になったということだ。
岸田首相は22年5月、アメリカに行き、すでにその時3文書改定をオースティン国防長官と約束してきている。日本に戻り約束の準備を進め、ついに12月の発表に至ったということだ。何のことはない、日本国民は蚊帳の外でアメリカとの約束事を果たしたということだ。ちなみにオースティンは5月の岸田との会談の後、「核と通常兵器を含むあらゆる軍事能力による拡大抑止への決意を再確認する」と述べている(「沖縄タイムス」5月6日)。
これを言葉通りに取ると、安保関連3文書には〝核〟も隠されているということにもなる。私はこのことについて「東アジア共同体研究所 センター長日記vol・3」(6・6配信)で既に指摘をしている。
さて、そんな中で発足した県民の会だが、準備会の段階でもこれまでに2回(2月と5月)集会を重ねてきた。そのことはすでに『日本の進路』誌でも取り上げられているので詳細は省くが大きな特徴が二つほどある。
一つは政治信条を持たない緩やかな枠で構成された市民団体ということ。つまり、保守だろうが革新だろうが戦争を起こさせないという一点だけでの呼びかけになっている。個人でも団体でも誰でも自由に参加ができる。会費もなしだ(全国の皆さん、寄付やカンパをお願いします)。
もう一つはシニア世代とヤング世代の融合がうまい具合に進んでいる会だということだ。
こういった運動で最も重要なことは、会をどこまで広げられるかだ。広がりがなければ大衆運動とはなりえないし、社会に対して影響も発揮できずに空手形で終わってしまうからだ。このパターンはこれまで何度も繰り返されてきている。だからこそ乗り越えなければならない大きな大きなハードルの一つだ。「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」はそれを今乗り越えようとしている。
私の希望的観測では、私たちはそれを乗り越えられると思っている。なぜなら、ヤング世代に理解を示すシニアたちの存在がヤングたちに安心感を与え、シニアに遠慮せずにヤングたちが発言できる雰囲気が会の中で既に出来上がってきているからだ。事実、シニアには思いもつかない発想やアイデアが打ち合わせのたびごとにヤングたちから出される。そのつど、シニアは度肝を抜かれることになるのだが、何せその斬新さや行動力はすでにシニアの枠を超えるところにあり、われわれからしたらありがたくも受け入れることになるのだ。本当に彼女たちは力強いのだ。ヤングたちの中心は女性たちだということも付け加えておく。LGBTQではそういう言い方はそぐわないかもしれないが、ご了承いただきたい。ぜひともご期待あれ。
9月24日には会設立のキックオフ集会を開催する。老若男女の参加を期待したい。(前ページ写真)
11月23日には会設立後初の大きな集会を計画している。できれば1万人規模の集会にまでもっていきたいと思っている。全国にも呼びかけ、皆さんが大挙押し寄せてくれれば達成できない数字では決してない。
ぜひとも今からその日に照準を当て、知人友人にも声をかけ沖縄に来ていただきたい。冒頭で述べた通り、日本は今危ない国になりかけている。それを止めなければならない。日本の安全保障は沖縄に閉じ込められていると言ってもいいだろう。
米軍だけにとどまらず自衛隊の集中も急激に沖縄に持ち込まれてきている。今まで基地のなかった石垣島に今年の3月自衛隊基地が造られた。突貫工事で進められ、実はまだきちんと完成もしないままでの開所式であった。石垣島では自衛隊設置の是非を問う住民投票の実施すらやらせてもらえないありさまだ。
司法も陰の宗主国に遠慮をする。自国民に説明もしないままでアメリカに行き、大量の武器を買う約束をさせられる国だ。その武器を置く場所を血眼になって確保するため国民の大事な税金が投入され、そして武器代金としてそのままアメリカに横流しされていく。哀れでしかない。
2016年に自衛隊基地が造られた与那国島にはミサイルの配備計画が後出しで発表された。自衛隊誘致を積極的に進めていた前与那国町長が「ミサイルまでは聞いていないぞ」と叫んでも時遅しというものだ。ならば今からでも町民の先頭に立って反対運動を起こせと言いたくなる。宮古島のケースも全く同じだ。弾薬のことは聞いていないとの住民の抗議を受け「説明が不十分だった。お詫びする」(19年、岩屋防衛大臣・当時)との言い訳だけで終わらせている。一事が万事このような状態だ。
中国「脅威」論を持ち出し、「台湾有事」という造語で国民を煽り、何が何でもアメリカのご機嫌に沿うようにしなければならない。国民にはばれないように。
遠く離れた沖縄はそういう意味では都合のいいところだ。いくら沖縄が反対しても声は届かない。辺野古がそれを証明している。自衛隊のミサイル配備化もこれまでのパターンをそのまま踏襲しようとしている。これも明らかだ。
だからこそ今回の県民の会の立ち上げは重要なのだ。今までのように押し切られ、声もかき消され、国のやりたい放題に島々にミサイルが配備され、地下シェルターが造られ、戦争の準備が進められるようになってはいけないのだ。何としてもそれを阻止しなければならないのだ。
先に述べたように、確かに沖縄ではシニアとヤングの融合で今までにない全く新しい動きが始まっている。期待もしてほしい。しかしそれだけで撥ね返せるものでもない。全国の力が必要なのだ。全国の皆さんの力を貸していただきたい。
ミサイルより発電機を! 地下シェルターより電線地中化を! 台風に泣かされる住民の叫びだ。