ナガサキ・ユース代表団第10期生として世界を学ぶ
一人一人が核問題の「当事者」である
長崎大学多文化社会学部3年 猪原 彩美
ナガサキ・ユース代表団第10期生は、2021年11月に就任し、NPT再検討会議への参加のため、22年8月にアメリカのニューヨークを訪問しました。ナガサキ・ユース代表団とは、長崎県・長崎市・長崎大学の3者で構成された、核兵器廃絶長崎連絡協議会が主催する、人材育成プロジェクトです。13年から、核軍縮・不拡散に関する国際会議への参加と、その事前事後の活動を通じて次世代を担う長崎の若者が最新の国際情勢を学ぶとともに、この分野で活躍する世界の人々と出会い、知識を行動に結びつける力を養うことを目指しています。
第10期生の現地滞在期間中、会議は基本的にNPTの三本柱である核軍縮・核不拡散・原子力の平和利用に関する三つの主要委員会がそれぞれ同時に進行しており、メンバーはおのおのの興味・関心に合わせて会議を傍聴しました。最終文書の採択はかないませんでしたが、実際に会議に参加したことでの学びは非常に大きく、核兵器を取り巻く世界情勢の複雑さも実感することができました。
会議と並行して開催されるサイドイベントでは、10期生もプレゼンテーションを行いました。テーマは“Invisible walls”(見えない壁)です。平和や核兵器の問題についての議論をどのように広げていくことが可能か、日本の現状を発表するとともに、世界各国から集まったNGO関係者などとディスカッションを行いました。サイドイベントを通じて、核兵器について考えることのハードルの高さやアクティビストとのギャップをなくす必要性を再確認し、現在を生きるすべての人々が平和について学び、行動するための方法を模索することができました。
NPTにおける核兵器国・非核兵器国だけでなく、NATOなど核の傘下にある国や、条約に参加をしていない核兵器保有国の代表からの意見を伺えたのは、非常に有意義だったと思います。特に、セミパラチンスク実験場での暗い歴史を持つ、カザフスタン大使の“We won’t happen anymore Hibakusha.”(二度と被ばく者が現れないように)という言葉は、重い言葉となって私たちの胸に響きました。
他にも、多くの皆さまと対談をさせていただきました。対談を通して、平和や核兵器のない世界のためには、多様なアクターと連携強化が重要であるということを学ぶことができました。
最後に……
10期生就任後、核に関する専門家や被ばく者の方々などを講師としてお招きし、計20回以上の勉強会を行ってきました。そんなさなかに起こったロシアによるウクライナ侵攻。「これまでの自分の学びや発信などの活動はいったい何だったのだろうか」と、無力感に苛まれたのを今でも覚えています。
また、平和活動をする中で「意識が高くてすごいね」「若者に頑張ってもらわないと」という言葉に違和感を覚えるようにもなりました。現在を生きる私たちは、いつ、どこで、どのように使用されるかわからない核兵器のリスクと共存しており、いつでも「ヒバクシャ」になり得る状況です。誰も無関係ではないのです。
被爆地にいる人や若い世代だけの問題でもありません。一人一人がこの問題の「当事者」であるという意識を持ち、平和について考え、共に行動し続けていかなければならないのではないでしょうか。