いのちと暮らし、平和が問われる
広範な国民連合推薦候補発表に際して
『日本の進路』編集部
統一地方自治体選挙が迫りました。広範な国民連合は全国で多くの仲間たちを推薦し当選のため奮闘します。また、党派に関係なく岸田政権に反対し、アジアの平和・共生をめざすかたがたの躍進を期待します。
この選挙では、それぞれの地域自治体政治の方向が問われるとともに、「歴史的転換期」にある日本の内外での進路が問われます。聞く耳を持たず、中国敵視・大軍拡と国民犠牲の岸田政権に厳しい審判を下そうではありませんか。
とくに住民に身近な地方自治体政治を、一握りの企業・資産家・地域ボスに支配させず、地域住民各層の切実な要求の実現、とりわけいのちと生活を守り、農林漁業振興・地域経済を発展させる地方政治をめざさなくてはなりません。文字通り「誰一人取り残さない」政治、持続可能な地域社会をめざそうではありませんか。アジアの共生で平和な未来を選択する選挙にしましょう。
不満と怒りの意思を示す好機
賃金は上がらず、長く続く自民党政権の下で国民の貧困化は著しく、アベノミクス、コロナ禍、それにウクライナ戦争での物価高騰など、生活困窮が深刻です。この打開は、政治のいま最大の課題です。
ところが岸田政権はこの国民的危機を一顧だにせず、中国敵視に前のめりです。アメリカ発の「台湾有事」を声高に叫び、昨年暮れ、中国を事実上の敵とする「安全保障3文書」を閣議決定、総額50兆円を超す「軍事予算」を組みました。憲法に基づく「専守防衛」原則も投げ捨てました。しかも国民に諮らないままアメリカに行ってバイデン大統領と日米同盟の「現代化」、すなわち「対中国軍事同盟化」を約束しました。南西諸島ミサイル配備をはじめ、全国で軍拡への動きが急テンポです。
平和の危機であり、財源負担と中国敵視政策の経済への影響など死活的な重大事です。
他方、ウクライナ戦争はすでに1年が過ぎ文字通り泥沼化し、さらに欧米諸国はウクライナへの戦車供与で戦闘激化に拍車をかけています。次は戦闘機供与かというありさまです。即時の停戦だけがウクライナ人もロシア人も救う道です。G7議長国だという岸田首相は、まずはそのためにこそ国際社会で動くべきです。
ましてやアメリカの戦争勢力が画策する「台湾有事」を、わが国も騒ぎ立てるなど論外です。「台湾は中国の不可分の一部」は、日中国交正常化の際も、米中国交正常化の際も、あるいはその前の中国国連復帰の際にも、確認された国際準則です。台湾問題の平和的解決を望むにしても、それはあくまで中国の内政問題です。アメリカが軍事介入するなどの干渉は、ウクライナへのロシアの侵略、すなわち「力による現状変更」そのものです。
ましてや日本がアメリカに追随し、南西諸島と日本全土を戦場化するなど絶対に許されません。戦争は始まるとすべての壊滅まで止めるのは容易でありません。
アジアの平和・共生だけがわが国の生きる道です。国の進路について国民的な議論と選択が必要です。平和確保の国民世論のうねりをつくり出さなくてはなりません。
来たる統一地方選、それに4月23日には衆院のいくつかの補欠選挙もあります、国民の意思を示すチャンスです。岸田政権の中国敵視、軍拡政治に異議を唱える声を上げようではありませんか。地方選挙とはいえ、かつて党幹事長だった小沢一郎氏が自民党敗北で辞任に追い込まれたこともありました。岸田政権を追い詰める選挙にしようではありませんか。
自治体政治には大きな役割が
地方選挙の直接の選択は、地方自治体政治の方向です。
現状の地方自治体政治はコロナ禍で、いのちと生活危機に必要な手を打っているでしょうか。「農業崩壊」と言われる酪農・畜産・コメなど農業危機に、地域の商工建設業の経営危機に手を打てているでしょうか。地方財政の危機的状況が続いていますが、自治体政治を牛耳る一握りの地域ボス支配が続いているのではないでしょうか。軍拡と平和の危機ですが、「国の専権事項」とばかりに手をこまぬいてはいないでしょうか。
「地方主権」などは掛け声だけで、国の地方政治への干渉と国家統制、圧迫が強まっています。かつては「3割自治」などと言われましたが、「1割」も自治権があるのか。辺野古新基地建設問題での沖縄県が象徴的ですが、全国自治体で同じような状況です。
それだけに住民のいのちを守り、農林漁業と地域経済を振興する、とくに安全安心な食料と自然エネルギーの地域自給で持続可能な地方・地域をめざさなくてはなりません。さらに平和を守るために、地方自治体がやらなくてはならない、やれることはたくさんあります。
かつて1970年代、全国を襲った公害に反対し住民のいのちと健康を守り、また、子どもや高齢者の生活を保障する施策を地方自治体が政府と闘って率先して実現しました。今こそそうした地方自治体政治が求められます。住民のいのちと暮らしを守る地方政治を実現する自治体首長を、議会勢力を前進させようではありませんか。それを支える強力な地域の運動を前進させようではありませんか。
まずは国民のいのちを守る
岸田政権は、コロナ感染症の法的位置づけを変更します。しかし、新型コロナウイルスがそれを聞いてくれるわけではありません。これまでも無策・経済優先の政治の結果、「自宅放置死」といった事態が続出していました。「有償化」で住民負担増も避けられません。政府は国民のいのちを守る責任を放棄したのです。地方自治体が果たすべき課題はいっそう増えざるを得ません。
住民のいのちと健康を守り生活を維持する自治体をめざしましょう。
政府の進める「病床削減計画」に反対し撤回を求めるとともに、自治体独自での抜本見直しが必要です。コロナ感染症で崩壊が露呈した救急医療体制の抜本改善と公的医療・介護事業への支援拡充が求められます。エッセンシャルワーカーの待遇抜本改善を自治体独自でも進める必要があります。
国による生活保障体制の確立が求められます。しかし、現状も生活保護制度があるにしても、実際に対象となり受給できている人は基準のわずか10分の1程度です。権利としての制度周知徹底もまず必要ですが、申請を諦めさせる親族への「扶養照会」制度が大きな問題です。都内23区や市でも照会実施率に大きな差があります(本誌22年11月号15ページ)。コロナ災害対策自治体議員の小椋修平さん(足立区議会議員)は全国自治体での取り組みを呼びかけています。
今年度、全国の地方自治体としては初めてだろうと注目されるコミュニティフリッジを東京板橋区が開設します。いわば「公共冷蔵庫」で、登録が必要ですが食料に困った人が立ち入って必要な食材を手に入れることができる仕組みです(本誌14ページ、五十嵐やす子さん参照)。区予算には子ども食堂立ち上げへの支援も盛り込まれています。
地方自治体が非課税世帯や生活困窮の住民にコメを配布する動きも広がっています。ひとり親家庭の支援団体でつくるシングルマザーサポート団体全国協議会の調査では、コメが買えないことが「よくあった」「ときどきあった」を合わせた割合は6割弱に上るといいます。JAの青年部や女性部でも取り組みが強まっています。滋賀県愛荘町では昨年12月から、「子育てエール米」と名付け、中学生以下の子ども1人につき10キロの配布を始めています。地元JA東びわこが、同町産「みずかがみ」30トン以上を供給するといいます。
緊急の生活危機対策としても、地域の農業を守る上でも、こうした取り組みをぜひとも全国の地方自治体に広げたいものです。(16ページ、鈴木宣弘先生参照)
農業・食料、エネルギー危機打開、地域経済活性化
地域経済の基礎である農林漁業を再興し、自営業や中小企業などを支援し地域経済の振興を図ることは、いま自治体の最大の課題のひとつです。
すでにさまざまな取り組みがありますが、まずは原材料や電力・燃料価格高騰対策で自治体の直接支援を強める必要があります。
住民への安全安心な食料自給と食料安全保障の実現は大きな課題、世界的な食糧危機の中で、わが国政治の最大の課題の一つです。政府に抜本的対策を強く求めなくてはなりません。食料の地産地消へ地域の基幹産業として農林漁業を再興し、食料自給を実現することは、「一極集中」を是正し、全国隅々まで「生きられる」持続可能な国土をつくる、これからの日本の進むべき道です。
さしあたって自治体でできることを具体化することも重要です。まずは、文字通り危機的状況に直面した酪農・畜産業への直接支援が必要です。
地域での需要喚起、地産地消を地方自治体が率先して進めることも重要です。まずは、学校給食の完全な無償化と地域自給の農畜水産物中心の給食をめざす必要があります。兵庫県豊岡市は、市内小中学校の学校給食で使用するコメ全量を市内で収穫した有機栽培米で賄う方針をJAたじまと連携して実現するそうです。宮城県は、パンに向く品種の栽培を増やし22年度から県内学校給食パンの原材料を100%国産にしました。5割が県産で残りは北海道産といいます。これを広めるには輸入小麦との価格差を自治体が補塡する必要があります。
企業の農地取得について政府は、国家戦略特区の全国展開から方針転換し、地方自治体ごとに取り組む「構造改革特区制度」に移行する法案を今国会に準備しています。世界的な食料危機の中で食料安全保障の重要さが指摘されながら、政府の動きはまったく逆です。企業は言うまでもなく利益第一、食料安全保障とは両立しません。自治体ははっきりと反対を表明し、拒否すべきです。
原発反対、脱炭素推進、自然エネルギーの地域自給推進
地球温暖化の「気候変動危機」は全世界的な課題です。
ところが岸田政権は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)などと言いながらやっていることはまったく別、まさに羊頭狗肉です。化石燃料の輸入依存は変わらず、全国各地で石炭火力発電も続いています。ましてや原発再稼働、あるいは運転期間延長、「次世代革新炉」などという彼ら得意な言い換えでの「建て替え」、さらには「原子力研究開発」という新設策動など論外です。間もなく東日本大震災、「フク2」事件から12年、教訓を忘れてはなりません。「汚染水」海洋排出も許してはなりません。「最終処分事業」を、話ではなく現実に変えられるめどは立つのでしょうか。
エネルギーの地域自給確立は持続可能な地域社会のために不可欠です。再生可能な自然エネルギーの地域自給体制確立を自治体が先頭に立って大胆に進める必要があります。太陽光、風力、小水力、地熱など、あるいは地域林業の活性化で小規模木材バイオ、酪畜産業への支援を強め畜産バイオなどで地域電熱併給など、先進的な事例が全国の自治体に広がっています。これら先進自治体に学び全国で進めましょう。
地域経済活性化では、コロナ感染症でストップしていた外国人観光交流の再開支援も重要です。観光や小売業など地域経済界には期待も高まっています。インバウンドの中心はなんと言っても近隣諸国、中国(台湾や香港を含む)、韓国です。しかし、わが国政府の敵視政策の影響で両国国民の対日感情には改善の兆しはあるものの厳しい状況もあります。自治体の独自努力で中国や韓国との友好都市関係を強化することが重要となります。自治体トップや議会議員団が訪問するなど、率先して働きかけ友好交流、観光客誘致を進める必要があります。
地域経済界と中国などとの経済関係強化を支援することも自治体の大きな課題です。日本の輸出(21年)の58%はアジア、中国が22%ですが、とくに九州地域はアジア、中国への比率が高いものがあります。大阪を中心とする近畿圏も、輸出の68%がアジア向けで、とくに半導体など電子部品中心に中国が26%です。
アメリカの中国敵視政策の影響で、わが国政府でも対中デカップリングなどの敵視政策が強まっています。こうした中で、地域経済界と中国との関係を自治体が支援することも重要です。
地域経済のために地方自治体がやらなくてはいけない、できることはたくさんあります。
小麦や大豆など農産物や石油、石炭などの資源はほんの数社の欧米系メジャー(コモディティ商社)が支配する。それを大量に年間40兆円以上も輸入し、農林漁業は「崩壊」、エネルギー自給率わずか10%といった「この国のかたち」を変える時です。地方自治体には大きな役割があります。
平和を守る自治体の大きな役割
岸田政権は「ウクライナは明日の東アジア」と台湾有事=戦争をあおっています。中国との断絶、戦争はいのちと経済崩壊の危機です。自治体にはやらなくてはならないことがたくさんあります。
まず、地方自治法に基づく、「安保3文書閣議決定の撤回を求める意見書」を3月議会をはじめ地方自治体議会から、政府と国会に提出することを求めます。
安保3文書によるミサイルによる敵基地攻撃は、反撃を招くだけです。与那国島や石垣島をはじめ南西諸島だけでなく、全国の米軍基地、自衛隊基地が対象となるのは避けられません。事実、自衛隊でも基地司令部の地下化などが進められています。シェルター建設や住民の「避難計画」策定などのように、「反撃」を受ける、国民犠牲が前提です。反撃の危険を高めるミサイル配備や基地機能強化などに、住民のいのちと安全に責任をもつべき地方自治体として反対を明確にすることを求めます。
さらに、空港・港湾など自治体が管理するインフラを戦争に使わせない態度を鮮明にすることも重要です。自治体として戦争への総動員体制づくりに協力しないことです。
中国敵視ではなく、政府に近隣諸国との平和外交を求めることこそ地域住民のいのちと安全を守る道です。
地方自治体独自の平和外交も重要です。沖縄県は、4月から「地域外交室」を設置し自治体外交を強化します。こうした動きは大変重要です。
すでに47都道府県のすべて、全部で379の地方自治体が中国の省県市などと友好姉妹関係を結んでいます。各自治体、その議会は、平和都市宣言、非核都市宣言などを行っています。それを活性化させ前進させる取り組みが重要となります。
特に日中関係は今年、両国の平和友好繁栄を両国間で条約として確認した日中平和友好条約から45周年を迎えます。政府のように「敵対」を煽るのではなく、「平和友好」を促進する取り組みが重要です。
岸田政権を追い詰める選挙に
岸田政権を追い詰め、自主・平和・民主の日本をめざす政治の前進を促す統一地方選挙にしようではありませんか。
さまざまな世論調査を見ても、あるいは最近の地方選挙の結果を見ても国民は政治に変化を求めています。岸田政権は交代せよ!でしょう。
広範な国民連合は、この重大な統一地方選に際して、賛同会員の候補者を推薦・支援するとともに、中国敵視に反対しアジアの平和・共生をめざす地方自治体議員が全国で前進するよう応援します。
全国で協力し合って岸田政権を打ち倒し、平和の大きな流れを促進したいと願っています。