沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム

沖縄会場と日本全国、中国、韓国を結んで開催。
恒常化を確認 

■8月7日、那覇市

 「沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム」が8月7日午後、沖縄県那覇市の自治会館ホールで開催された。同時に、オンライン配信され、日本全国と韓国や中国でも視聴された。日本と沖縄、中国、韓国の専門家らが登壇し沖縄を軸とした平和構築の課題について提起、議論した。シンポジウムは、自主・平和・民主のための広範な国民連合が提唱、主幹し、実行委員会が主催した。

 シンポジウムは、折からペロシ米下院議長が台湾を訪問し蔡英文「総統」と面会し、「台湾独立」を煽るなど「一つの中国」の原則を無視する暴挙に出て、中国が激しく反発し実弾軍事演習を行うなど非常に緊張した雰囲気の下で開催された。各発言者は「台湾は中国の不可分の一部」との国際的合意を覆そうとする米日政府の策動を糾弾し、沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワーク構築を呼びかけた。「台湾有事」を絶対に起こさせてはならない。そのためにも東アジアに平和協力のネットワーク構築・信頼醸成を提起し、「東アジア共生」へ重要な意義あるシンポジウムとなった。
 シンポジウムは、山内末子・沖縄県議会議員の司会で始められた。冒頭、広範な国民連合・山本正治事務局長が、「広範な国民連合が提唱したが、参加の皆さま方全員が実行委員会、共同の取り組みとして成功させたい」などと、経過と意義などについて報告した。
 来賓として予定していた玉城デニー沖縄県知事が濃厚接触者ということで参加できず、メッセージが代読された。続けて、鳩山友紀夫元内閣総理大臣・東アジア共同体研究所理事長が問題提起を兼ねた来賓あいさつを行った。「台湾有事を絶対に起こさせてはならない」「トゥキディデスの罠の米中対立の中で米国一辺倒の日本を避けるべき」などと提起した(別掲)
 青山学院大学・羽場久美子名誉教授(神奈川大学教授)が、「沖縄をハブとし、東アジアの平和ネットワークをつくる! 中国、近隣国とは戦争しない!」と基調的な問題提起を行い、それを受けて中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長、韓国ポリテク大学の朴相鉄教授がオンライン参加発言。さらに沖縄から、琉球大学・上里賢一名誉教授、屋良朝博・前衆議院議員がコメントを述べた(以上、発言は別掲)。
 以上を受けて、沖縄の若い世代が、本シンポジウムを通じて東アジアの平和と友好の重要性を改めて深く感じ、本日討議された課題ができるだけ早く実現できることを心から願っているとの感想と決意を表明した。

尖閣の話からいつの間にか大陸攻撃のミサイルに

石垣市議会議員(農業) 花谷 史郎さん

 最近、「台湾有事」がにわかに現実的になりつつあるかに言われる。奄美大島から与那国島までの南西諸島に陸自配備が急速に進んでいる。その一つが石垣島で、基地建設が進むすぐ近くの出身で、反対運動をするなかで議員に押し上げられた。当初は、「尖閣が危ない」というような話から抑止力強化とか言われていたが、だんだんに話が変わってきた。配備のミサイルだが、以前は尖閣までしか届かなかったものが今や中国本土まで届くような900キロとか1500キロの射程のものを配備する、相手の国土も攻撃していくというような議論までされている。日本が戦争をできる国、仕掛ける側になっていっているかの印象ですごく危機感を覚える。
 そうした中で、今回のテーマでもある沖縄をハブとして平和ネットワークをつくっていく、市民レベルで戦争を止めるために声を上げていくという画期的で、すごく理にかなった活動だと思って私は石垣島から来た。ぜひこれを実現するために運動を継続していきたい。
 石垣市の中にある尖閣諸島のことについて。先日、台湾に行ったペロシ米下院議長の行動は、「台湾独立」といったものを煽る、世論をミスリードするものだった。尖閣についても同じで、中国のプレッシャーがどんどん強くなっているような印象がつくられている。しかし、実際は違う。尖閣国有化の時には平均して月5回以上の中国側の領海侵入があった。実はそれがどんどん減ってきて今は2回から1回ほど、半分以下まで減っている。先日も64~65時間程度、最長の領海侵入があったということで中国がかなり圧力を強めてきているような報道があった。
 これは実は、ある勢力の政治的パフォーマンスだ。遠くの尖閣近海までわざわざ漁をしに行く、政治的主張のために漁に行くのだ。先日は、その人が65時間ぐらいそこで漁をしていたので、それに対応して中国が長時間いたというだけの話だ。ペロシと同じ、「煽り行為」に対して中国が反応したというのが実際ではないか。そういった事実をしっかりと認識し、冷静に対応する必要がある。
 これから私たちの世代、あるいはもっと若い世代の人たちが中国や韓国、さらに台湾のことを理解して、文化交流やスポーツ交流、あるいは経済交流を進めることで、「不測の事態」を起こさせない、緊張を緩和するバッファの役割を果たしていくと思う。そうした運動を進めていきたい。ぜひ皆さんの協力を得ながら、この沖縄をハブとして平和ネットワークを形成し、戦争をさせない地域を実現していきたい。

ネットワークを広げて、情報に踊らされない

ゼロエミッションラボ沖縄共同代表 神谷 美由希さん

 皆さんのお話を聞いてすごい危機が迫っているのだ、選択を迫られているすごく大事な時にきているんだなということをすごく感じた。羽場先生の提案の中で東アジアの市民同士のつながりをつくっていこうという話にすごく共感した。
 私の経験として去年、日本と韓国の平和外交のプログラムに参加した時に、沖縄で県民投票とか選挙運動とかのとき、無視されてすごくつらい状況だったという話をした。そしたら、韓国の方が「連帯しましょう」って言ってくれて、すごく希望を感じてとても感動した。
 メディアに踊らされず、中国や韓国との交流・協力を積極的に展開し、沖縄を東アジア交流の窓口にしたい。交流することで人は絶対変わっていくと思う。戦争したくないよね、誰も命を落としたくないよねっていうところの本質に気づくと思う。国際交流はすごく楽しいことなので、それを私たちの世代とかもっと下の世代が、楽しくて共感し合える活動を進められたらいいなと思う。ネットワークを広げて、情報に踊らされないような沖縄にしていきたいなって改めて思っている。

 (東アジア共同体研究所琉球・沖縄センター若者チームの一員)

戦争を防ぐ上ですごく大事な時期にきている

沖縄国際大学学生 我如古 ももこさん

 沖縄国際大学の4年生です。
 今回、先生方のご講演を聴いて、ウクライナ戦争とか、台湾有事とか紛争とか、あるいは戦争を防ぐ上ですごく大事な時期にきているんだなと改めて思った。1年生の時に、大学の調査研究で離島への自衛隊配備について関心を持って、石垣島の現地に行ってヒアリングもしたことがある。「自衛隊配備についてどう思いますか」と聞いてみたのだが、「こういう小さな島だから、そう簡単に賛成・反対って言えないよ」言われた。改めて、結構デリケートな問題なんだなって思った。
 台湾有事とか、領土問題とか、そういうことをきっかけに自衛隊配備が始まった中で、沖縄戦の二の舞いのようなことは許してはいけないという問題意識から調査をしていて、今回のシンポジウムにも参加した。琉球・沖縄の歴史に基づいて、沖縄の島嶼性を生かして、沖縄を貿易と平和ネットワークのハブにしようっていう提言があった。それを実現してほしいなと改めて思う。戦争の芽を育てるのではなく、その芽を摘むのが政治の仕事だ。今、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問して、脅威論が煽られている。こういう時期だけに戦争の芽を摘んでいく努力が必要だと思った。

アジアで戦争の危険が高まって

沖縄国際大学大学院生 前泊 和沙さん

 沖縄国際大学大学院生です。
 「東アジア共同体」について学んでいる。この東アジアに、アメリカだけでなく、イギリスまでが空母を派遣したりしているが、欧米諸国が軍隊を送り、このアジアで戦争の危険が高まるのはすごく怖いことだ。ペロシ下院議長の台湾訪問について、もしかして何かあるかもしれないと思って、台湾にいる友人に聞いてみた。すると、「一部の人はすごく盛り上がっているけど、多くの人は普通にどうってことないと見ている。どちらかというとお祭り感覚みたいなものがある」と言っていた。だから、台湾の人や中国の人とも話をして、どういうふうに思っているかを聞かないといけないと思った。平和ネットワークについて、沖縄県の振興計画に前から書かれているが、現状そんなうまくいってないように思える。かつての大田県政の時の「基地返還アクションプログラム」のような新たな計画も必要ではないか。

青年たちが平和のネットワーク形成のために
頑張るのを応援する

日中友好会館理事 黄 星原さん、参議院議員 伊波 洋一さん

 日中友好会館(東京)中国代表理事の黄星原さんは、「世界観」「中国観」を見直し中国と国際社会への誤解とミスリードを避けること、戦争のリスクをなくすために内政不干渉を貫き自分の価値観を押しつけないこと、沖縄から発出される平和提案を人類文明のコンセンサスとし強権的な政治に代わって運命共同体の理念を持ち、平和のカギを私たちの手に握ろう、と呼びかけた(詳細)
 参議院議員の伊波洋一さんは、「これまで国民連合が呼びかけて参議院議員会館で『日中国交正常化50周年をどう迎えるか』との懇談会を行ってきていました。そうした中で今日のこのシンポジウムとなりました。羽場先生の提起はそうした流れの中でお話しいただきましてありがとうございました」「その上で、先ほど若い方々4名が、その問題意識を共有して、この運動に取り組むという思いを込めてお話しいただきました。これが今日一番良かったことかなと、このように思っております」「沖縄は東アジアの中での重要な場所です。その沖縄から、近隣諸国・地域の中国、韓国、台湾、さらにアジアの国々と平和をどう実現するかを考える運動がスタートをすることができるというので期待を感じております」「アメリカに東アジアでこれ以上戦争をさせてはならない」と語ったうえで、「琉球国は、武器ではなく交易で地域の平和を維持し450年、東アジアで最も長く続いた」、こうした沖縄の特性を生かし、特に青年たちが平和のネットワーク形成のために頑張るのを応援したいと激励した。

これは沖縄の問題ではない。日本の問題だ

閉会あいさつ 翁長 雄治 沖縄県議

 最後に、問題提起者の4人が感想を述べた。
 以上を踏まえて、司会者の山内議員が、参加の皆さんにお礼を述べ、今回はコロナ感染症対策で時間が限定されたが、「シンポジウムを恒常的に開催していきたい」と呼びかけ満場の賛同を得た。
 閉会あいさつに立った翁長雄治・沖縄県議会議員は、「東アジア各国は異なる価値観を尊重し合い、共に努力すべきであり、そうでなければ戦争を引き起こす。台湾有事だと沖縄が戦場となる」と述べ、「これは沖縄の問題ではない。日本が戦場になる、日本の問題なのだということを考えていただきたい。戦争を絶対にさせない。このことを共通の旗印に、これから皆が集まって運動を起こしてゆきたい」と結んだ。