「軍拡」が最重要課題の第2次岸田改造内閣発足

アジアの平和と国民の命・暮らしを守る国民運動を

『日本の進路』編集部

 第2次岸田改造内閣が8月10日、発足した。首相は記者会見で、「防衛力の抜本的強化が最重要課題」と述べた。
 感染症の爆発的蔓延、急激な物価高、低迷する経済。命と暮らし、経済を守ることが最重要課題だ。防衛力強化では平和は守れない。近隣国を「敵」にしない外交も喫緊の課題。
 新内閣も、「旧統一教会」との関係が次々露呈。ましてや、「安倍路線の継承」はあってはならない。
 「アジアの平和と国民の命を守る」国民的闘いが急がれる。


ペロシ下院議長がつくった緊張

 台湾島周辺での中国軍の実弾演習で東アジアの緊張が一気に高まったと受け取られている。日本が主張するEEZ(排他的経済水域)内にミサイル数発が着弾、習近平中国主席の「対日警告だ」との報道も。
 年末に国家安全保障戦略見直しを目指す岸田政権が、この「緊張」を最大限に利用しようとしているのは間違いない。
 しかし、中国の強硬姿勢と「緊張」は、ペロシ米下院議長の台湾訪問の反作用に他ならない。ペロシ氏は、「米国は台湾を孤立させない」と激励し、蔡英文「台湾総統」はペロシに国家元首が与える勲章を与えたという。
 台湾は中国の不可分の一部である。「一つの中国」の原則を最も重視する中国が激怒したのは当然であった。
 アメリカは1979年の中国との国交正常化以来、その原則を尊重してきた。だが、米中の経済規模逆転が目前に迫って米国は覇権維持を焦っている。バイデン大統領は台湾防衛に繰り返し言及し中国を挑発する。ペロシ訪台は、こうしたアメリカの対中戦略を外れるものではなかった。この経過を踏まえなくては事態は理解できない。

米中は軍事でつばぜり合い

 米中は軍事面で激しい抗争を繰り広げている。
 米軍は6月末、東シナ海で約1週間にわたり最新鋭戦闘機を大量に動員し中国本土に接近させる軍事訓練を強行した。自衛隊の空中警戒管制機なども参加、日本政府高官は「米軍による史上最大の対中示威行動だった」と語った。中国軍も戦闘機で対抗、中ロの爆撃機の編隊が日本列島を一周したのもこのころだった。
 7月末には、横須賀の米空母ロナルド・レーガン打撃群とエイブラハム・リンカーン打撃群や、揚陸艦トリポリが台湾海域に向かった。
 こうした中での中国軍の実弾演習だったが、その外側には米空母打撃群がひしめいていたのだ。ペロシが乗った米軍用機を護衛したのはレーガン搭載の戦闘機だった。
 いつ偶発的衝突に発展してもおかしくない状況だ。激化する米中対立、緊張する国際関係への対処が迫られている。アジアの平和と日本の安全保障が問われている。

自主的な近隣平和外交で

 8月初め来日した米国防関係高官は、「日本は直ちに防衛費をGDPの3%に引き上げ、3倍増すべき」と。米軍需産業には、ウクライナ戦争後の需要確保も必要なのだろう。だが、わが日本国民の生活はどうなる。飯も食えずに、何が国の防衛か。
 抑止力強化には、「敵国」もまた、同様に対抗する。際限のない軍拡競争がすでに始まっている。国力差が数倍にも開いた中国との軍拡競争に、日本が対抗できないことは明らか。
 わが国の防衛政策は一貫して「専守防衛」である。この原則を外してはならない。安全保障政策の柱は自主的な近隣平和外交である。今そのカギは、台湾有事を引き起こさないことだ。
 日本は、体制の異なる中国と50年前の国交正常化時に、「台湾が中国の領土の不可分の一部であるとの中国の立場を十分理解し、尊重」することを確認した。こうして「敵対」から「共存」の両国関係が実現した。
 ところが昨年4月、菅前首相はバイデン大統領との会談で「台湾」問題に踏み込んだ。「共存」から「敵対」へ、国の進路を誤らせた。
 しかし中国は最近の「台湾白書」でも、「武力行使を放棄しない」、しかし「やむを得ない状況で行われる最後の選択だ」と改めて明確にした。「外部からの干渉」や台湾内部での「独立を図る行為」が「平和統一の見通しを破壊する」と。
 どうすれば緊張は緩和し、地域の平和と安定が実現するか明瞭だ。日米は、「台湾独立」を煽ってはならない。台湾は「中国の不可分の一部」の原則を堅持することだ。
 米国は、日米安保条約と沖縄など在日米軍基地なしに、「台湾有事」に対応できない。
 米国と一緒に中国を抑え込む側に立つ必要はまったくない。自主的な選択を明示することが必要な時だ。平和を求めるならば岸田首相が採るべき唯一の方策だ。

「国民の命を守る」ことこそ最優先課題

 新型コロナウイルスの感染者は急増し、高齢者を中心に死者数も増えている。政治の最優先課題は国民の命を守ること。感染症対策の検証と再構築が必要だ。さらに「医療崩壊」を起こさせない医療体制の再検討・再構築も急ぎ、国民への医療保障を実現しなくてはならない。
 同時に、緊急の生活支援も最優先課題だ。極度の低賃金・使い捨ての非正規雇用労働者の多くがコロナ禍でその日の食費にも事欠く事態だ。現金給付も急がれる。さらに生活保護制度の再構築、国民の生活保障体制構築が急がれる。
 ウクライナ戦争もあって食料や電気・ガスなど生活必需品価格は急騰し国民生活は困窮、中小商工業者では倒産が相次ぐ。危機を打開する緊急対策が求められる。
 また、世界的に食料危機に直面している。日本は、食料自給率わずか37%。国民の命をつなぐ安全安心の食料確保、「食料安全保障」は喫緊の最重要課題となった。今、農家は飼料・肥料、電気代などの高騰と米価など農畜産物の販売価格の低迷で、経営継続の瀬戸際にある。国費を投入し、農家が経営を継続できる所得を保障する政策を即刻実現しなくてはならない。
 原発再稼働加速、新設への「将来を見据えた取り組み」(西村新経産相)など論外だ。脱炭素、再生可能な自然エネルギーへの転換を加速し、即刻脱原発に踏み込まなくてはならない。

参院選の結果と展望

 平和と命の危機打開へ、国民運動構築と政治の転換が急がれる。
 ところが参院選後の野党各党はあまりにも内向きに見える。「与党大勝」キャンペーンに気圧されている。自民党が議席を増やしたのは事実だが、それは選挙区、特に1人区である。野党が候補者を絞りきれなかった指導部の失敗に過ぎない。公明党も自民党も、比例選挙では議席を減らしたし、そもそも有権者の約半数は投票に行かず、自民党への有権者全体の支持(絶対支持率)は17%に過ぎない。国民は決して自公与党を支持してはいない。むしろ物価高に生活を脅かされて岸田政権と自公与党への不満を一気に強めている。
 野党は、自党のことだけではなく、もっと「国民第一」に徹し、生活と経済要求に気配りすべきだ。また同時に、この国の運命に関心を払い平和と安定に責任を持たなくてはならない。野党まで、安易に軍備強化の方向を容認したり、「一つの中国」の原則を曖昧にして「台湾住民の民意を尊重」などと言ったりして、「台湾独立」策動に手を貸している。なんということか。野党は、国民運動の先頭に立たなくては国民の支持を引きつけることはできない。
 平和と国民の命・生活を守る旗を高く掲げ闘おう。まずは、玉城デニー沖縄県知事再選勝利だ!