不当弾圧と闘う全日建連帯労組関西生コン支部

「国のあり方を論じ運動している関生支部を『のさばらせる』と本当に安倍政権がもたないと思っているのだろう」

武 洋一・関西生コン支部書記長に聞く

続く不当弾圧―運動の全国化恐れる権力

 逮捕者のべ62人、武建一委員長は接見禁止もついて勾留7カ月余、他執行部9人も勾留が続いています。
 弾圧は2017年末12月のストライキから始まっています。
 私たち労働組合が、なぜ中小企業であるミキサーやセメント輸送の運賃を上げろと言うのか。そこで働く労働者の労働条件を改善しようと思えば「運賃を払うところ」に求めざるを得ないからです。中小企業のオヤジにいくら「賃金を上げろ」と言ったところで、ミキサーの運賃が安ければ、十分な賃金が払えないという状況があるのが実態です。だから、生コンの単価を上げることが必要だし、そのためには1社だけでは上がらないから、中小企業を協同組合に結集させて、集団の力でゼネコンやセメントメーカーに運賃などを含めた値上げを求めていかなければいけません。
 生コンの値段を適正化すれば、その値段のなかに当然働く労働者の賃金も加味されます。パイがないのなら、そのパイを膨らませようという考えです。
 しかし、一言で「協同組合をつくる」と言っても、業者だけではそう簡単にうまくいきません。そこで、私たち労働組合がこれまでの闘争で培ってきたことを発揮して、より多くの事業者を協同組合に入れる取り組みが必要です。基本的には資本主義社会で、競争社会ですから、中小企業がその競争にのみ込まれてしまうと、必ず値段の買いたたき、ダンピングが始まります。しかし、多くの中小企業が協同組合に結集し、集団によるスケールメリットを拡大させることができれば、大資本、ゼネコンにモノが言えます。
 こうした取り組みを通じて、1970年代から80年代にかけては関西の生コンは東京など関東と比べて値段も高く、そこで働く労働者の賃金も高いという「西高東低」と言われた時代がありました。これは労働組合の闘いを基礎に、中小企業と労働組合が共同してつくり上げた成果です。
 この運動がやがて関西から名古屋、あるいは静岡、そして、東京に広がり始めたときに、当時日経連会長だった大槻文平氏(三菱鉱業セメント会長)が、「関生の運動は資本主義の根幹に関わる」と危機感あらわに大キャンペーンを起こし、それが弾圧につながりました。後で触れますがある政党が介入したりして労働運動を分断させたり、集団交渉をつぶしたりしてこちら側内部からも妨害がありました。
 こうした弾圧もあったけれども、それを乗り越えて94年にもういっぺん業界を再建して、今の大阪広域生コンクリート協同組合を立ち上げました。もう一回、業界をまとめようということで、私たち関生支部がイニシアチブを取って業界をまとめたわけです。そして、生コン価格の適正化、経営安定化を実現し、労使関係も集団交渉形式をもう一回つくり直して、労使関係も比較的安定してきました。

「利益」第一の競争で業者だけでは団結が難しい

 しかし、こうした状況に慣れてくると、業界側はこうした成果について「自分たちがやった」と錯覚を起こし始め、2000年代に入ってから、労働組合との対決姿勢をまたあらわにして、業界が乱れてきました。04年に混乱していた業界をまとめ直そうということで、これまで協同組合に参加していない「アウトサイダー」と言われる業者17社、18工場を協同組合に入れようと、約1年間、未参加の業者の人たちと議論をしてきました。その結果、「大同団結をしよう」ということで、10月にこの「アウトサイダー」である17社、18工場が協同組合に入ることが決まりました。ところが、このなかから2社ほどがゼネコンやセメントメーカー、あるいは権力から圧力を受けて、協同組合への加入の約束をほごにしたのです。
 当然、私たちは約束の履行を求め、会社に申し入れに行くと、警察は「威力業務妨害」とでっち上げて、05年ごろから弾圧が始まりました。こうした弾圧は5次にわたりました。その結果、業界はまた混乱した状態が約10年間続きました。
 そして、15年に業界の有力な人たちから「このままじゃイカン」「連帯さん、協力してほしい」「業界を再建しないとアカン」ということで、私たちに業界再建に向けた協力の要請がありました。私たちはこの要請に対して、「協力は惜しまないけど、今までの約束をどう履行するのか」「生コン価格の適正化を図ったときに、出入り業者の運賃も見直してほしい」と求めました。
 この約束というのは、労働者の福祉基金をつくろうというものです。これは1979年に決めているんですね。当時、業界を再建しようというときに「100億円構想」として、1リューベ=100円を積み立てて、日々雇用の人たちに対する相互扶助、あるいは技術センターや生コン会館をつくろうという約束があったのですが、先に述べた80年代の反関生の大キャンペーンと弾圧でつぶされてしまいました。94年に大阪広域協組を立ち上げるときも、基金創設に向け、100円を積み立てることについて業界側も「責任をもちます」と言っていました。しかし、いつの間にかその約束を忘れてしまって、業界の一部の者たちが、権力弾圧までしかけてきて、結局、業界再建はつぶれてしまったのです。
 業界側は私たちの要求に対して、「約束する」と明言しました。

再び大同団結、しかし利益の独り占め狙う業者が出現

 こうして、2015年に大阪府下の3協同組合(大阪広域協組、阪神生コン協組、レディース生コン協組)が大同団結し、今や164社、189工場を擁する日本最大の生コン協同組合にまで成長しました。組織力も高まり、生コンの値段も高めになりました。今年4月からは1リューベ=2万2千円ほどにするとしています。
 業界側は生コンの値段上昇を背景に収益を上げたにもかかわらず、出入り業者(ミキサー輸送、セメント輸送、ダンプ)へ値上げの還元をしないので、私たちは一昨年12月にストライキを展開しました。このストに対して、業界側は「自分たちの権益が侵された」と思い込み、労働組合を権力に売り渡して「威力業務妨害」「恐喝」などと事件をつくり上げたのです。
 本来、労働組合と業界団体が共同してつくった協同組合を、一部の人間が牛耳って、労働組合を敵視しているのが今の大阪広域協組の姿です。
 私は、この間の権力弾圧はただ単に広域協組の「四人組」と言われる人間による運賃値上げ拒否が対立の最大の背景とは見ていません。力が弱い中小企業が大同団結し、労働組合といっしょに大資本にモノを言うという産業民主化の流れが、やがて関西から全国に広がることを本当に恐れていると思います。
 現象的には大阪広域協組が加盟企業に対して、「連帯を切れ」「連帯と共闘する企業には仕事を出さない」ということが対立面として前面に出ていますが、もっと問題なのは、この対立に介入して、弾圧する権力の姿勢です。これまで権力は協同組合をつぶしにかかってきましたが、たとえつぶせても関生がまた再建させるので、まずは関生をつぶそうということでしょう。協同組合は後でもつぶせると思っているのでしょう。権力は関生が言う「共生」をキーワードにしたこの協同組合運動が全国化することにいちばん危機感をもっています。そういう意味では、この弾圧はそう簡単には終わらないと思っています。

関生を放っておけば政権がもたないと感じているのではないか

 これまで、私たちは労働者の要求を掲げて闘ったり、中小企業との共闘を通じた産業民主化の取り組みを行ったりしてきましたが、同時に、日米安保に反対し、沖縄で新たな米軍基地建設に反対する人びとや原発事故の被害に遭っている人びと、あるいは今の社会構造のなかでいちばん苦しんでいる農民、こうした人びとの思いを社会に広げていく闘いも展開してきました。こうした闘いにまで関生が取り組んでいるからこそ、権力は何としてもつぶさないといけないと思っているのでしょう。
 警察官が調べのなかで言っていました。もう10年前になりますが洞爺湖サミットのときミキサー車でパレードもしました。沖縄にも行った。韓国にも行くという。「おまえら、どこまで行くのか」と言っていましたよ。あるいは、「今度、大阪でサミットだなあ」と。労働組合の事務所前を流れる安治川上流に国際会議場がある。各国首脳が船でこの安治川を上って国際会議場に入るという話です。「首脳が通るときに、おまえら会館に看板なんか上げるなよ」みたいな。
 国のあり方を論じて運動している関生支部を、権力側が言う「のさばらせる」と本当に安倍政権がもたない、今の産業構造がもたないというふうに思っているからでしょう。
 むちゃくちゃな弾圧でも、まず引っ張って起訴してしまえば、後は裁判所の判断に任すと。その間運動は止まるというふうに彼らは見ているから、この弾圧はなかなか止まらないだろうと思うんです。実際に、資金も、人も、時間も大変な負担です。
 しかし、今は逆にこの弾圧を通じて、危機感をもった市民運動や労働運動の人たちが「このままじゃアカン」ということで、全国で関生支援の実行委員会ができるなどの動きが広がっています。今度は市民運動や労働運動、社会運動の人たちが権力を追い詰め始めています。これは大変うれしいことですね。連合に結集する労働組合も含めて、こうした運動に参加できればいいなと思っているところです。

内部矛盾抱える広域協組

 今のところ大阪広域協組も「一枚岩」みたいになっていますが、内部で矛盾を抱えています。欲深い連中だから、利権をめぐり、「四人組」のなかでも対立があるようです。今は生コン価格が高いから、加盟する中小企業に大なり小なり利益が出ていますが、一部の業者だけに膨大な利益が集中しているような状況が続けば、おかしくなってくるでしょう。実際、そういう意識は出ていて、議論もあるようです。
 今、広域協組はおごり高ぶって、生コン業界を牛耳っているように見えますが、中堅のゼネコンからは「もう生コンは扱いたくない」という声が聞こえてきます。高い生コンを買わされているわけです。だから、ゼネコンの間では、生コンに代わる品物で建造物をつくろうという方向転換が進んでいます。特に大阪で25年には万博が開かれる予定でもあり、また夢洲を中心としたIR(統合型リゾート)開発など建設ラッシュが続きます。ゼネコンなどはおそらく開発現地に独自に生コンプラントを建てるでしょう。しかし、それは生コン業界の崩壊につながることです。こうしたことを許さないためにも、これからの闘いは重要ですね。

許せない一部労組によるスト破り

 私たちは1980年代に大きな教訓を得ました。というのは、先述したように、その時期に私たちの運動がいちばん盛り上がり、これから勢いをつけて、関東にも攻め上ろうとしたときに労働組合の上部団体であった運輸一般が分裂策動に乗り出したことです。94年からの弾圧、そして、今回も同じように寝返りました。当時の運輸一般は現在、建交労(全日本建設交運一般労働組合、全労連加盟)と名前は変わったけれども、本当に労働者の味方ではないですね。彼らは、選挙に有利か不利かだけですべてを判断するわけです。
 私たち関生支部や全港湾大阪支部、そして建交労関西支部などセメント生コン関連の在阪6労組は「関西生コン関連労働組合連合会」(労組連合会)をつくり、共に一昨年12月にストライキをしようと決めました。9日の会議でストを決定し、12日決行と決めました。ところが皆でストを決定したにもかかわらず、会議後すぐに建交労などはひそかに広域協組に出向き、「私たちはストはしない」と宣言していたのです。
 ストの闘い方はそれぞれの組織事情もあるので、腕章着用闘争にとどまるところもあるかもしれませんが、いずれにしてもストを闘い抜こうと決めていたのです。結局、私たちはそのことを知らされず、関生支部、全港湾大阪支部、近畿圧送労組だけのストとなってしまいました。
 たとえ3日間でも足並みそろえてストで闘えば、大阪広域協組は「運賃を上げましょう」と音を上げていたはずです。そうすれば今日の弾圧局面も変わっていたはずです。
 振り返れば、彼ら運輸一般=建交労は80年代から私たちの闘いに一つも力を貸してくれなかったどころか、逆に後ろから鉄砲で撃つようなことばかりしてきました。
彼らは80年代には「社会的道義」、現在は「社会的規範」という言葉を振りかざしています。ここで言う「道義」「規範」は誰が決めるのでしょうか。それは権力が決めることでしょう。そんな「規範」に縛られていたら労働者は闘えないでしょう。

原則的な活動外れず、闘いを全国に

 私たち関生支部の闘いについて「特異だ」という声もよくあります。しかし、別に「特異」なことをしているわけではありません。労働組合を職場につくろう、中小企業の経営者ともケンカもするけど、大資本を前には力を合わせようという、いわば原則的な活動をしているにすぎないと思っています。この原則はどの労働組合、労働運動にも当てはまる考え方です。実践では、初めから100%正しい答えなんてありません。
 私たち関生支部はこれからもこの原則を基本にしながら、弾圧に屈することなく、仲間の早期奪還、協同組合運動の全国化、そして何よりも自分たちの組織強化・拡大に向け闘いを続けていきます。

全日建関西地区生コン支部
緊急署名活動の呼びかけ

憲法28条と労働組合法をふみにじる暴挙をはね返すため、そして仲間たちを一日も早く取り戻すために、緊急の署名活動が始まっています。

●よびかけ人
藤本泰成(平和フォーラム共同代表)
真島勝重(全港湾中央執行委員長)
平賀雄次郎(全国一般全国協中央執行委員長)
鈴木 剛(全国ユニオン会長)
菊池 進(全日建中央執行委員長)
●要請事項
 ①不当な長期勾留と接見禁止を即時中止し、ただちに保釈せよ
 ②労働組合敵視を止め、憲法28条・労働組合法1条2項違反の不当捜査を中止せよ
 ③逮捕状乱発の中止。公正かつ迅速な裁判で速やかに無罪判決を下せ
●要請先と署名用紙
 以下からダウンロードできます。
http://www.tu-rentai.org/?page_id=439
●署名の集約と提出
第1次集約 3月末日(4月中旬提出)
第2次集約 4月末日(5月中旬提出)
最終集約  5月末日(6月中旬提出)
●署名の送り先
〒111-0051 東京都台東区蔵前3-6-7 蔵前イセキビル4階
全日本建設運輸連帯労働組合中央本部
お問い合わせ 電話03-5820-0868

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