鈴木宣弘一覧

日本の食料危機と安全な食料の自給  鈴木 宣弘

日本は独立国家たりえているか

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

 

 

ウクライナ危機で激化する食料争奪戦

 ただでさえ食料価格の高騰と日本の国際社会での「買い負け」懸念が高まってきていた矢先に、ウクライナ危機が勃発し、小麦をはじめとする穀物、原油、化学肥料原料などの価格高騰が増幅され、食料やその生産資材調達への不安は深刻の度合いを強めている。シカゴの小麦先物相場は本年3月8日、ついに2008年の「世界食料危機」時の最高値を一度超えてしまった。

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『農業消滅』は何を伝えようとしているか

書評や著者インタビューから本書の読みどころの一端を

 

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

 

平凡社新書の『農業消滅』が話題を呼んでいる。まだお読みでない本誌読者の皆さんに向け、著者の鈴木宣弘氏に頼んで、この間マスコミなどに掲載された書評や著者インタビューに触れながら、本書の〝読みどころ〟を紹介していただいた。(編集部)

鈴木宣弘著『農業消滅 農政の失敗がまねく国家存亡の危機』(平凡社新書、2021年7月発行、968円)

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■ 安全な食料自給。農林漁業を核とする持続可能な地域循環経済へ

 

「日本の未来は守れるか」  鈴木宣弘東大教授の問題提起   
――命・環境・地域・国土を守る食と農林漁業の明るい未来を築くには?

 

広範な国民連合は3月28日、鈴木宣弘東大教授を講師に「農林漁業を核にした地域循環経済の形成へ」講演と討論の会をオンラインで開催した。以下は、鈴木教授の講演の結論部分の要約と各地からの報告要旨である。  文責、見出しとも編集部

 

 「飢餓の危機は日本人には関係ない」は誤っている。2035年時点で、日本は飢餓に直面する薄氷の上にいる(詳細は本誌4月号、鈴木論文)。世界も同様である。
 「Go To トラベル」事業の議論の根本的誤りは、経済社会の構造そのものをどう転換するか、という視点が欠如していることである。都市人口集中という3密構造そのものを改め、地域を豊かにし、農林漁業を核に地域経済の循環構造を確立する必要がある(詳細は本誌2月号、鈴木論文)。 続きを読む



農業政策は国民の命を守る真の安全保障政策

「飢餓の危機は日本人には関係ない」は誤っている

東京大学 鈴木 宣弘

 

2050年ごろに起きるかもしれない渋谷駅頭の暴動(21年2月7日、NHKテレビ画像)

 

 

 先日、NHKスペシャルが2050年ごろに日本人が飢餓に直面する危険性に警鐘を鳴らした。画期的である。だが、その危険性はもっと早くに迫っているかもしれない。下の表はその可能性を示唆している。 続きを読む


地域循環経済に向けて

カギは経済構造転換――核は農林漁業

東京大学 鈴木 宣弘

 「Go To トラベル」事業の議論の根本的誤りは、経済社会の構造そのものをどう転換するか、という視点が欠如していることである。「Go To トラベル」は都市部の3密構造をそのままにして、感染を全国に広げて帰ってくるだけで、都市部の3密構造を転換するという視点がない。 続きを読む


7年8カ月の爪痕と今後に向けて

安倍首相辞任、菅義偉新政権の成立

東京大学 鈴木 宣弘

国民の犠牲の上に一部の利益を追求

 この7年8カ月、一言でいえば、一部の利益のために農民、市民、国民が食いものにされる経済社会構造が徹底された。手法的には、「人事、カネ、恫喝」を駆使して、「見事に」正論を黙らせていった。
 種子法の廃止、農業競争力強化支援法、種苗法、漁業法、森林の2法、水道の民営化、などの一連の政策変更の一貫した理念は、間違いなく、「公的政策による制御や既存の農林漁家の営みから企業が自由に利益を追求できる環境に変えること」である。「公から民へ」「既存事業者から企業へ」が共通理念である。 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 一部の利益でなく国民の命が守られる社会に

ショック・ドクトリンは許されない

東京大学 鈴木 宣弘

 新型肺炎の世界的蔓延への対処策で、物流の寸断や人の移動の停止が行われ、それが食料生産・供給を減少させ、買い急ぎや輸出規制につながり、それらによる一層の価格高騰が起きて食料危機になることが懸念されている。このような中で、その解決策は一層の貿易自由化であるかのような議論が国際機関から出てきていることは看過できない。まさに、災害資本主義、「火事場泥棒」的発想である。 続きを読む


広範な国民連合第24回全国総会 [ パネルディスカッション3] パネリスト 鈴木宣弘・東京大学大学院教授

アジアの共生 自立日本の総合安全保障を考える

食料安全保障が軽視される日本

篠原孝さん
 皆さんは、「安全保障」って聞くと当然、軍事面の安全保障が最初に頭の中に浮かんでくるでしょう。今の日本の状況、安倍首相が典型ですが、その軍事面ばかりが突出しています。しかし、エネルギー、食料、それから平和外交などトータルで日本の安全を確保しなければいけないんです。ですから、食料の安全保障はものすごく大事な問題ですが、日本では軽視され続けています。
 こうした点についてずっと発言してきている鈴木教授にお願いいたします。

農業政策をキーにしたアジア共同体を

 こんにちは。鈴木でございます。 続きを読む


特集■「自立日本の総合安全保障を考える」農は国の本、国家安全保障の要

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

 

 国民の命を守り、国土を守るには、どんなときにも安全・安心な食料を安定的に国民に供給できること、それを支える自国の農林水産業が持続できることが不可欠であり、まさに、「農は国の本なり」、国家安全保障の要である。そのために、国民全体で農林水産業を支え、食料自給率を高く維持するのは、世界の常識である。食料自給は独立国家の最低条件である。 続きを読む


やはり「失うだけの日米FTA」

米中紛争の「はけ口」もセットで「TPP超え」いつの間にか消えた捏造語TAG

東京大学教授 鈴木 宣弘

「TPP水準」を意図的に強調する姑息

 日米FTA交渉をめぐって、多くの報道で農産物の開放を「TPP水準にとどめた」かのように強調されているが、これは間違いである。
 ①そもそも、TPP水準が大問題だったのだから、TPP水準にとどまったからよかったかのような報道が根本的におかしい。
 ②加えて、米中貿易戦争で行き場を失った米国農産物の「はけ口」とされ、トウモロコシなどの大規模な追加輸入の約束がセットで行われたのだから、これは明らかな「TPP超え」だ。 続きを読む


改定漁業法は根本的に間違っている

東京大学教授 鈴木 宣弘

最近の法改定は国家私物化の「総仕上げ」

規制改革、自由貿易の名目で、公共的・共助的なルールや組織を破壊し、日米オトモダチ企業に地域を食い物にさせる動きが止まらない。農業での最近の象徴的「事件」はH県Y市の農業特区である。突如、大企業が農地を買うことができるようになった。その企業はO社(M前会長)の関連会社である(民有林・国有林の「盗伐」合法化も木材チップのバイオマス発電を手掛けるO社への支援である)。そしてO社の社外取締役に就任しているのは、人材派遣大手会長T氏とLファームを展開したN氏である。政権と結びついた「利益相反」で地域を食い物にしている「常習犯」の、たいへん有能なMTNの3人だ。あまりにもわかりやすすぎる。 続きを読む


「TPP水準堅持」のごまかしは通用しない日米交渉

 

東京大学 鈴木 宣弘

飛んで火に入る夏の虫

 4月末、米国での日米首脳会談は完全にトランプ米大統領のペースで、安倍晋三首相は「飛んで火に入る夏の虫」だった。TPP11(米国抜きのTPP=環太平洋連携協定)と日欧EPA(経済連携協定)の発効後の想定以上の畜産物輸入急増で米国のシェアが落ちる中、米国内で日米FTA(自由貿易協定)での日本への圧力強化の要請が強まっていた。 続きを読む


言葉の破壊の行き着く先は国の破壊–TAG

自動車のために食料・農業を永続的に差し出すことにTAGは「FTAそのもの」

東京大学 鈴木 宣弘

耳を疑う詭弁

日米間で物品貿易協定(TAG)の開始が決まったのを受けて、AP通信や米国メディアは、ズバリ「日米がFTA交渉入りに合意(US, Japan agree to negotiate a free trade agreement)」と簡明直截に報じた。日本のメディアは「事実上のFTA」「FTAに発展も」とやや回りくどいが、TAGは「FTAそのもの」である。

筆者も「日米FTAはやらないと言ったわけでしょ。だから、日米FTAではないと言わないといけないから、稚拙な言葉のごまかしで、これは日米FTAなんです」(テレビ朝日「グッド!モーニング」コメント、2018年9月28日)と即座に指摘した。 続きを読む