消費税が25兆円に? 野田政権の大増税を打ち破ろう

消費税が25兆円に?
野田政権の大増税を打ち破ろう

月刊『日本の進路』編集部

 未曾有の大震災・原発大事故の2011年が過ぎ、新しい年が始まりました。しかし、政府の復旧・復興はもたつき、がれき処理も何年かかるかわからない状態です。原発にいたっては廃炉まで40年かかると言われています。将来の展望も見えない中で、多くの被災者、避難民の人たちは、生活と仕事を再建するため、歯を食いしばって闘っています。
 被災地以外でも、長引く不況によって働きたくても職がない完全失業者と就業希望者は750万人にのぼり、実質的な失業率は11%を超えています。就業している労働者は4900万人ですが、その35%、1730万人は非正規雇用の労働者で、低賃金に耐えて働いています。  野田首相は、このように苦闘している人々にいっそうの負担を強いる消費税増税を、「不退転の決意」で実現すると表明しました。3月中に消費税増税関連法案を国会に提出し、2015年までに消費税率を10%に引き上げるかまえです。野党は解散・総選挙を迫って対決姿勢を強め、民主党内でも消費税増税に反対する動きが活発になっています。今年は年明けから消費税をめぐる攻防が激しくなるでしょう。

低所得者ほど負担が重い
 最悪の税制―消費税

 消費税は、収入がある人もない人も、子どもから老人まですべての人が、買い物をしたりサービスを受けるたびに同じ税率で納税させられます。そのため、低所得者ほど負担が重い逆進性の税金です。野田政権はこの消費税の税率を5%から10%に引き上げようとしています。
 金額で表すと、5%で12兆5千億円ですから、10%になれば25兆円になります。25兆円というのは所得税と法人税の合計よりも大きな金額で、国民1人あたり年間20万円です。単純計算で5人家族ならば100万円の消費税を払うことになります。低所得者は所得税よりも消費税の方が多くなります。年収100万円の人が全額消費したとすると、所得税はゼロ、消費税は10万円です。収入が少なくぎりぎりの苦しい生活をしている人たちの中には、食べ物を減らすなど、生活を切りつめざるを得ない人も出てくるのではないでしょうか。国民大多数にとっては、とんでもない税金です。特に中小零細の自営業者や農家は、消費税を価格に転嫁するのは容易でなく、赤字経営でも払わねばならず、深刻な問題です。
 しかし、政府や財界・大企業、大金持ちにとっては、とりやすく、自腹はほとんど痛まず、税率を少し上げるだけでどっと税収が増える、打ち出の小槌のような理想的な税制です。経団連は税率を10%に上げたら、次は「2020年代半ばまでに、税率を10%台後半に引き上げ」るよう野田政権に求めています(「経団連成長戦略2011」)。「10%台後半」を18%とすれば、消費税は45兆円になり、今年度予算案の税収総額42兆円を上回ります。財界・大企業、大金持ちにとって理想的だということは、彼らの懐から出た金は少ないということで、45兆円のほとんどは中低所得者の懐から引き出した金だということです。国民大多数にとっては最悪の税制です。

「社会保障と税の一体改革」は
 消費税増税のための手段

 野田首相は「社会保障と税の一体改革」をかかげて、「社会保障を充実させるために消費税の増税が必要」と言っていますが、これはごまかしです。社会保障を充実させるためなら、消費税を25兆円に倍増する必要はありません。消費税増税の目的は別のところにあり、社会保障は増税を国民に受け入れさせるための手段です。
 「社会保障と税の一体改革」は小泉政権の時に、経団連の奥田会長が言い出したものです。経団連が「消費税率を2007年度までに10%、2025年度までに18%に引き上げよ」と提言し、それを実現する方法として、奥田が小泉首相に要請したのがこの一体改革です。「社会保障と消費税の改革を一体で進め、消費税を社会保障のためだけに使うことにすれば、国民の抵抗感も薄れる」と考えたからです。小泉首相は「首相在任中に消費税率を引き上げない」と公言していたので手をつけませんでしたが、麻生首相がこれをとりあげて与謝野経済財政相に担当させました。民主党への政権交代後、消費税増税を唱えた菅首相がこれを引き継ぎ、与謝野氏を野党から引き抜いて社会保障・税一体改革担当大臣に任命しました。そうしてできたのが「社会保障と税の一体改革成案」です。これに「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」とうたわれ、野田首相がこれを具体化する形になっているのです。
 つまり、消費税増税は自民党政権から民主党政権に引き継がれた、財界の要求です。財界が消費税増税によって実現しようとねらっているのは財政再建です。前述したように、消費税率を18%にすれば、それだけで現在の税収総額を上回りますから、財政再建ができると財界は考えているのです。言うまでもなく、低所得者を中心とする国民大多数の議税によって、です。

財政悪化をもたらした
 法人税減税、高額所得者減税

 今日の財政悪化を引き起こしたのも、政府や財界・大企業、大金持ちです。
 (表1)は1989~2010年度の基幹3税と租税合計の推移を表したものです。租税合計はこの21年間に12・6兆円減りました。その内訳を見ると、法人税は10兆円、所得税は8・4兆円減り、消費税は6・7兆円増えました。その他の諸税はあわせて10兆円前後であまり変化していません。歳入面から見た財政赤字の原因は、法人税と所得税が大幅に減ったことです。法人税や所得税がこれほど減った原因は、法人税の税率を40%から30%に減税し、所得税の最高税率を50%から37%に減税したためです。大企業と大金持ちが払う税金を減らしたから、財政が悪化したのです。大企業と大金持ちの税金を減らす方法はこの他にもいろいろあります。法人税では減価償却や研究費など、いろいろな屁理屈をつけたたくさんの優遇税制があります。大金持ちには相続税減税、有価証券取引税の廃止などがあります。(表1)基幹3税と租税合計の推移.jpg
 財政を再建しようとするならば、何よりもまず、財政赤字が拡大した原因を取り除くことです。法人税減税・高額所得者減税で利益を得た大企業や高額所得者に負担を求めるべきです。大企業に適用する法人税率の大幅引き上げ、所得税の最高税率引き上げです。どちらも累進性を強めるべきです。そして消費税は廃止の方向に進めるべきです。

財政悪化をもたらした
 対米従属政治
 日米構造協議の630兆円

 歳出面では、89年9月に始まった日米構造協議が国家財政に深刻な影響を及ぼしました。当時の海部内閣はアメリカの内政干渉に屈服し、関西新空港、東京湾横断道路、東京臨海部開発など10年間に430兆円の公共投資を行うことを約束したのです。さらに村山内閣は、アメリカの要求で200兆円を上積みし、630兆円の「公共投資基本計画」を決定しました。10年間で630兆円ですから、毎年63兆円の公共投資です。(表1)でわかるように、税収は40~50兆円しかないのです。赤字になることはすぐわかります。(図2)国と地方の長期債務残高.jpg
 政府は対米公約実現のため、特例枠を設けて地方の借金を奨励し、単独の公共事業を乱発させました。その結果、地方の財政も急速に悪化しました。そして、「国と地方の長期債務残高」が、(図2)のように急増しました。したがって、財政を再建するためには、従属的な対米関係を改めなければなりません。日米安保条約を破棄し、文字通り国の完全独立を実現すべきです。

おわりに

 ここで述べた真実を国民に知らせて、消費税増税反対の世論を広げましょう。国民各層の連携をはかり、国民の怒りと力で消費税増税を阻止しましょう。

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