農業を壊滅させるTPP参加断固反対

農業を壊滅させるTPP参加断固反対

食料は独立国の基礎、農民を支持して闘おう

月刊『日本の進路』編集部

 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加が大きな政治問題になっている。菅首相は10月の所信表明演説で「TPPなどへの参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築をめざす」と述べ、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)会議前にTPPへの交渉参加を表明した。
 TPPは、米国や豪州など9カ国が加わる原則、関税撤廃の多国間の自由貿易協定。米国主導で来年秋の交渉妥結をめざしている。
 しかし、TPPへの参加は日本農業を壊滅させ、国の独立の基礎である食料自給を放棄するもの。農業者だけでなく、国民全体、国の進路にかかわる問題である。労働者をはじめ国民各層がTPP参加に断固反対し、農業者とともに闘うことを呼びかける。

農林水産業は壊滅的打撃

 TPPに参加すれば、日本農業は壊滅的打撃を受ける。農水省の試算によると、コメ、砂糖、小麦、牛肉、豚など主要品目だけで農業の損害は4・1兆円、関連産業の損害は8兆円、食料自給率は現在の40%から14%に落ち込むと発表した。地方の疲弊はいっそう進む。
 農業者は死活をかけた闘いに立ち上がっている。TPP断固反対を決議した10月19日の集会をはじめ、長野での集会、JA北海道青年部協議会の声明などTPP反対の行動が広がっている。関税撤廃で深刻な被害を受ける漁業や林業団体も反対を表明。11月10日は農林水産業の団体や消費者団体も含めて、3千人規模の反対集会が準備されている。

TPP参加は財界の要求

 菅政権のTPP参加検討発言の背景には財界の強い要求がある。自動車や電機などの多国籍大企業にとって、関税が撤廃されれば輸出につながるからである。WTO(世界貿易機関)ドーハ・ラウンドの合意が進まない中、財界は2国間のFTA(自由貿易協定)を推進してきたが、関税撤廃が原則である多国間のTPPがメリットが大きい。
 「この機会を逃せば、諸外国に後れを取る」「APECまでに参加を決断すべきだ」と政府に要求し、マスコミを挙げて世論作りを行っている。反対を掲げる農業関係者には「競争力を強化する農業改革」や「一定の財政支援」で、TPP参加と両立を図れと主張する。
 しかし、農業輸出大国の米国や豪州と日本農業が対等に争えるだろうか。財界は、自由化に耐えうる農産物は少数の農業者を支援して規模拡大で競争力をつけろという。一戸当たりの耕地面積は日本と豪州では1千倍も違う。日本でいくら規模拡大しても対等の競争は不可能である。
 また、財界は競争力のない砂糖などの農産物は、一定の財政支援で他の作物に転換させろと主張する。沖縄や南九州でサトウキビに代わる農産物があるだろうか。

TPPの恩恵は財界だけ

TPP参加は、国民大多数の利益につながるだろうか。この間、貿易立国・日本の国益と言われ市場開放が強行されてきた。相次ぐ農産物自由化・市場開放で農業者は農業で生活できず、独立国の基礎である自給率も40%まで低下。中小商工業者も国際競争にさらされ多くが淘汰された。労働者も首切りや低賃金を強要された。国内は空洞化し、地方は疲弊した。財界は空前の利益を上げたが、国民大多数に恩恵はなかった。これが事実である。今回もTPP参加に反対する農業者を孤立させようと世論作りに躍起である。
米国はTPPを通じて、アジアの市場争奪に加わり、日本などに農産物輸出の拡大、米国抜きの東アジア共同体へのかく乱もねらっている。
 TPP参加問題は、独立国の基礎である国民の食料にかかわる問題、死活をかけて闘っている農民とともに国民各層は連携して闘おう。

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