参議院選挙結果から何を学ぶか

参議院選挙結果から何を学ぶか

月刊『日本の進路』編集部

各党の議席数と得票数の変化

各党の議席数の変化と比例区の得票数・率は別表の通りです。
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 民主党は、改選54議席を44議席(選挙区28、比例区16)に、得票数(比例区、以下同)を480万票と大きく減少させました。
 連立与党の国民新党は、議席を獲得できず、得票数を約27万票減らしました。
 国民は鳩山政権と引き継いだ菅政権に厳しい審判を下しました。この結果、連立与党は参院で過半数を割り、「ねじれ国会」となりました。
 一方野党の自民党は、改選38議席を51議席(選挙区39、比例区12)に13議席増加しました。しかし、比例区の得票は大敗した前回よりさらに約247万票も減らし、今回の参院選で支持されたとは言えません。
 公明党は、改選11議席を9議席へ、得票も約13万票減らしました。
 共産党は、改選4議席を3議席へ、得票も約84万票減らしました。
 社民党は、改選3議席を2議席へ、得票も約39万票減らしました。
 みんなの党は、改選議席ゼロから10議席(選挙区3、比例区7)へ増やし、参院第4党となりました。ほかの新党では、新党改革とたちあがれ日本は、比例区で1議席獲得しました。
 比例区の得票から見ると、民主党や自民党をはじめ既存の政党がすべて得票数を減らし、実績のない「新党」に1千万票をこえる票が集まったことが大きな特徴です。

国民生活悪化と大企業優先の
政治が選挙結果の背景

 民主党が大敗した背景には、国民生活の深刻な危機の中で民主党政権に対する怒りと失望があります。
 長年にわたる財界優先・対米従属の政治、とくに小泉政権以降の改革政治で犠牲にされた多くの国民は、「国民生活第一」を掲げる民主党に期待し、「政権交代」を実現させた。だが、国民生活はよくなるどころか一層悪化しています。
 失業率は5%以上で高止まり、「最低賃金1000円」や労働者派遣法改正案も実現せず、賃金は10年以上も下がり続けています。年収200万円以下が23・3%、年収200~300万円が16・4%で、年収300万円以下は約4割に急増。いわゆる「中間層」は減少し、生活ができない低賃金労働者が急増しています。
 中小零細企業や自営業者の営業も悪化しました。この間、大企業は労働者や下請企業を犠牲にして急速に業績を回復し、株主配当や内部留保を増やしました。民主党政権は麻生政権が始めたエコカー減税・エコ家電など大企業支援策を継続・拡大しました。一方、中小零細企業は大企業による下請単価の切り下げや需要の減退で倒産の危機にあります。中小小売業や中小建設業なども仕事がなく、あっても赤字覚悟の状況で、倒産や廃業が増加しています。また中小企業が期待した資金円滑化法は大銀行の抵抗で骨抜きになったし、実効性のある中小企業支援は行われていません。
 農民生活も深刻です。農業資材費の高止まりや米価など農産物価格の下落で農業収入は減少しました。賃金労働の農外収入も減少し、わずかな年金が支えになっているのが現状です。また民主党政権の口蹄疫への立ち遅れで宮崎の畜産農家は存亡の危機に立たされています。さらに自民党農政への不満を戸別所得補償で引き付けた民主党農政ですが、その戸別所得補償は不徹底で、来年度以降はコメ以外への品目にも拡大するという約束は大幅に後退、継続性も危うくなっています。土地改良など他の農業予算は大幅に削減されています。しかも、日本農業を破壊する自由貿易協定など農産物自由化は財界の要求に沿って進める計画です。
 「子ども手当」は来年度見直し、ガソリンの暫定税率廃止なども反故にされました。財政赤字を口実に国民生活は犠牲にされていますが、大銀行や大企業への支援や優遇策は民主党政権の下でも貫かれています。とても「国民生活が第一」とは言えず、「大企業の利益が第一」の政治ではないでしょうか。
 民主党政権の外交・安全保障政策も、自民党同様に対米従属から抜け出せていません。朝鮮や中国敵視政策も継続されました。普天間問題をみれば明白で、「県内移設」に戻った民主党は参院沖縄選挙区で候補者すら立てられませんでした。沖縄での投票率は過去最低、民主党政権への県民の怒りの表れです。
期待した「政権交代」でも国民生活は一層悪化し、民主党政権にも失望した国民の多くが実績のない「みんなの党」など新党に希望を託すしか選択肢がなかったのではないでしょうか。

「ねじれ国会」で容易でない財界

 世界経済危機への対策で財政支出で各国政府は赤字が拡大し、欧州発の新たな危機が始まっています。各国政府は、財政再建にカジを切り、国民へ犠牲押し付けが強まっています。ストライキの頻発など不満が高まり、各国の国内政治は不安定になっています。また、各国は他国に危機を押しつけあうなど国際協調も怪しくなっています。
 こうした中で世界の成長センターとなったアジア市場をめぐる争奪は激烈です。このアジア市場で活路を求めている日本の財界は、強力な安定政権、対米従属の下で国際的発言力をもった国家を民主党に期待しましたが、参院選挙の結果は逆に不安定な「ねじれ国会」となりました。
 財界は菅政権に法人税減税などの新成長戦略や消費税引き上げによる財政再建を要望していますが、容易ではないでしょう。大規模な政治再編がない限り、財界の望む強力な安定政権は実現しないでしょう。

国民生活の危機を打破する
各層の連携を促進しよう

 国民各層の営業と生活はまさに危機的な状況です。何年かに一度の選挙も大事ですが、労働運動をはじめとする強力な国民運動こそ国民生活の危機を打ち破る確かな力です。そのことは世界と日本の歴史が教えています。
 私たち広範な国民連合は、労働者、中小零細業者、農漁民など国民各層の連携を促進し、強力な国民運動を発展させ、大企業優先・対米従属の政治を転換するために一層奮闘する決意です。

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