菅政権とはいかなる政権か

菅政権とはいかなる政権か

月刊『日本の進路』編集部

 鳩山政権が崩壊し、菅政権が登場しました。同じ民主党の政権であり、政権交代を優先した時期と政権が確立した時期との違いはあっても、基本的な性格は同じです。
 民主党は昨年の総選挙で政権交代を優先し、自民党との違いを鮮明にすることに総力をあげました。実現の根拠もなく「生活が第一」を掲げ、日米関係ではその覚悟もないのに「対等」を演出し、普天間問題では「最低でも県外」と約束しました。政権さえとれば何とかなると考えたのでしょう。こうして、民主党は自民党政権のもとで困窮し出口を求める有権者の「受け皿」となることに成功し、鳩山政権が誕生しました。

 しかし、票が目当てで多国籍大企業の経済支配に手をつけない「生活が第一」は財政の壁にぶつかり、マニフェストの多くは実行されませんでした。水面下では、経団連の手ほどきを受けて、新成長戦略の作成を進めました。大企業が巨額の利益を回復する一方で、労働者の賃金は下がり、失業が長期化しました。中小零細企業は仕事が減り、倒産・廃業が増え、商店街の衰退が進みました。口蹄疫で畜産農家は深刻な打撃を受けました。鳩山政権下で国民の暮らしはさらに深刻になり、国民の期待は不満と怒りに変わりました。
 普天間問題では、沖縄県民の闘いが発展し、鳩山政権は「最低でも県外」の実行を迫られました。本気で米国に基地撤去を迫る意思も覚悟もなかった鳩山政権は、迷走の末に辺野古移設で米国と合意し、対米従属路線の本質をあらわしました。
 内閣支持率は10%台に落ち込み、民主党内で「これでは参院選を闘えない」との声が高まり、鳩山首相と小沢幹事長は辞任に追い込まれました。
 代わって登場した菅首相は、第1に、鳩山政権が進めてきた「戦後行政の大掃除の本格実施」をうたいました。「行政組織や国家公務員制度の見直し」、「地域主権改革」、「官邸主導の強力な政府」など、内外の激変に対処できる強力な政治体制の実現です。
 第2に、「経済・財政・社会保障の一体的立て直し」をうたいました。実際は、鳩山政権が経団連との二人三脚でつくってきた新成長戦略の実行です。低所得者ほどつらい逆進性の消費税を大増税し、大企業法人税を大減税し、財界が求める重点分野・企業へ財政を集中投入し、多国籍大企業の国際競争力を強化しようというものです。
 菅政権は今後3年間に歳出を今年度以下に抑制する方針を決定し、新たな歳出増となる子ども手当の満額支給、高速無料化、戸別所得補償の他品目への拡大は、参院選公約から削除しました。それでも社会保障費が毎年1兆円の自然増となり、財界が求める重点分野・企業へ財政投入が増えるため、さらに国民向けの歳出に大ナタをふるわざるを得ません。小泉政権以上に、苦況にある国民へ「痛み」を強制する政権です。
 第3に、矛盾が拡大した日米関係を修復し、「日米同盟を日本外交の基軸とすることが大原則」と、対米従属路線を明確にしました。参院選公約には、PKOや海賊対策での自衛隊活用、防衛大綱・中期防衛計画の年度内策定、中国をにらみ豪州・韓国・インドとの防衛協力推進などを明記しました。普天間問題では「日米合意」の実現をうたい、参院選公約から「米軍基地見直し」を削除しました。
 いずれも多国籍大企業の立場に立つもので、ここに菅政権の基本的な性格が示されています。欧州発の金融危機で、世界経済が「二番底」に落ち込む可能性もはらみながら危機を深め、国際競争が激化するなかで、これらの政策の実現は容易でありません。多国籍大企業の利益をはかり、困窮する国民に犠牲を押しつける政策は、いっそう不満と怒りを高めます。沖縄県民は普天間基地の辺野古移設を絶対に許しません。
 対米従属政治、国民を犠牲にする多国籍大企業のための政治を打ち破る、広範な国民各層の連合がますます求められています。

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