県内移設ならば、沖縄は島ぐるみの闘いを展開-日米安保を問い直す国民的議論を

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県内移設ならば、沖縄は島ぐるみの闘いを展開

日米安保を問い直す国民的議論を

沖縄県議会議員 玉城 義和

名護市長選の勝因

 米軍普天間基地の移設問題が争点になった名護市長選で、辺野古移設に反対する稲嶺候補が現職候補を破り、勝利しました。
 勝因の一つは、現職側が「政府・自民党とパイプがなければどうにもならない」と言ってきたことが、政権交代によって、ブーメラン現象のように自分に返ってきたからです。もう一つは、前原国交大臣・沖縄北方担当相が「基地問題と振興策は切り離す」と言明したので、基地と振興策をリンクしてきた現職市長の存在理由がなくなりました。さらに、市政の無能力や不透明性も表面化しました。

 一番大きかったことは、日米両政府が辺野古新基地で合意したのに、13年間たっても杭一本打てなかったことです。現地の反対運動もさることながら、その後ろに7割から8割の「辺野古移設反対」という県民世論があります。そういう世論を背景にして、杭一本打てないという状況が続いてきました。
 そういう中で、基地問題に決着をつけたいという市民の思いが強く働きました。私が市長選を闘ったのは12年前ですが、その頃とはかなり雰囲気が違ってきています。これまでの市長選では、市長の能力を問うことよりも、基地賛成派ならば国の振興策がくるからいいという安易な判断で、賛成派か反対派かという政治的選択を迫られてきました。その結果、市民の暮らしはどうなったでしょうか。失業率、倒産件数、生活保護世帯、所得などでも明らかなように、沖縄県内でも名護市民の暮らしはきわめて悪く、改善しませんでした。就学援助を受ける児童数も増えています。基地受け入れと引き換えの国の振興策は、ほとんど地域の振興に役立っていません。箱物中心の振興策は市民に届かず、本土のゼネコンに吸い上げられただけでした。商店街のシャッターも5分の1は閉まっています。誰も振興策が市民生活を改善したと感じていません。基地賛成派だった人たちも、基地問題にけりをつけて本来あるべき市政に戻そうと変化してきました。

名護市の生活関連経済指標

<完全失業率>  名護市 沖縄県
2000年10・0%9.4%
2005年12・5%11.9%
<生活保護世帯> 世帯数 保護率(千人あたり)
2009年 8月60614.79
2009年10月63215.58
<就学奨励費児童数>
2007年10.6%
2008年11.9%
2009年10.7%
<空き店舗> 店舗数 空き店舗数 空き店舗率
2004年4464810.8%
2005年3866717.4%
2006年3866617.1%
2007年1282519.5%
2008年1132219.5%

 実際の選挙戦では、自民党、公明党以外の勢力は、保守層も含めてほとんどが稲峰候補に結集しました。保守系の議員も6名くらいきていました。その闘い方も、それぞれが独自の選対をつくり、連絡会議を開いて集会などの統一行動に参加しながら、それぞれが競いあいました。多様な共闘のモデルができたのではないかと感じています。いろいろな雑音によってエネルギーを消耗することは避けられ、大きく一つに結集できました。

オール沖縄対鳩山政権

 辺野古移設反対の候補が市長選で勝利したわけですから、もう辺野古に基地は絶対につくれないと思います。2月10日から沖縄県議会が始まりますが、自民党、公明党も含む「県内移設反対決議」を準備しています。それでも政府が「県内移設」を持ち出してくるならば、沖縄は島ぐるみの反対闘争になると思います。私は20万人集会を開いて反対すると発言しています。県内移設という結論を出せば、民主党政権は深刻なダメージを受けますから、そんなことはできるものではないと思っています。
 民主党政権は沖縄のことをもう少し理解するべきです。平野官房長官などは、沖縄のことをまったく分かっていないのではないか。岡田外相も同様です。彼らが伊江島や下地島に行ったり、「市長選の結果はしん酌しない」「嘉手納への統合を検討」「普天間は動かないこともある」などと発言するたびに、怒りと混乱が広がりました。鳩山政権の真意は分かりませんが、反対運動に火をつける結果になっています。
 鳩山政権は5月末までに決めると言っています。与党3党がそれぞれ移設先を模索しているようですが、そんなことをやれば調整なんかできません。平野官房長官が委員長になっている沖縄基地問題検討委員会というやり方も解決にはならないと思います。県内移設が結論ならば、オール沖縄対鳩山政権という対立になります。県議会では自民党、公明党も含む県内移設反対決議になると思います。そうなれば、知事も態度を修正せざるを得なくなります。

安保条約はすでに壊れている

 今年は日米安保改定50年でもあり、今回の名護市長選を契機に、日米安保条約、日米同盟を国民的に問い直す必要があると思います。そういう中で沖縄の米軍基地、全国にある米軍基地をどうするのか議論すべきです。つまり、総論から議論して各論にいくべきなのに、各論から入るからどうにもならなくなっているのです。今回の名護市長選は、米軍基地はノーだと突きつけました。それでは他の県は受け入れるのかと議論していくと、どこの県も受け入れないとなります。
 日米安保のあり方、米軍の駐留にどういう意味があるのか。国民はそれをどう理解しているのか。本当に安保条約が重要であると理解しているのか。そう理解しているなら、米軍基地を受け入れるはずです。政府はそうした国民的議論をせず、地方自治体の意向を聞いていたら日米安保は成り立たなくなる、だから国策でやるとやってきました。しかし、名護市に見られるようにそうはいかなくなりました。鳩山政権は、名護市で否定されたものを国内のどこかにもっていくことができるのか。そうすることに国民的合意があるのか。安保条約自体が問われていると思います。
 これまでは冷戦構造という前提がありましたが、それがなくなりました。その結果、米軍基地も産業廃棄物施設や原発のように迷惑施設になってきました。どこもぼう大な金をつけないと受け入れない。あるいは、そうやっても国民は受け入れない。米軍に基地を提供する安保条約自体が、相当前から壊れています。さらに、東アジア構想ということもあるわけですから、日米安保の見直しに入っていくべきだろうと思います。政権交代したというのであれば、国のあり方を問う中から、安保条約の是非も含めて沖縄の基地問題を考え直す、そういう国民的議論の契機にすべきだと思います。
 いずれにしても県内移設という結論を出せば、沖縄は島ぐるみの反対運動を展開することになります。鳩山政権はそういう沖縄の県民世論を理解すべきです。

(談・文責編集部)

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