ウクライナ戦争と台湾有事 ■ 誰が代理戦争をたくらむか?

「今こそウクライナ停戦を」G7首脳に訴える

学者・ジャーナリストなどが4月5日に声明発表

 ロシアのウクライナ侵攻による戦禍を止めようと、東京大学の和田春樹名誉教授、東京外国語大学の伊勢崎賢治名誉教授、青山学院大学の羽場久美子名誉教授や岩波書店の岡本厚・前社長、ジャーナリストの田原総一朗さんら学者、ジャーナリストらのグループが5日、日本を含めた先進7カ国(G7)に「今こそ停戦を」と訴える声明を発表した。また、声明は「日本に生きる市民は台湾をめぐる戦争にも参加することはなく、戦わない」ことを訴えている。


 会見で、伊勢崎賢治・東外大名誉教授は「停戦は悲劇的な終戦を回避するための政治工作、公平な和平のための、現状の一時的な凍結だ。ウクライナの市民、地球市民のために即時停戦が必要」と強調。和田春樹・東京大名誉教授は「ロシアと米国が核兵器を持って対峙する世界で、ロシアをたたきつぶして降伏させることはあり得ない。核戦争になるような事態は止めなきゃいけない」と強調。羽場久美子・青山学院大名誉教授は「第2次世界大戦では、停戦が遅れたために沖縄、広島、長崎の悲劇が起きた。ロシアとウクライナの停戦には中国やインドとの連携が必要で、日本が架け橋になるべきだ」などと話した。

「Ceasefire Now!今こそ停戦を」
「No War in Our Region!私たちの地域の平和を」

 私たちは日本に生きる平和を望む市民です。
 ウクライナ戦争はすでに一年つづいています。この戦争はロシアのウクライナへの侵攻によってはじまりました。ウクライナは国民をあげて抵抗戦を戦ってきましたが、いまやNATO諸国が供与した兵器が戦場の趨勢を左右するにいたり、戦争は代理戦争の様相を呈しています。数知れぬウクライナの町や村は破壊され、おびただしい数のウクライナ人が死んでいます。同時にロシア軍の兵士もますます多く死んでいるのです。これ以上戦争がつづけばその影響は地球の別の地域にも広がります。ロシアを排除することによって、北極圏の国際権益を調整する機関は機能を停止し、北極の氷は解け、全世界の気候変動の引き金となる可能性がうまれています。世界の人々の生活と運命はますますあやうくなるのです。核兵器使用の恐れも原子力発電所を巡る戦闘の恐れもなお現実です。戦争はただちにやめなければなりません。
 朝鮮戦争は、参戦国米国が提案し、交戦支援国ソ連が同意したため、開戦一年と15日後に、正式な停戦会談がはじめられました。ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア二国間の協議がはじめられ、ほぼ一カ月後にウクライナから停戦の条件が提案されると、ロシア軍はキーウ方面から撤退しました。しかし、現実的な解決案を含むこの停戦協議は4月はじめに吹き飛ばされてしまい、戦争は本格化しました。以来残酷な戦争がつづいてきたのです。開戦一年が経過した今こそ、ロシアとウクライナは、朝鮮戦争の前例にしたがって、即時停戦のために協議を再開すべきです。Ceasefire Now!の声はいまや全世界にあふれています。
 幸いなことに、この戦争において、穀物輸出と原発については、国連やトルコなどが仲介した一部停戦がすでに実施されています。人道回廊も機能しています。こうした措置は、全面停戦の道筋となりうるのです。中国が停戦を提案したこともよい兆候です。ヨーロッパ諸国でも停戦を願う市民の運動が活発化しています。G7支援国はこれ以上武器を援助するのではなく、「交渉のテーブル」をつくるべきなのです。グローバル・サウスの中立国は中国、インドを中心に交渉仲裁国の役割を演じなければなりません。
 ウクライナ戦争をヨーロッパの外に拡大することは断固として防がなければなりません。私たちは東北アジア、東アジアの平和をあくまでも維持することを願います。この地域では、まず日本海(東海)を戦争の海にはしない、米朝戦争をおこさせない、さらに台湾をめぐり米中戦争をおこさせない、そう強く決意しています。No War in Our Region!――私たちはこのことを強く願います。
 日本は1945年8月に連合国(米英、中ソ)に降伏し、50年間つづけてきた戦争国家の歴史をすて、平和国家に生まれ変わりました。1946年に制定した新憲法には、国際紛争の解決に武力による威嚇、武力の行使をもちいることを永久に放棄するとの第9条が含まれました。日本は朝鮮の独立をみとめ、中国から奪った台湾、満州を返したのです。だから、日本は北朝鮮、韓国、中国、台湾と二度と戦わないと誓っています。日本に生きる市民は日本海(東海)における戦争に参加せず、台湾をめぐる戦争にも参加することはなく、戦わないのです。
 私たちは、日本政府がG7の意をうけて、ウクライナ戦争の停戦交渉をよびかけ、中国、インドとともに停戦交渉の仲裁国となることを願っています。

2023年4月5日

伊勢崎賢治(東京外国語大学名誉教授・元アフガン武装解除日本政府特別代表)
市野川容孝(東京大学教授)
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
内田樹(神戸女学院大学名誉教授、武道家)
内田雅敏(弁護士)
内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授、新時代アジアピースアカデミー共同代表)
梅林宏道(NPOピースデポ特別顧問)
岡本厚(元『世界』編集長・前岩波書店社長)
金平茂紀(ジャーナリスト)
姜尚中(東京大学名誉教授)
古関彰一(獨協大学名誉教授)
小森陽一(東京大学名誉教授)
酒井啓子(千葉大学教授)
桜井国俊(沖縄大学名誉教授)
鈴木国夫(「市民と野党をつなぐ会@東京」共同代表)
高橋さきの(翻訳者)
高村薫(作家)
田中宏(一橋大学名誉教授)
田中優子(前法政大学総長)
田原総一朗(ジャーナリスト)
千葉真(国際基督教大学教授)
暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)
西谷修(東京外国語大学名誉教授)
羽場久美子(青山学院大学名誉教授)
藤本和貴夫(大阪経済法科大学元学長)
星野英一(琉球大学名誉教授)
マエキタミヤコ(サステナ代表)
水島朝穂(早稲田大学教授)
毛里和子(早稲田大学名誉教授)
吉岡忍(作家・元日本ペンクラブ代表)
和田春樹(東京大学名誉教授)

 この思いを新聞広告にして、2023年5月19日から21日まで広島で開催されるG7広島サミットに出席する首脳たちに届けたいと思います。ぜひ、停戦を呼びかけるクラウドファンディングにご協力ください。
 目標金額の264万円は5月19日から始まる広島G7サミットに向けて5月17日か18日に関東で出す全面新聞広告(15段)の掲載媒体費用です。もし目標金額を達成することができたら、次は広島サミットの会場周辺の新聞掲載媒体費用や、英字新聞への新聞広告掲載費用を目標に設定します。欲張るようで大変申し訳ないのですが、ぜひともここで停戦へのプレッシャーをしっかり伝え、しっかり停戦を実現していきたいと思います。ぜひとも、何とぞ、何とぞ、どうぞよろしくご支援お願い申し上げます。

「Ceasefire  Now!今こそ停戦を」「No War in Our Region!私たちの地域の平和を」

2023年5月広島に集まるG7指導者におくる日本市民の宣言