農業を本気で守る市議会農山村振興議員連盟

全国の地方議会から火の手を挙げませんか

大崎市議会議員 小沢 和悦

 昨年11月14日、私が住む宮城県大崎市の古川農業研修センターで開催された「大崎市農業の『これから』を語るつどい」で、「世界の農業・食料事情 地域農業をどうする」のテーマで講演した東京大学大学院鈴木宣弘教授の熱弁に、会場に集まった農民は、食い入るような表情で聴き入りました。
 「世界の食料事情は、金さえあればいくらでも買える時代ではない」、「今の日本は戦争を始めたら、兵糧攻めで簡単にまいる」、「今必要なのは軍事力倍加ではなく食料自給率を抜本的に引き上げる農業予算だ」――「食料・農業の危機打開、食料の安全保障確立」を訴えた鈴木教授の小気味よい熱弁は、ものすごい迫力に満ちたものでした。この「つどい」参加者は約100人ですが、参加の呼びかけは、主催する大崎市議会農山村振興議員連盟メンバー20人が手分けし、手配りで案内したものです。


「このままでは農業は滅び、農山村の集落もなくなる」

 大崎市議会農山村振興議員連盟は、2017年3月、「このまま何年かたったら、大崎市の農山村はどうなるのでしょうか。そんなことをみんな心配しているのではないでしょうか。この問題に、本気で取り組みたいという議員集団である議員連盟のスタートの意見交換会を開催します」と呼びかけ、開催した意見交換会をもって始まりました。
 アメリカ主導のTPPについて、大崎市議会は5回も意見書を議決しました。何回意見書を地方から出そうが、まったく気にもせずどんどん進める政府に対して「政府は、地方を何とも思っていないのではないのか。〝ひと暴れ〟しようではないか」と相談し、16人の議員で立ち上げたのが「TPPを止めさせたい大崎市議会議員の会」でした。JAが反対運動の前面に立たなくなった時期に、「県北の農業と地域経済を守る総決起集会」を主催し、圏域市町村、各地農協代表らも参加しました。会場のカンパで上京代表団を派遣するなどの活動を展開しました。
 市議会議員や農家の間では「TPPがどうであれ、このままでは農業も農村もダメになる」という声がありました。アメリカがTPP協議を脱退した段階で、より幅の広い「農山村振興議員連盟」への改称と全議員への参加を呼びかけたのです。大崎市議会農山村振興議員連盟は自民党、公明党、共産党の、政党所属のすべての議員、無所属の議員が参加する超党派の議員集団で、現在議員定数28人中20人が参加しています。

全県に波及する取り組み

 私は、議員連盟発足時は事務局長で現在は幹事の一人です。重視してきたのは東北農政局や大崎市産業経済部との連携です。
 これまでシンポジウムや講演会、視察のほか、重要な問題では全員による市長への「要望会」を実施してきました。山田正彦元農水相を講師に開いた「種子法問題講演会」には、一般市民を含め100人以上が集まり、山田氏の提起を受け、2018年12月議会に「宮城県主要農作物種子条例の早期制定を求める意見書」提出を提案。併せて、大崎市選出の県会議員4人(自民3、共産1)にも知事に対する強力な働きかけを要請。宮城県の「主要農作物種子条例」は、県知事提案で県議会に条例案が提出され、19年10月11日公布、20年4月1日施行と、異例の速さで実現することができたのです。
 市長要望会では、米価大暴落の対策として10a当たり4000円の「次期主食用米作付け継続支援金」や「肥料代高騰対策支援金」を要望。宮城県市長会会長でもある大崎市長が決断し、実現した施策は全県へと波及しました。シンポジウムで出された農業者らからの要望に応える農産物等の産直を含む「地域拠点施設」についても、構想策定を目指す作業が、関係団体や地域と協働で始まっています。

全国の自治体と国会に超党派の「議員連盟」を立ち上げましょう

 大崎市議会農山村振興議員連盟の経過や活動の一端を紹介させていただきました。加えてもう一つだけご紹介したいのは、私たちは、日本の食料危機、農業存亡の危機に、「本気で守らなければならない!」、「ヨーロッパのような価格保障・所得補償を実現しなければならない」と思っている国会議員の集団――「農業を本気で守る議員連盟」(仮称)を立ち上げることを、心から望み、そのための行動を起こそうと考えています。鈴木教授が提唱する食料安全保障法制定を展望した「食料安全保障推進国会議員連盟」(仮称)構想と考えは全く同じです。
 農村部を選挙区にもつ国会議員の多くは、所属政党のいかんにかかわらず、足元の農家、農村がどんなに疲弊しているかを知らないはずありません。また、大都会を選挙区にもつ国会議員でも、世界の食料事情に危機感をもつ議員もいるはずです。自分の意見を主張できない雰囲気が永田町にあるのかもしれませんが、それを突破することができるのは「地方からの強力な働きかけ」「圧力」ではないでしょうか。
 「食料安全保障なくして日本も国民も守れるか!」この声を全国から巻き起こしたいものです。