ミサイル配備に揺れる国境の島・与那国の声 動画

動画「守りたい島の声―与那国島から―」

 岸田政権は昨年12月、安全保障戦略など3文書を閣議決定、今年に入って日米2+2閣僚会議と首脳会談でとりわけ南西諸島軍拡方針を確認し具体化を急テンポで進めている。あたかも中国が攻め入るかの「台湾有事」があおられ、ミサイル配備などを島々に迫っている。南西諸島の人びとは、戦場となることに危機感を強め、軍備ではなく外交で平和を確保することを強く求めている。
 「米ペロシ議長の訪台までは誰も危機感を持たなかった」と多くの人が証言する。ドキュメンタリー動画「東アジアの緊緩和を求めて 守りたい島の声―与那国島から―」は、敵基地攻撃のミサイル配備に揺れる国境の島、日本最西端・与那国島の現状を知る上で格好である。東アジア共同体研究所琉球・沖縄センターが作製、公開している(https://www.youtube.com/watch?v=ReoQ77BvWFw)

取材は、河原弥生さん(同センター事務局長)と小橋川共仁さん(同センターYouFOメンバー)の二人。

 この島で1月14日、「東アジアの緊張緩和を求めて」と題して講演会が開かれたが、それを中心としたドキュメンタリーである。講演会講師は泉川友樹さん(沖縄大学地域研究所特別研究員)。東アジアの緊張が高まる中で、その「最前線」とも言われる与那国島でこうした講演会が開かれた意義は大きい。ドキュメンタリーは講演会を紹介する前に、南西諸島ピースネット共同代表の猪股哲さんがインタビュアーを務める小橋川さんを案内するかたちで進む。自衛隊駐屯地を中心に島が紹介された後、崎元酒造所代表で町議会議長の崎元俊男さんなどのインタビューが続く(崎元俊男さん、イソバの会の狩野史江さん、建設業の崎元貴文さん、町議の田里千代基さんの発言を紹介する)。


 講演会実行委員会の山田和幸さんはインタビューの中で、「対立の構図に引き込まれない。緊張緩和を求める。与那国には『まるんな』という言葉があり、受け継がれている。泉川さんに、民間の立場で外交が大事、交流が大事ということを裏付けをもって話してもらう。そうした機会を持とうと、若い人も含めて相談して進めてきた」と語る。終わった後も山田さんは、「与那国のように緊張のあるところで緊張緩和を求める声が広がっていくことが大切だ。すごく良い時間を持てた」と手応えを述べていたのが印象的。
 最後に、小橋川さんが「自衛隊配備に賛成していた人びとの背景には立ちゆかなくなった島の経済を少しでもよくしたいという思いがあった。しかし、受け入れに賛成した人もミサイル配備だけは許せないとはっきりと言っていた。島民を二分するかたちで基地を受け入れた与那国だが、中国の内政に干渉するアメリカや日本の動きは、むしろ台湾有事を引き起こそうとしているように見える。島民は再び戦場にされはしないかと危機感を募らせている。今こそ私たちは、日本と中国の歴史を思い起こし、中国と友好をもって外交を進めていくことが求められる」と結ぶ。
 ぜひとも広めていただきたい動画である。