沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム(続) ■ 鳩山 友紀夫

東京でも北京でもソウルでもなくて
沖縄がそのハブになりうる唯一の資格をもっている

東アジア共同体研究所理事長 鳩山 友紀夫

 長時間皆さん方から積極的なご意見を聞かせていただき、大いに学ばせていただきました。特に屋良さんが「それでも私たちは戦争できますか?」と問われました。できるわけがないのです。そして絶対にしてはいけないのです。
 ところが戦争をして利益を得ている国もないわけではない。そういう国からいろんな挑発があった場合に、決して乗ってはいけないということです。ウクライナ戦争で味を占めた国は、今度は台湾を挑発し始めています。その挑発は台湾の独立派を鼓舞し、独立の勢いが増してくる恐れがあります。日本の政府はその傾向を支持しているようにも見えます。


 でも、もし米中が台湾問題で戦争を起こすことになったら、戦場は間違いなく日本です。それは絶対に避けなければなりません。米中が戦争にならないために、私たちは50年前の日中国交正常化のときに約束した「一つの中国」という原則を今一度再確認すべきです。そして日本が米国の友人であるならば、米国にも再確認させるべきです。そのためには私たちは歴史をきちっと学び直す必要があります。そういう意味でも、先ほどからお話があったように、平和な歴史をもっている琉球、沖縄に私たちは学ばなければいけないと思います。
負の歴史を学び、謝るべきは謝る
 同時に、東アジアが世界の成長の中心になっていくと言われましたが、その通りであります。それだけに、そのことが必ずしも望ましいと思っていない、妬ましいと思う人たちに対して、そう思わせないためにも、私たち自身がきちっと歴史を学びながら結束をしていく必要があると思っています。中国と日本の間の負の歴史もあります。日本と韓国の間にも同様に負の歴史があります。こういった歴史の問題に対して、日本として韓国や中国の皆さん方に対して過去に私たちが何を行ってきたかということもきちっと学んで、謝るべきところは心から謝る気持ちをもち続けるということもたいへん重要だと思っています。そうすることによって、東アジアをひとつに、経済あるいは安全保障の意味でも協力体制ができるような関係を築いていくのです。
 そのツールとして、私はかねて東アジア共同体を構想し実現に向けて努力することの重要性を説いています。その最大の目的は東アジアを不戦共同体にすることです。それは習近平主席の人類運命共同体に通底するものです。ある国の脅威はその国の軍事的な能力とその国の意図の掛け算です。いくら能力があっても攻めようとする意図がなければ脅威ではありません。相手の意図をなくさせるための外交的な努力こそ、紛争を未然に防ぐ力なのです。
 第2次大戦まで戦争を繰り返していた欧州が二度と戦場にならなくなったのも、欧州が共同体になったからです。欧州にできたことが東アジアにできないはずはありません。否、むしろ和を以て貴しと為すの精神、自己の尊厳の尊重のみならず、他者の尊厳をも尊重する友愛精神は欧州以上に東洋に宿っているのですから、東アジアにこそ共同体はふさわしいと信じています。
 そこで欧州に倣い東アジアに常設の議論の場を設けることです。将来は議会となる常設の場で、あらゆるテーマについて議論をするのです。そうすることによって、先ほど述べた世界のさまざまな危機を東アジアにおいては克服することができると信じます。
 その共同体のハブになるのが私は沖縄であると思っています。東京でも北京でもソウルでもなくて沖縄がそのハブになりうる唯一の資格をもっている、そんな地域だと思っております。皆さま方がこれからもその気持ちをもって、頑張って平和に向けて発信していかれることを心から期待しております。今日はありがとうございました。