沖縄県知事選挙

玉城デニー知事が大差で再選

辺野古基地反対 県民にいささかのぶれもない

玉城デニー選対本部事務総長・オール沖縄会議共同代表 金城 徹

 今回の知事選ですが、これは負けられない一戦です。オール沖縄にとって知事選で負けるということは辺野古の新基地建設へと結びついています。そういう意味で選対本部事務総長を仰せつかってかなり重圧を感じていましたが、大勝したのでほっとしたところです。
 勝因というのはいくつかありますが、まず玉城デニー知事の選挙戦での訴えが県民に非常に分かりやすかったと思うんです。辺野古問題についても後半からかなりウエートを占めて、熱っぽく語っておりました。それから、県民の生活あるいは福祉といった問題もしっかり訴えました。全国的にもそうですが、特に沖縄では子どもの貧困の問題が大きい。そういった政治の光が当たらない方々への訴えもただ通り一遍ではなくて、自らの幼少期からの生い立ちも含めて、普通だったらあまり話したがらないような本音を含めてね。聞いている方が非常に感動を覚えたという話も聞きました。


 出口調査を見ると、自民党や公明党支持者からも一定程度デニーさんに入ったということで、もちろんオール沖縄を主体にしてですが、多くの県民の皆さんがデニーさんへ投票をなさったんだろうなという感じがいたします。

辺野古基地反対は県民の意思

 この知事選は辺野古新基地建設反対の県民の意思を示した3回目の選挙であります。
 一貫して辺野古に基地をつくらせないというワンイシューで闘いが続いてきたわけです。しかし、この間一連の市長選挙で自公候補が次々と当選していく中で、辺野古の問題について県民の関心が薄くなったんじゃないかという、本土のマスコミの指摘もありました。政府・自民党もそのような話をしておりました。
 しかし、沖縄にあってはこの辺野古の問題っていうのはイデオロギーの争いではないんですね。
 沖縄に米軍基地が初めて置かれるようになったのは、敗戦直後に県民が捕虜収容所に収容されている時で、米軍が勝手にどんどん基地をつくっていった。異民族支配の中で銃剣とブルドーザーでつくられたわけですね。
 しかし、辺野古の新基地はそういったこれまでの米軍基地とは違って、県民が容認した形でつくられるものとなります。これに多くの県民が異を唱えていると思います。これは支持する政党は別にして、保守も無党派層にもその思いは共通の部分としてあったと思うんです。
 これだけの票差をつけたというのは、県民が辺野古の新基地建設反対という思いにいささかのぶれもないし、知事が力強く申し上げたように「1ミリもぶれません」というその言葉に、今回の知事選の勝利の要因があるんじゃないかと改めて思います。

県政不況ではなく「国政不況」

 1998年の知事選で、大田昌秀さんが稲嶺恵一さんに負けたときは、まさに「県政不況」という言葉が広がって衝撃が走るような形になりました。相手候補の自公側の佐喜眞淳さんは、その時のイメージを今回の選挙に持ち込んできた。私も正直言ってその言葉がどれだけ県民の間に広がるのか、どういう支持を集めるのか全く分からない状況でした。
 そういった中で選対本部長の新里米吉さん(選挙直前の8月1日、急逝)が選対本部事務所開きで、県政不況と相手が言っているけど、それは「国政不況」なんだと非常に力強く述べられた。その言葉が自公側の主張を押し返す大きな力になりました。
 もう一つは、沖縄では、コロナ陽性の方々が全国の中でもダントツで増えていたのが徐々に減り始めたことですね。観光関連の業者にとっては非常に厳しい状況でありましたが、県外からの観光客も増え始めていました。沖縄に暗い影を落として県民を全体的に意気消沈させるということにはならなかったと思うんです。状況が好転しつつある中で県政不況という言葉が空振りに終わったのかなという感じがいたします。

貧困問題に光を当てた4年間

 先ほどもお話ししましたが、本人自身の幼少からの生い立ち、母子家庭で本当に困った体験があったと思うんです。子どもの貧困というのは親の貧困です。沖縄では母子世帯が非常に多くて、非正規雇用も圧倒的に多い。
 そういった中でデニーさんは中学生までの医療費の無料化を打ち出しました。これは市町村の行政ですが、実行すれば国からペナルティーがくる。それを県が半分負担しますということで広がっていった。市町村の首長さんにすれば、やりたいけれどもと躊躇していた方もいたと思います。知事のこの姿勢は支持を受けたと思います。
 誰一人取り残されない優しい社会という訴えが、やはり多くの人に広がったと思うんです。そういった意味では辺野古の問題もそうですが、今までなかなか日の光が当たらなかった方々への4年間の施策が県民に支持されたのかなと私は思います。
 本土から来たある記者さんが、「自分は子どもの時に知事さんの名前は意識したことがなかったけど、ここでは小さい子どもが『デニーさん』と声をかけたりしている。何でなんでしょうかね」と。デニーさんのフランクで飾らない姿勢が多くの人に受け入れられ、「デニーさん」という愛称で呼ばれているのも、デニーさんのキャラクターかなと思います。

これからの沖縄の課題

 台湾有事に関しては県内で関心が大変強いですね。私たちが、宮古、八重山に行ったときも、この問題についてはどう考えているんですかと、詰問に近い状態で問われたこともございます。
 私自身もデニーさんも、自衛隊の存在ということに対しては認めているわけです。例えばいろんな災害において自衛隊の国民に対する奉仕というか、そういったものには感謝しています。それはそれとしてあるんですが、宮古にはもうすでにミサイル基地や弾薬庫もつくられ、また八重山でも自衛隊基地建設が進み、これからミサイルの配備が進んでいきます。
 ネットや本土のマスコミも含めて「日本が危険なんだからしょうがないじゃないか」という人がいます。地理的な状況でしょうがないんじゃないかというのは、あの77年前の太平洋戦争のときと全く同じです。日本の「国体」を護持するために時間稼ぎをするという戦略思想とほとんど変わってないんじゃないですか。結局、多くの住民がそこで逃げ惑う中で被害に遭って沖縄では4人に1人が亡くなったといわれるわけですね。
 私は戦後生まれですが、そういったものは自分の親や祖父母の話から身近にあるわけです。ですからこの感覚をもった沖縄の人たちからすると、日本全国で言う「かわいそうだけどしょうがない」という言葉で見過ごすわけにいかないんです。昔の戦争と違ってミサイルが飛んでくる、そんな中で軍事施設だけが標的になるんじゃなくて、島全体が標的になっていく中で、宮古や八重山にいる人は逃げようがないんですよ。沖縄本島だっていっしょです。那覇基地にもミサイルがあるし、うるま市勝連にもある。そういった状況の中で、沖縄本島に逃げたって危険には変わりないわけです。
 それをマスコミも含めて、「沖縄問題」として捉えているけど、これは日本の国防の問題であるわけです。そこを切り離して「沖縄の人にはかわいそうだけどしょうがないよね」という考えを、日本国の問題として考えるような方向に持っていかなければならない。
 そういう前提に立って日本の外交政策を組み立てなければ、本土には影響が及ばなかったから良かったということにはならないと思うんです。

那覇市長選挙(10/23)必勝へ

 県知事選に勝ってやれやれというところですが、10月23日が那覇市長選の投票日です。那覇市は県都ですから、ぜひ那覇市長と県知事が同じ認識で辺野古新基地建設反対で同じ立場で進められる形になればと思っています。翁長雄治さんをどうしても市長にしなくてはと、また頑張ります。
 知事だった翁長雄志さんが那覇市長のころにこのオール沖縄という運動が始まりました。ところが、相手候補になるであろう人からは、辺野古の基地は那覇市の市政とは関係が薄い、私は那覇市の発展のために力を尽くしたいという話が伝わってくるんです。しかし、翁長雄志さんが言っていたのは、那覇市長であってもこの辺野古の問題、行政区域は違えども同じ沖縄県として県民としてきちんと意思表示をしなければならないということです。その声がオール沖縄の始まる前の段階で重要な視点だったと思うんです。
 くしくも次男の翁長雄治君が市長選に出るというのは、本人自身も翁長雄志さんの意思をしっかりとつないでいきたいという思いもあると思うんです。そういう意味でも、ぜひ那覇市長選も県知事選と同じような勢いで勝ち抜いていきたいと思っています。

オール沖縄は全国民の課題

 8年前、翁長雄志知事が当選してみんな歓喜に包まれているとき、翁長さんは事務所の片隅に私を呼んで、本当に非常に高揚した表情でもなく、冷静を通り越してね、ちょっと冷ややかな態度でもあったんですが、「私が当選してね、みんな喜んでいる。それはそれでいいんだけど、これから県民が試されるんだ」ということを言っていました。
 要するに一人の知事の誕生が、すべてを解決するのは非常に厳しいことを翁長さんは理解していたと思うんです。そして命を削るように一日一日を全うして、任期を終わる前に亡くなられました。
 その個人が頑張っている姿は多くの県民に勇気を与えたんですが、これは言葉を換えれば、国民の一人一人が日本の問題として問われているんだという理解も成り立つんじゃないか。
 沖縄に基地を押し付けておけば何となく自分たちの身の周りが平和でおさまるというのは錯覚だと思うんですよ。台湾有事は日本の有事だと言っている人たちもいるわけでね。そうなると沖縄だけが被害に遭うんじゃなくて九州だって四国だって本州だって、それは飛び火することですから。
 ですから有事として騒ぎ立てるよりも、いかに有事を防ぐのか、外交の力、あるいは日本全体がそういう思いをもって紛争を起こさない。ウクライナ戦争がニュースで毎日のように出てくるんですが、犠牲になっているのは、お年寄りからお子さんからすべての女性や男性も含めてみんなです。
 戦争の悲惨さというのは正義をうたう建前はいいんですが、普通に幸せに暮らしている名もなき人たちが突然そういう不幸に追い込まれていくことだと思うんです。そういう意味では有事だから備えようというのは一見当たり前のように聞こえるんだけど、それは非常に危険な方向に進むんじゃないかなと私は思っています。
 辺野古新基地建設に反対するとともに、台湾有事を起こさせない日本の外交が重要ですし、沖縄県でもできる外交努力をしていく。引き続き平和で誇りある沖縄県をつくるため、全国の皆さまと共に奮闘します。

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