日中国交正常化50周年 ■ この道をさらに前へ

台湾問題で米国に追随してはならない
自主外交で東アジアの平和を

『日本の進路』編集部

 9月29日、日中両国は、国交正常化50周年の記念すべき日を迎えた。50年前のこの日、秋天の北京で、田中角栄首相と中国の周恩来総理、両国政府は、「国交関係を樹立すること」を決めた。これはまさに歴史的な決断であり、かつ、50年を経過して激変の今日の国際社会でも、わが国の正しい進路の指針となる英断であった。
 この道をさらに前へと進むことだけが、地域の平和を保障し、両国と世界の発展を導く。
 老大国アメリカは50年前と比しても衰退著しい。興隆する中国を抑え込み、ドルに象徴される特権を維持し、覇権国として世界に君臨し続けようと無謀な画策を強めている。ウクライナの人びとを犠牲にしてロシアと戦争させ、軍需産業・戦争会社・金融資本だけが大儲けするようなアメリカに、東アジアを蹂躙させてはならない。アメリカは「台湾独立」を煽り、「明日のウクライナ」を東アジアに画策している。日米同盟強化、「統合抑止」という日米軍事一体化は亡国の道だ。

 50年前もアメリカは、自国の都合だけで、二つの「ニクソン・ショック」を進めた。田中首相の英断は、それに対抗してわが国の真の国益を追求したことだ。
 戦争のにおいも強まる今日、50年前以上に、日本の運命は日本自身で決めなくてはならない。自主外交で、平和と繁栄の東アジア実現に進路をとるときである。

両国は手を携えて東アジアの平和と発展を実現

 この50年間、日中両国関係は、さまざま波風はあったが全体として深くしっかりと結びつき、1894年日清戦争以来、戦争の絶えることのなかった東アジアに平和を実現した。その下で両国は、相互に支援し合いながら経済発展を遂げた。とくに中国の発展はめざましく、今やアメリカをしのぐまでの経済力を付けつつある。
 わが国の貿易は長らくアメリカが中心だったが2007年に中国がシェア1位となり、以来、日中貿易はさらに拡大した。21年には、総額42兆円余、シェア25%(含む香港)となり、24兆円弱(14%)の対米貿易をはるかに凌駕する。
 両国の協力は東アジア地域の経済発展を導いた。世界の名目GDPはこの50年間におおよそ25倍に増加したが、東アジア・太平洋(日中韓+ASEANの国々)地域は実に37倍増となった(ユーロ圏は16倍、北米は17倍弱。世銀統計)。東アジア・太平洋地域のGDP世界シェアは、72年の14・7%から実に32%へと拡大し、世界を牽引する。本年1月1日、日中韓を中心に地域経済圏として「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が発足した。世界人口とGDP、貿易総額の約3割を占める。
 日中の人的往来も活発化し、2019年、日中間の往来は1200万人に達した。自治体間の交流も進み、全国379の地方自治体が中国の地方都市と友好姉妹関係を提携し、とくに都道府県は47のすべてが提携している(2番目に多いアメリカの州とは26都道府県にとどまる)。
 両国を中心に東アジアは、世界経済の発展センターとなっている。この構造変化は、世界の歴史的転換を促している。アメリカはこの歴史の趨勢にあらがっている。

50年前の原則をさらに前進させる

 発展と繁栄、平和を実現した50年前の国交正常化の原則を、その歴史的な重さも含めて改めて確認し、情勢の変化も織り込んで継承・発展させることが重要だ。
 日本は1931年9月18日、「満州事変」で中国侵略戦争を始めた。その戦争状態は1972年になって初めて公式に終結・解消した。
 中華人民共和国政府はサンフランシスコ講和会議に招請されず、両国間の「講和」はなかった。当時の吉田茂政権は後日、台湾に逃げ込んでいた蔣介石国民党一味と、アメリカの圧力で「日華平和条約」を結んだ。中国政権は、当然にもこれを認めなかった。
 日本政府は50年前、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認」し、「日華条約」の破棄と台湾との断交を決めた。さらに、「台湾は、中国領土の不可分の一部」との原則を「十分理解し、尊重」することを約束した。ここにわが国は初めて、「植民地支配」の歴史を清算できた。
 今改めてこの歴史を日本は思い起こし、二度と再び道を誤らないように決意することがまず重要だ。ところが、「台湾有事は日本有事」などと公然と中国内政に介入する発言などが相次ぐ。「台湾独立」をけしかけるような一切の策動を政府は容認すべきでない。
 同時に50年前、わが国政財界は、米国依存ではない道を模索した。今日、どうして衰退著しいアメリカとの同盟関係だけを重視して、興隆する中国、世界の成長センター・東アジアとの関係を分断するような道に踏み込もうとするのか。田中首相の秘書官だった小長啓一氏は、「(ニクソン・ショックで)米国だけに依存するわけにはいかなくなってしまいました。新たに安定的な市場を確保する必要性に直面するなか、中国という大きな市場が隣にあるぞ」ということになった。同時に、「平和な時代に償うべきものは償い、両国関係が一日も早く元に戻り、大きく発展していかなければいけないとの思い」もあったと述べる(朝日新聞電子版、8月30日)。
 また両国は50年前、「両国間には社会制度の相違がある」ことを前提に、「平和友好関係を樹立」した。それが「両国国民の利益に合致」し、「アジアの緊張緩和と世界の平和に貢献する」と考え、「紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認」した。
 50年前の中国は毛沢東主席指導下のプロレタリア文化大革命の最中だった。社会制度の違いは今よりもより決定的だった。しかし、両国政権はその障害を乗り越えた。地域の平和と繁栄のためには、その「体制の相違」を超える知恵と情熱が両国にはあり、政治指導者には胆力も備わっていた。

世界の構造変化の流れに逆らってはならない

 世界は50年間に激変し、今や歴史の転換期にある。ウクライナ戦争を機に、世界の多くの国々はアメリカとの関係を見直している。アメリカ=国際社会との幻想は、わが国以外の世界にはもうない。
 わが国の各界のリーダーたちも、もうそろそろ「対米従属」という習い性から抜け出すべきではないか。岸田政権が、「建設的かつ安定的な日中関係」を望むのであれば、自主的外交を貫かなくてはならない。「米国に防衛を大きく頼る日本は日米同盟を堅持し、米国と結束を深めることが国益にかなう」といった奴隷根性、対米従属思考から脱却すべきだ。真の独立国への道に踏み出すべき時だ。
 アメリカは「専制主義対民主主義」の対立などと煽って、中国攻撃を正当化している。
 野党の中にも中国の人権や民主主義を問題にする人も多い。もちろんどの国の人権も民主主義も重要だ。だがそれは、それぞれの国の内政問題であり、他国には解決できず、その国の国民、政府だけが解決できる。また、台湾について、「台湾住民の自由に表明された民意を尊重」すべきとの野党もある。だがこれこそ中国の内政への干渉である。野党も50年前の両国間の約束を守り、台湾は中国の不可分の一部との原則を堅持しなくてはならない。問題を解決できるのは、日本ではない。台湾を含む中国の国民であり、中国政府である。両国国民の中に対立感情を煽るような行いは野党も慎むべきだ。
 アメリカの戦争策動に反対し、自主的な道を日本は選択すべきだ。今こそ独立自主の外交で平和を確保しなくてはならない。

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