2022年の冒頭に考える

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ポストコロナ時代のJAM運動

 

ものづくり産業労働組合JAM会長 安河内 賢弘

 

 コロナ禍は、私たちの社会を支えるセーフティーネットにぽっかりと大きな穴が開いていることを浮き彫りにしました。そして、パートやアルバイト、フリーランスなどの不安定雇用労働者やひとり親世帯、外国人労働者など社会的に弱い立場に置かれている人々がその大きな穴に落ちてしまいました。その多くが未組織労働者であり、また多くの女性たちが含まれています。コロナ禍は、医療、介護、保育、飲食、サービス業などの現場や家庭生活に深刻な影響を与え、その主たる従事者である女性たちを直撃しました。東日本大震災に匹敵する大災害であるコロナ禍において、政府与党は残酷なほどの冷淡さを見せ、私たち労働組合はあまりにも無力でした。二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、産業別労働組合JAMとして、しっかりとした総括が必要だと考えています。


 多くの働く仲間が困窮し、政府与党への怒りが充満していたにもかかわらず、私たちJAMの扉をたたき、労働組合を結成しようとした労働者は、決して多くはありませんでした。このことは私たち労働組合が、「男性・大手企業・正社員のための団体であり、いまだに冷戦時代のイデオロギーで動いている時代遅れの団体だ」というイメージが世の中に定着しているからにほかなりません。これは大きな誤解であり、この矮小化されたイメージの払拭なくして、組織拡大はありえません。

1.時代の大転換期における中小労働運動

 DXやカーボンニュートラルなどの技術革新が加速しています。こうした技術革新は私たちの雇用や働き方に重大な影響を与えることが懸念されています。とりわけEV化に伴う業界再編はすでに始まっており、2020年だけでJAMに加盟する51単組で1万人を超える希望退職が実施されました。この希望退職の特徴は黒字下で行われ、その後の再就職支援も手厚く実施されていることであり、十分な労使協議が行われた上での希望退職ということです。現在はコロナ禍において事業再編は一定の落ち着きを見せていますが、今後さらに加速することが想定されます。今は大手部品メーカーが中心ですが、今後はこの動きが中堅・中小労組にも波及し、希望退職にとどまらず、廃業やM&Aも増え、それに伴い労使紛争も増えてくると警戒をしています。
 私たちJAMは技術革新そのものに反対しているわけではありません。私たちがどんなに反対しても技術革新は加速していきます。であるならば、技術革新については前向きにとらえながら、その上で、どんなに技術が進歩しても人間の労働が中心となる働き方や誰一人取り残されない公正な移行を追求していくことこそが私たち産業別労働組合の使命であると考えています。日本では公正な移行についての議論はほとんど行われていないというのが現実です。
 カーボンニュートラルはマクロ経済の分配構造を変化させます。例えば炭素税は企業が創出した付加価値を税収として回収する役割を果たします。また、欧州では23年から段階的に炭素国境調整メカニズムを導入予定で、当面、環境規制の緩い国からの鉄・アルミ・電力・肥料の輸入を対象とし課税すると公表しました。欧州委員会は年間約20億ユーロの税収増になると試算し、ロシアや中国など幅広い国に影響するとみられています。こうした動きはエネルギーや原材料の輸出国の収益を輸入国の税収に移転することにつながります。
 さらに省エネは技術革新に伴う設備投資を加速させる一方で、個人の経済活動の抑制も要請することになり、設備投資の増加と個人消費の減少を示唆しています。また、失われる雇用の受け皿として期待される再生可能エネルギー産業はまだまだ補助金頼みである感が否めず、既存の製造業に比べて低賃金に抑えられています。いずれにしてもカーボンニュートラルに伴うマクロ経済構造の変化は私たちの賃金が下落する方向だということを示唆しており、これでは公正な移行とは言えません。
 JAMでは公正な移行を目指し、黒瀬直宏元嘉悦大学教授にご協力をいただき、「ものづくり進化論Ⅲ」の策定に取り掛かっています。基本的な姿勢として、日本のものづくりを支えているのは中小企業であり、東京一極集中型社会から地方分散型社会へとつなげていく主役は中小企業であるという認識のもので、中小企業をより積極的にとらえていこうとしています。アトキンソンによる中小企業不要論が話題となりましたがこれと真っ向から対立する姿勢です。黒瀬先生のアトキンソン批判が、JAMのホームページにあるJAM’s Insightに記載されておりますのでぜひご一読いただければと思います。いずれにしても公正な移行に向けてJAMとしてのビジョンをしっかりと示していきたいと考えています。

2.すべての働く仲間と共に

 JAMはひとりでも加入できる労働組合JAMゼネラルユニオンを立ち上げて、個別労働相談に応じています。こうした機能を産別内に持っているのは連合傘下の産業別労働組合ではおそらく自治労全国一般、全国ユニオン、そしてJAMだけではないかと思います。相談の多くはSNSです。日本人はツイッターを通じてLINEからの相談が多く、外国人はフェイスブックを通じてメッセンジャーからの相談が多いのが特徴です。JAMには在日ミャンマー人の労働組合FWUBCと在日ブータン人の労働組合ILUBが組織されていますが、とりわけミャンマー人技能実習生からの相談が急増しているため、FWUBCのミンスイ執行委員長をJAMのオルガナイザーとして雇用し、日々、ミャンマー人の労働相談に応じています。
 日本で働く外国人労働者のコミュニティーの中でJAMに相談すれば助けてもらえるという噂が口コミで広がっており、ミャンマー人のみならずさまざまな国籍の方からの相談が寄せられています。外国人労働者の相談は多岐にわたります。賃金不払いやハラスメント、解雇問題など典型的な労働相談に加えて、パスポートを取り上げ奴隷労働とも言えるような労働をさせるといった深刻な相談も後を絶ちません。さらに賃貸のトラブルや就職相談、外国人労働者同士の人間関係の相談などもあります。
 日本人からのLINE相談では、若い方からの相談も多く、アルバイトやインターンシップの問題について大学生からの相談を受けることもあります。とはいえ、コロナ禍で困窮する働く仲間が多くいる中で、相談件数はまだまだ少ないと考えており改善が必要です。最大の課題はJAMが個別労働相談を行っていることが世の中に知られていないことです。JAMは39万人の組合員を有する連合第5位の産業別労働組合であり、全国にオルガナイザーを配置して運動を推進しています。私たちができることは決して少なくありません。まずは知っていただき、声をかけていただけるようにさまざまな場面で目立っていくことが重要だと考えています。
 JAMゼネラルユニオンの活動は、古山修氏によるところが大きく、日々忙しくご活躍をいただいております。JAMゼネラルユニオンのホームページに「労働運動は楽しい!! 古山修」という文章が掲載されています(https://jamgu.hatenablog.com/entry/2021/02/15/141028)。
 古山氏の人柄を感じていただく上でも重要な文章だと思いますので、ぜひご一読いただければと思いますが、組織拡大の極意は人間力を磨くことだということをいつも感じさせられます。

3.価値を認めあう社会へ

 JAMの理念には次のように書かれています。
 「機械金属産業ならびに関連産業には多くの中小企業が存在し、その中で多くの労働者が働いています。わたしたちは、これらの労働者が置かれている雇用の不安定や低い労働条件など、我が国の産業構造に起因している不当な格差、差別、犠牲を排除するため全力をあげます。そのために、連合の運動の重要な柱として中小労働運動を確立させ、国の政策・制度の見直しを求めることにより、中小企業労働者の利益を擁護します」
 中小労働運動はJAM運動の一丁目一番地です。「価値を認めあう社会へ」はJAMが公正取引の確立を目指し16年から始めた運動のスローガンです。単に「公正取引の確立を」というスローガンにしなかったのは、「製品」の価値だけではなく、そこで働いている仲間の「労働」の価値もお互いに認めあって、適正な取引慣行を実現しようという思いを込めたからです。具体的にはポスターやビラなどによる啓蒙活動に加えて、春闘時に大手メーカー、サプライヤーの双方に適正取引実現のための要望書を毎年提出していただいております。20年度の実績としては、309単組が組合から会社への要望書を提出し、それを受けて53社が取引先へ改善要望を行いました。その上で取引条件の改善が見られたと答えた企業は19社あります。
 JAMは年に2回、独自に景況調査を行っていますが、ものづくりの現場では売上高はV字回復の様相ですが、原材料価格の高騰に製品価格の改善が追いついておらず、経常利益はマイナスで推移しています。
 V字回復の要因は中国経済の早期回復によるところが大きいと考えています。JETROの調べでは、20年の日中貿易の貿易量全体に占める割合は23・9%に及んでおり、米国やEUとの貿易が落ち込む中で過去最高となっています。その後も大幅な伸びを見せており、21年1~4月の日中貿易(双方輸入ベース)を見ると、輸出は前年同期比27・1%増の660億7059万ドル、輸入は18・3%増の608億6476万ドルで、ともに2桁以上の伸びとなっており、前年に新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んだ反動もありますが、中国国内のインフラ投資や民間投資の急速な増加などを背景に、堅調に推移しています。
 日本にとって中国はともに経済発展を続ける欠かせないパートナーとなっています。いみじくも22年は日中国交正常化50周年にあたります。中国が国際社会から真に尊敬される国となることは日本の国益にもかなうと考えていますが、残念ながら習近平体制の傲慢とも言える姿勢は、国際社会から眉をひそめて見られていますし、私たちの価値観からすれば、一連の人権問題は看過できない問題だと思います。
 一方で、日本側の近現代史に対する蒙昧さは恥ずべきことだと思いますし、台湾有事をことさらに煽って中国脅威論を展開するのは責任ある言動とは言えません。米中の経済対立は、1980年代から90年代前半にかけての日米貿易摩擦を彷彿とさせます。中国はこの時の日本の経験に学ぶところがあるのではないかと思いますし、中国を敵国として見るのではなく日本が果たすべき役割があると考えており、労働組合の立場からも国際労働運動の強化を果たしていかなければならないと思います。

4.終わりに

 私たちは機械金属産業に働く仲間と共に、全国にオルガナイザーを配置して、企業連化に傾斜する連合運動に歯止めをかけ、社会的公正労働基準の確立を目指して中小労働運動を推進してきました。こうしたレガシーを使って、今後は個別労使紛争支援やパートやアルバイト、フリーランスなどの不安定雇用労働者の組織化、外国人労働者の組織化にも取り組んでいきます。
 より多くの仲間との連帯を力に、労働運動で社会は変えられると信じて、共に頑張りましょう!

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