安全な食糧自給、農林漁業を核とする持続可能な地域循環経済へ

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「国の根幹は農にあり」

ワクチン敗戦国の次は食料敗戦国を許さない

熊本県議会議員 西 聖一

 私は1983年に熊本県庁に入庁し、農業改良普及員、農業行政、農業研究センター等農業技術者として23年奉職した後、自治労推薦の議員として現在に至っています。農業に対する危機感を共有し、命を守るための日本の安全安心な食糧確保を堅持していくための運動を大きく展開したい思いを述べさせていただきます。

 「国の根幹は農にあり」という思いで、稲・麦・大豆・いぐさの生産振興や農業後継者の育成を中心に取り組んできました。
 30年前、農政は、戦後の食糧難時代を経て、高度成長期に入り「他産業並みの所得確保」を大きな課題として施策を展開し、高品質高生産、そして経営の規模拡大によるコスト低下を大きな柱として取り組んでいました。
 なかでも土地利用型農業は、米国農業への憧れもあり、大型機械の導入や農地集積を図り、おおむね10‌ha以上の経営規模を目標に農家の育成を図ってきました。10‌ha規模の大規模経営は、100haを優に超えるような欧米の規模と比較できる規模ではありませんが、それでも九州では誰もが経営できる規模ではありません。
 私も、集団転作推進の集落座談会に毎夜出かけ、地域の中核的担い手を中心とした、集落営農による土地利用型農業の維持発展に努めたものでした。特に本県は施設集約型園芸が盛んであり、ハウス等の固定型施設は、米・麦・大豆の輪作体系を進めることを一層困難にして苦労をしたものです。
 さらに、国内では米が余っているということを理由に、食管制度の廃止、転作の推進、多用途米や耕畜連携により飼料用米の導入など、目まぐるしく生産環境が変化し、猫の目行政と揶揄されてきました(これは今も変わらないか)。
 国内農業は機械化や省力技術の導入、農地の基盤整備の進捗等により、生産コストの低下が進んだ一方で、2000年代にはWTOやガット・ウルグアイ・ラウンドなど関税の問題等、外圧が強まる中、外国産並みの低価格生産をということで、さらなるコスト削減が求められました。消費者も安く買えれば、外国産でもいいのではという認識も広がり、低価格競争に拍車をかけました。
 農業技術が上がり、経営規模が大きくなっても、農業所得が思うように得られない。これでは後継者が育たないわけで、大規模経営の優等生であった北海道の農家も経営継続が困難なため離農者が増えているなど、全国的にも農業者の高齢化と後継者不足により厳しい現状になっています。
 後継者不足対策については、近年、新規参入者に対する手厚い支援や雇用就農の推進、そして、農業を未来産業と位置付ける大企業が、農業特区を活用して農業参入も試みられていますが、経営の安定化には程遠く成功している事例は限られており、地域の農業や農家が疲弊している報告が目につきます。

日本の食糧危機は現実に

 このように、日本の食糧生産基盤が脆弱になり、米以外の主要穀物は海外からの輸入に頼っている日本の食糧生産危機に多くの有識者が警鐘を鳴らしています。
 山田正彦元農林水産大臣は、TPP協定反対の取り組みを通じて、アメリカ大資本企業に日本農業が乗っ取られていく危険性を訴え、種子法廃止反対、種苗法改正反対運動の中心で活躍されています。また、同時期の堤未果氏の著書『貧困大国アメリカ』は衝撃でした。アメリカ企業の農業戦略のすさまじさと、犠牲になる農民の姿。
 そして、この状況を解決するために、鈴木宣弘教授は生産者と消費者の連携を強めることが重要であることを訴えておられます。
 私も議員活動に取り入れてきました。除草剤成分グリホサート、殺虫剤成分ニコチノイドの危険性、またゲノム編集等による遺伝子組み換え農畜産物、成長ホルモンや抗生物質の多用の危険性を、機会あるたびに消費者に訴えています。
 また、鈴木氏の講演内容については、一部議会質問に引用させていただき、学校給食支援事業の創設・強化を図り、その結果、学校給食の地産地消率は全国一位となっています。本県の菊池農協の三角組合長も同様の取り組みをされていることは大変心強いものがあります(『日本の進路』5月号記事)。
 農協と生協、学校給食会が連携することで、食の安全に対する国民の意識が大きく変わってくるのではないかと考えています。
 さらに、SDGsの流れや新型コロナウイルス感染症、CO2削減宣言もある意味追い風となっていますが、域内流通の重要性と家族経営農家の育成が、これからの農政に必要なことを議会から発信をしています。
 例えば、これまでのハイリスク・ハイリターンの農業推進補助金制度にも疑義を唱え、中山間地等の小規模な農家が経営を持続化できるよう、使い勝手の良い補助金制度や融資制度をつくっていくべきだと意見しています。
 また、政府が廃止した種子法についても、関係機関と連携して、県独自の種子条例を制定するに至りましたが、これは県内農家の不安を一掃できた画期的な取り組みであったと考えます。この条例制定にあたっては、県行政部の強い抵抗がありました。県職員時代の同僚と喧々諤々論議を交わしましたし、農政連への働きかけなど、苦労しました。種苗法改正についても大変問題意識を持っており、今後農家への影響がないよう警鐘を鳴らしています。

自治体議員連盟をつくって国政を動かす

 しかし関係当局には、外圧に対する危機感が感じられません。アメリカ企業のロビー戦略、TPP交渉戦略、日米FTAもなすがままと言わざるを得ません。日本の食糧に対する危機意識が低いことを利用して、外資系企業の儲けの場にされていることを腹立たしく思います。例えば、農水省は、農薬、成長ホルモンの使用基準やゲノム編集食品は安全であるとしていますが、ヨーロッパの使用基準と比べると規制が緩すぎます。
 危険性が証明されないから危険ではない、という理論には閉口してしまいます。水俣病等を経験している日本は、食物連鎖の結果、最終消費者である人体に蓄積された結果が、大変な惨事をもたらしたことを教訓に、その取り扱いにもっと慎重になるべきです。
 それでは、今後、日本の農業を守るためにどのような対処をしていくべきなのでしょうか。
 まずは、コロナ禍の今だからこそ、「日本はワクチン敗戦国の次は食料敗戦国になりうる」というフレーズで食糧自給率の向上に対する国民意識を高めることだと考えます。輸入がストップしたときに、日本国民は飢えることがないのかということを国民へ啓発する必要があります。
 さらには、鈴木氏や印鑰智哉氏等が提唱を始めたローカルフード宣言、フードマイレージ、学校給食の地産地消率向上・無償化など生産者、消費者が一体となって、自国農業を支える運動を展開していくことだと考えます。
 このような取り組みについて先日の鈴木教授のオンライン講演会等を通じて、同じ思いの皆さんがたくさんいることもわかり心強く感じました。
 全国の自治体議員連盟をつくって国政を動かすことが今必要だと感じています。今年の全国地方議員交流研修会でもそのような同志が集まり、この国難を乗り越えていく運動の核ができればと願っています。

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