南西諸島軍事要塞化 ■ 馬毛島基地化の西之表市長選・市議選

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市民は「基地建設ノー」の意思を示した

西之表市議会議員 長野 広美

 全国からも注目された鹿児島県西之表市の市長および市議会議員選挙は1月31日、投開票された。市長選は、馬毛島基地に反対する現職・八板俊輔市長が勝利した。市議会は、反対派7人で、賛成6人、中立1人と勢力図が変わり、今後の議会運営は困難が予測される結果となった。

 厳しかった選挙戦は、推進派の自民党、業界団体による周到な準備があった。市民の感覚としても、「すでに決まったこと」との認識、また、「人口減少」「生活苦」には自衛隊も仕方がないといった諦め感も一部にあった。
 しかし、票や議席では見えない確信の持てる明るい面があった選挙だった。議員選挙では、投票率が前回77%から80%に伸び、女性候補者数も過去最多となった。馬毛島基地問題に強く危機感を抱く市民、とりわけ女性たちの広がりを実感した選挙だった。

琉球弧の島々の北端・種子島

 馬毛島を改めて紹介したい。種子島は与那国島まで連なる琉球弧の島々の中で最も九州本土・鹿児島県佐多岬に近く、歴史的にも大和文化圏の南端に位置している。黒潮海流の恩恵は海の恵みだけでなく、遣唐船や鉄砲伝来、島の特異な自然環境などと、豊かな文化や歴史、産業の中にも見て取れる。そして宇宙センターも。
 馬毛島は、屋久島にも近く種子島の中心地である西之表市から真西10㎞沖にあり、魚の宝庫で豊かな漁場として種子島の人々を支えてきた。南北4㎞、東西3㎞の丸い島は、平原と森林部の中には真水の河川が4本あり自然の多様性と独自の景観を有する。亜固有種のマゲシカが生息し、渡り鳥、チョウ、回遊魚らの休憩地であり、その自然は屋久島に並び、日本初の国立公園となる可能性もあったほど。

政界に癒着の企業に翻弄され続けた馬毛島

 戦後になると、食料難から国からの払い下げによる入植世帯が増え、小中学校の分校ができ、西之表市街地とは市営船が結び、最大人口500人で島はにぎわった。
 しかし、馬毛島は不幸の連鎖だった。
 始まりは、放漫経営と政界との癒着が評判だった平和相互銀行が、「レジャーランド」の看板を掲げて馬毛島を買収したことである。
 島が完全な無人島となった1980年以降、「馬毛島開発株式会社」の親会社は、石油備蓄基地やレーダー基地などの国家プロジェクト誘致を巡り、多額の不正融資問題を抱え倒産する。この間に200億円とも臆測されるような巨額の抵当権が設定されるなど土地は不良債権化が進んだ。1995年、鹿児島県知事が仲介する形で、鹿児島県出身の立石氏(立石建設株式会社)が馬毛島を買い取る。不幸その2の始まりである。
 立石氏の、馬毛島開発計画は当初から場当たり的で、40年間全島採石事業計画、米国貨物専用航空会社のハブ空港建設計画などもあったが、主目的は「地上げ」である。
 99%以上を私有された島は密室化した。地権者が違法開発を繰り返すも、採石法、森林法などに基づいた十分な行政処分も行われず、大量の土砂流出による漁業被害や広範囲のサンゴ礁の死滅をもたらした。森林法では、違法開発と認定されれば、都道府県知事が原状回復を命じることができると規定されている。しかし、鹿児島県は2度の現地調査を地権者の協力が得られないとの口実で中断し、違法開発を繰り返す地上げ屋を放任してしまった。一方、林野庁や防衛省は、「民有地から国有地に変わった時点で法規制から外れる」(西日本新聞20年2月16日)と、2020年の馬毛島の国有地化を理由に正当化した。

 この間地元では裁判運動で馬毛島を守ろうとしてきた。2000年の工事差し止め仮処分の鹿児島地裁への申請から始まり、公害等調整委員会への申し立て、また鹿児島県に適切な行政処分を求めた行政訴訟、葉山港周辺の入会地の買収に対する入会権訴訟などが断続的に続いた。
 直近の漁師ら13人が鹿児島地裁に提訴した漁業被害に対する損害賠償請求では、森林法による伐採届や林地開発許可を超える広大な面積を違法造成し続けた結果、優れた漁場である馬毛島近海で環境破壊が起こり、漁業被害を受けたと訴えた。今年2月10日、福岡高裁(宮崎支部)での判決は土砂流出量や程度を的確に認めることができないこと、また総じて磯焼けなどの海洋環境からの影響や操業条件等の変化なども理由にして、控訴を棄却した。しかし同時に、判決では「馬毛島の東側や南側の海岸への開発行為による土砂流出が、漁を妨害するものであった」と違法開発を認める内容となった。国有地化後には違法開発を不問にするという防衛省を、不問にすることは許されないと考えている。

政府が米軍に差し出した馬毛島

 この法に違反している土地を、国は問題となる広大な造成部分を加算して160億円もの法外な価格で買収し、馬毛島自衛隊基地(仮称)建設を強行しようとしている。
 日米安全保障協議委員会(日米外務・防衛担当大臣協議、いわゆる2+2)は2011年、FCLP(米軍空母艦載機離着陸訓練)の恒久的基地の候補地として馬毛島を合意した。当時は、民主党政権下であった。
 06年、岩国市民が圧倒的多数で拒否したにもかかわらず、政府は米軍空母艦載機の神奈川県厚木基地から岩国基地への移転を、アメとムチの攻撃で強行した。こうしてFCLPの硫黄島から馬毛島への移転計画が持ち上がった。米軍再編ロードマップの流れに沿ったものである。19年の日米安全保障協議委員会では、改めて馬毛島での訓練計画が再確認された。
 当初の米軍による年2回程度のFCLP訓練および災害対応の自衛隊使用計画が、その後はなし崩し的に膨張してきている。日米のジェット戦闘機訓練の年間150日間に上乗せして、水陸両用訓練や離着水訓練などの「離島奪還作戦」を見立てた訓練、それ以外にも全国に分散している自衛隊演習訓練が馬毛島に集約されるという。
 今後、西之表市長は国による住民の分断を超えて、官邸主導の国家権力との闘いを挑むことになる。すでに環境アセスメントを強行する防衛省側は待ったなし。八板俊輔市長を支え、さらに議会運営を応援していくのも、この地元漁民や女性たちをはじめとする市民の力が大きく原動力となる。基地問題は今や地方自治権の骨幹をなす議論として全国に発信していきたい。

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