菅義偉新政権の成立 ■ 安倍政権崩壊は必然

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新しいグランドデザインが求められている

『日本の進路』編集部

 9月16日、国会で菅義偉首相が選出され、新政権が発足した。
 7年8カ月に及ぶ安倍政権は、首相が政権を投げ出して崩壊した。全国の自民党員による党員投票すらなしの総裁選出であった。公明党は、節操もなく今回も連立で政権に加わった。菅新首相と関係が深いといわれる日本維新の会は、事実上の与党である。
 他方、枝野幸男氏を代表に新たな立憲民主党が立ち上がった。野党各党は、首班指名選挙で枝野氏にこぞって投票し、解散総選挙に備えるとしている。
 新政権は、安倍政権を「継承」するという。主要閣僚も、自民党幹事長も留任した。
 だが、首相が代わろうが、わが国が直面した内外の窮地は変わらない。安倍首相は、内外の諸難問に追い詰められて辞任に追い込まれたのである。
 世界が、戦争の危険も含むような大転換のさなかにあるからだ。
 対米従属下の日本はどこから見ても限界点を迎えた。菅新政権も打開できるはずがない。
 今、わが国は、国民のための政治でアジアの一員として事態を打開するか、それともアメリカに縛られた財界本位の政治でアジアでの戦争、破局に向かうのか。新たなグランドデザインが問われている。
 国民を貧困からの脱出に導く、自主・平和・アジア共生の日本をめざす時である。明確な対抗軸をもった広範な国民的戦線の実現が求められる。総選挙準備だけでなく、何よりも国民運動を発展させなくてはならない。
 菅新政権が追い詰められるは必定、国民の力で打ち倒さなくてはならない。

菅政権 変わらないもの変わるもの

 菅新政権は、いかなる政権となるのか。
 安倍政権を継承するというが、何を継承し、違うのはどこなのか。
 新内閣が16日、発足に際し閣議決定した「基本方針」は冒頭、「安倍政権の取り組みを継承し、更に前に進めていく」という。
 同時に、目指す社会像として、「自助・共助・公助」を言う。菅政権の狙いは、本来政府がなすべき社会保障などを否定し、「自助」にすり替えるものである。さらに、地方活性化、人口減少、少子高齢化などの山積する課題を克服すると言って、「既得権益にとらわれずに規制の改革を全力で進める」と強調する。各論の中でも、「(コロナ禍で問題となった)デジタル化などの新たな目標について、集中的な改革、必要な投資を行い、再び力強い経済成長を実現する」と、規制改革による「成長」が強調されている。
 さっそく、日本経団連中西宏明会長は、「デジタル化をはじめとする大胆な成長戦略を強力に実行し、ポストコロナ時代の新しい経済社会を切り拓くことを期待」と大喜び。財界は7年8カ月前も、安倍政権のアベノミクスを大歓迎した。7年間に大企業純利益は2・1倍増、株価時価総額も2・3倍増だから当然だ。しかし、零細事業者や中小企業、とりわけ地方にはほとんど全く恩恵は及ばなかった。多くの農家は、「強い農業」政策で、逆に弱体化、犠牲にされた。労働者の実質賃金は低下し、企業収益に対する人件費の割合を示す労働分配率は72%から66%にまで低下した。
 それでも、大企業・財界が長く求めてきた構造改革、規制緩和の成長戦略は中途半端に終わった。特にここ数年、デジタル化を中心に世界から何周も立ち遅れていると財界は危機感を強めていたが、コロナ禍がそれを公然化させた。
 菅政権がそれに立ち向かうという。財界が大喜びするのは当然である。マスコミも一斉に支持のキャンペーンを張っている。
 しかし、技術革新で雇用はいっそう失われる。労働者には大企業も含めての大失業時代となる。すでに、鉄鋼や自動車などの大企業産業でもリストラが始まっている。中小企業の整理・再編も進み、倒産や廃業が急増することになる。国民総犠牲の貧困化に拍車がかかるのは必至だ。
 だが、めざすこととやれることは違う。「一強」と言われた安倍政権でもできなかったのだ。菅政権は、内外のいっそう激しい抵抗に遭遇することになる。
 また、「基本方針」は、菅政権の外交・安全保障政策について、「機能する日米同盟を基軸とした外交・安全保障政策を展開していく」という。さらに、「国益を守り抜くため、『自由で開かれたインド太平洋』を戦略的に推進するとともに、中国をはじめとする近隣国との安定的な関係を構築する」という。安倍政権と変わらないようにも見える。
 しかし、防衛大臣の閣僚人事では踏み込み、大きな変化が見られる。安倍前首相の実弟だというだけでなく、日中国交正常化以来のわが国の国際公約である「台湾は中国の一部」の原則を事実上認めない、「日華議員懇談会」幹事長を長く務める岸信夫衆議院議員を防衛大臣に就けた。露骨な反中国シフトで、菅新政権がアメリカに「誤解」されないためのサインを送ったと言える。
 それでも「経済は中国」という、わが国の現実は何も変わらない。支配層の動揺は続くことになる。
 菅政権は、安倍首相がなしえなかった憲法改悪についても、言い直したが「政府として挑戦する」と言う。だが、これまた安倍政権でもやり切れなかった。しかし実際は、「集団的自衛権」も、「敵基地攻撃」も、「解釈改憲」で乗り越えた。菅政権はそれを継承する。辺野古新基地建設や膨大な軍事費支出と軍事強国化も「継承」、強行される。森友・加計・桜を見る会に河井買収事件、黒川検事長問題と、安倍政権を追い詰めた疑惑も、「ふた」をしたまま引き継ぐ。
 こうした新政権を許してはならない。

大転換時代の世界に対応が求められる日本

 冷戦が終わって世界は、中国やロシアを含む大国間の激しい争いの場となっていた。わが国財界はずっと、このグローバル競争の世界に対応する構造改革と対米従属下であっても国際的発言権確保の内外政治を求めてきた。安倍政権は、規制改革など構造改革こそ中途半端だったが、まさに財界の求めに忠実な政権だった。
 しかし、この期間に世界はさらに激変した。2008年のリーマン・ショックは、需要不足を金融バブルでしのぐ世界経済の矛盾を露呈させた。それでもその後、各国は一段の金融緩和と財政出動で乗り切ってきた。そこをコロナ感染症が襲った。世界中で需要が蒸発して経済危機は一挙に深刻化し、100年前の「大恐慌以上」と言われている。
 しかもこの間に、世界の経済的力関係は大きく変化した。先進国経済は衰退し、新興国が大きく登場した。特に中国は、実際の経済実力評価に近い購買力平価GDPでみると2014年にアメリカを上回った。今年、1・4倍となるとIMFは予測したが、コロナ禍でさらに差は開いたに違いない。当然のように技術力でも、軍事力でも、急速に追い上げている。コロナ禍への対応もあって基軸通貨ドルの地位も危うくなっている。
 衰退するアメリカはオバマ政権の後半から、総力を挙げた対中国巻き返しに踏み切った。トランプ政権が、中国をたたきつぶそうと「体制転換」の攻撃を強めて、緊張はさらに激化した。
 アメリカ企業にも各国政府にも、対中政経分離を許さず、経済でも中国を締め上げようと攻撃を強めている。ペンス副大統領は昨年10月、米国企業を名指しで批判。今年7月にはポンペオ国務長官が、「(NATOの)同盟国にも、中国市場への参入が制限されることを恐れ、肝心なときに香港問題で立ち上がっていない国がある」と攻撃。
 軍事衝突の危険すらある米中対峙のなかで、日本は経済力は落ち込んでいるとはいえ3位だが、対米従属に縛られている。しかも、中国とは深い経済関係で隣国。資源もなく、自身の大きな市場もない日本は、翻弄されている。
 「反中国」の安倍政権だったが、ここまでは「日米同盟強化」でトランプ大統領に抱きつきながら、「安全保障は米国、経済は中国」と、いわば政経分離でやってきた。
 だが、それが限界にきた。安倍首相の最も熱心な支持者だった櫻井よしこ氏は8月14日、主宰する国家基本問題研究所の名義で意見広告を出した。まさにアメリカの手先のようにして、「安全保障も、経済も米国」と、日本の政財界指導者に迫ったのだ。せんだって7月、米戦略国際問題研究所は、国務省の「グローバル関与センター」と共同して、自民党二階幹事長などを「親中派」として攻撃する「日本における中国の影響力」と題する報告を作成した。アメリカは、日中の経済関係断絶を迫っている。
 だが、中国を中心にアジアでしかわが国経済は成り立たたない。アベノミクスも実際は輸出に支えられていた。特に、コロナ禍のわが国経済はいち早く脱出した中国への依存を強めている。
 いずれにしても隣国と敵対して、遠くの国との同盟関係で長期にやっていけるはずがない。国は引っ越せないのだ。
 しかも世界では、デジタル化を中心に企業の技術革新も一気に加速された。GAFAなどの新たな企業が世界経済で支配的位置となった。
 今わが国は、コロナ禍で官民のデジタル化の立ち遅れが赤裸々となった。財界は劇的な世界的技術革新競争への立ち遅れに危機感を強め浮足立っている。
 安倍政権はこうした状況に対処しきれずに破綻した。
 総裁選を争った石破茂氏は「グレート・リセット」を唱えた。この言葉は、来年のダボス会議のテーマであり、世界の資本主義経済の難題を指している。
 日本の直面した難問に解が求められていることは間違いない。この時代に対処するグランドデザインが求められている。

菅政権の難題 自民党基盤の分裂と動揺

 蓄積され激化した諸矛盾が、コロナ禍で一気に露呈し、経済も、安全保障も、技術革新の国際競争も、わが国の国際環境は激変した。菅新政権は、安倍政権崩壊の、その同じ環境を受け継いだ。
 客観環境にご祝儀はない。早晩、安倍氏と同じく立ち往生は必至である。
 わが国財界も望み、すでに約束している習近平中国国家主席の国賓来日の判断が迫られる。日米の貿易問題や駐留米軍経費負担協定問題もある。アメリカからの「反中国同盟」の要求はいちだんと強まる。
 国民の方は向かない菅政権だが、アメリカの方ばかり見て、財界の方は向かないわけにはいかない。「『安全保障』も『経済』も米国」などと言っている人びとは迫られる。支配層や自民党は揺さぶられ、動揺が避けられない。
 しかも、規制緩和、構造改革である。コロナ禍に襲われた中で倒産や廃業が続出する。零細事業者、中小企業は自民党の伝統的な支持基盤であり、不満はたちどころに菅政権への批判となる。すでに小泉純一郎政権以来の構造改革で、農村部を中心に地方には不満が渦巻き、自民党は見放されている。これが都市部に広がることになる。
 社会的危機に対処するには、財政が必要だが全く余裕がない。コロナ感染症の緊急対策があって、財政赤字問題はとりあえず棚上げされている。だが、早晩、だれが負担するかの大問題となる。日銀の輪転機も永遠に回し続けるわけにはいかない。
 自民党の最大の後ろ盾、財界も動揺し、支持基盤もさらに崩れる。財政で手を打つにも限られている。「敵」内部が四分五裂し、政権自らが支持基盤を最後的に掘り崩す幅広い国民的戦線構築にまたとない有利な条件である。
 広範な国民的戦線で菅政権を追い詰め、財界のための対米従属政治を最後的に葬り去ろう。
 国民を貧困から脱出に導き、アジアで戦争をさせない、自主・平和・アジア共生の日本をめざそう。

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