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コロナ第2波が目の前 ■ 課題を考える

真の政治家とはこうした危機の時に動けるか

国の難局、地方の難局に腹をくくって立ち向かうということ

Save Okinawa Project代表
玉城 研太朗
(沖縄県医師会理事・那覇市医師会理事・那覇西クリニック診療部長)

 「卯の花の 匂う垣根に 時鳥 早も来鳴きて 忍音もらす
 夏は来ぬ」

 1896年に発表された、佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲の日本の唱歌「夏は来ぬ」。
 わたくしはこの曲がとっても好きだ。長い冬が終わり、卯の花が咲き乱れ、ホトトギスが鳴く、いよいよ夏がやってきた、と何というのでしょうか、弾けんばかりの夏の爽快感が見事に歌われており、心躍らされるそんな歌ではないだろうか? 沖縄県に長く厳しい冬などないが、いよいよ梅雨も明け、まっつぁおな空と照り付ける太陽、エメラルドグリーンの海を眺め、わたくしはとある会議の前に沖縄県恩納村にある谷茶前の浜公園に立ち寄り、この歌を聴きながら、ここ数カ月の出来事、沖縄県が日本全国があるいは世界中が立ち向かって闘ってきた「COVID-19」のことを思い返していた。
 沖縄県のCOVID-19は2020年2月1日に那覇港に寄港したダイヤモンド・プリンセス号の乗客を乗せたタクシー乗務員が2月14日にPCR検査で陽性となったことが始まりであった。3月はしばらく陽性者が出なかったものの、3月の後半の春休みに沖縄県外より多くの渡航者が訪れ、4月には多くのCOVID-19陽性者が出るようになってしまった。「まずはどうにか県外からの渡航自粛を行い、沖縄県民が一致団結してこの難局を乗り越えなければならない」

 4月4日に沖縄県在住あるいは県外、国外の沖縄県にゆかりのある医師、弁護士、薬剤師、行政、タレント、天文学者、政治家、公民館長、民間企業の有志が発起人となり、COVID-19から沖縄県を守るべく「Save Okinawa Project」を立ち上げた(https://www.facebook.com/SaveOkinawaProject/?modal=admin_todo_tour)。

Save Okinawa Projectシンポジウムメイン会場

Save Okinawa Projectシンポジウムメイン会場(中央が筆者)にオンラインでメッセージを送る玉城デニー沖縄県知事

 まず私どもはWebで沖縄県知事に向けて、①COVID-19収束までの不急の沖縄県への流行地から渡航の自粛を宣言いただきたい、②渡航自粛に伴う、観光、経済等に関する徹底的な補助、対策を行っていただきたい、という2点の要請を行うべく署名活動を行った。県内外から約4000筆の署名をいただき沖縄県行政への要請を行い、玉城デニー知事は4月8日に「県外から本県への旅行などを含む渡航について自粛をしてほしい」と記者会見で述べられた。また時を同じくして、沖縄県一致団結してこの難局を乗り越えていこうと、県内外のインフルエンサーの皆さまに10秒動画を作っていただき配信した(https://www.youtube.com/channel/UCO7doc2G5Tlu8yqenHWSJHA)。
 タレントの具志堅用高さんや歌手のMAXの皆さま、ソフトバンクホークスの東浜巨投手や沖縄県内で大人気の護得久栄昇さんなどに動画を寄せていただき、また那覇市長や浦添市長、名護市長や沖縄市長など県内主要都市の首長の皆さまにもご参加をいただき、沖縄県民が一致団結できるよう動画を配信させていただいた。
 さて小生は医療人であり地区医師会あるいは県医師会の理事でもあり、医療者としてさまざまな活動をさせていただいた。沖縄県も他県同様例外なく、マスクをはじめとして物資不足に頭を悩ませていた。このような中でどうにか物資を手に入れるべくいろいろと頭を悩ませていたところ、物資調達に東奔西走飛び回っているおばちゃん(否)お姉さま県議がいらっしゃるという情報を聞きお会いさせていただくことになった。山内末子沖縄県議会議員である。初めてお目にかかったが、まあなんとも迫力のあるお姉さまでございまして、物資不足の現状をお伝えしたところ、マスクや防護服をあらゆる箇所から調達し、わたくしども医療界もどうにか難局を乗り越えることができた。山内議員はちまたで「マスクおばさん」(ご本人Facebookより)と呼ばれていたようで、わたくしからは到底「おばさん」などと言えないわけだが、沖縄県の医療界にご尽力をいただいた(おばさん)議員に心より感謝を申し上げたいと思う。
 またこういうこともあった。4月後半、沖縄県のCOVID-19患者が連日二けたを超えるようになり、県内の医療機関が疲弊する中で、ゴールデンウイーク中の県外からの飛行機の予約数が6万人を超えているというニュースが流れた。最前線の医療機関はどうにかこうにかギリギリのラインで闘っていたのだが、この時期に多くの渡航者がいらっしゃるのは沖縄県の医療崩壊につながりかねない。どうにか県外の皆さまに沖縄県へのゴールデンウイーク中の渡航を自粛していただかないといけない。
 山内議員にお願いをして知事につないでいただき、とある日曜日のお昼、知事と電話でお話をさせていただいた。「知事はもともとパフォーマーですから、ぜひとも全国の皆さんに渡航自粛の発信をお願いします!」。知事はすぐにSNSで全国の皆さまに、「沖縄県は現在皆さまのおもてなしをする準備をしています。準備ができるまでしばらくお待ちください」と発信をしていただいた。これがものすごく大きな反響があり、全国ニュースでも取り上げられた。発信のあと沖縄県への渡航予約は大幅に減少し、そのおかげで5月は沖縄県でCOVID-19陽性者が1名も出ることはなかった。
 わたくしども医師会では那覇市の行政と一緒にドライブスルー方式のPCR検体採取センターを設置した。設置場所の選定に難渋したが、那覇市若狭のクルーズ船ターミナルに開設することができた。さてこの件のクルーズ船ターミナルである。2月1日にダイヤモンド・プリンセス号がこの地に寄港し、沖縄県のCOVID-19が始まったわけである。「沖縄県のCOVID-19はこの地で始まった。この地で沖縄県のCOVID-19を終わらせる」との力強い志のもとわたくしどもはPCR採取センターを運営し、5月末にはその役目を(いったん)終えることになった。また感染症診療の最前線で働く医師や看護師などの医療従事者の皆さまには、二次感染を恐れてご自宅に帰れない方が多数あった。わたくしども医師会と行政、そしてホテル旅館業組合の皆さまと連携して、最前線の医療者のためのホテル宿泊事業を行い、多くの医療従事者にご利用いただいた。
 わたくしども医療者のみならず沖縄県の皆さまの団結力により、沖縄県ではCOVID-19が収束の方行に向かい始めた。しかしながら観光業に依存した沖縄県経済に大ダメージで、喫緊に解決をしないといけないCOVID-19の二次災害だと考えている。Withコロナ、AfterコロナあるいはBeyondコロナの沖縄県社会をどのように創っていくのか、「Save Okinawa Projectシンポジウム COVID-19から新しい沖縄県の未来を創る」を2020年5月17日Webにて開催をさせていただいた(現在YouTubeで見られるのでぜひともご覧くださいhttps://www.youtube.com/watch?v=VORWO4aiKFk&feature=emb_err_woyt)。
 沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師、沖縄県新型コロナウイルス対策サイトプロジェクト世話人の宮里大八先生、ハワイ在住の天文学者嘉数悠子先生と小生からショートレクチャーを行い、その後玉城デニー沖縄県知事とのクロストーク、そして後半は本Projectのメンバーのそれぞれの専門的なお立場からレクチャーをいただき、WithあるいはAfterコロナの新しい沖縄をそれぞれのお立場で論じていただいた。
 沖縄県をはじめ全国的にもCOVID-19が収束傾向にある中で、6月19日より都道府県をまたぐ移動の自粛が解除され、沖縄県でも県外からのお客さまを受け入れるようになった。沖縄県では水際対策の一環として、那覇空港内に旅行者専用相談センター「Traveler’s Access Center Okinawa:TACO(タコ)」が開設された。しかしながらこれだけでは渡航者や県民の皆さまへ「安心」をお届けするには不十分であり、渡航される皆さま、沖縄県民の皆さま、医療界や行政、あるいは観光業界や飲食業界など皆さまがWin-Winの関係が構築できるようなシステムを開発中である。ここには、感染症の専門の先生、沖縄県の観光業界のトップ、IT開発者等で精鋭のチームをつくり、現在projectが遂行中である。この文章が出る頃には運用が開始されていることを期待したい。

政治家の皆さまにお伝えしたい、一般人からのメッセージ

―以下政治家の皆さまへのメッセージですので、敬語にさせていただきます―
 政治家の皆さま、平素は社会のため、市民、県民のためあるいは国民のためにご尽力されていますこと心より感謝を申し上げます。わたくしは政治家ではございませんが、一般人の視点から政治家の皆さまにメッセージをさせていただきたいと思います。
 まず皆さまにご質問です。皆さまにとりまして「政治」とは何でしょうか? いろいろな思想の方がいらっしゃり、わたくしは保守系の主張、革新系の主張双方ともに素晴らしいご意見があり、時勢に応じたあるいは社会情勢に応じたそれぞれの意見を尊重し、わたくし自身の社会活動、医療者ですのでもちろん医療活動ということになりますが、行わさせていただいております。皆さま今一度胸に手をあてて考えてみてください。皆さまは政治家としてしっかりとお仕事ができていますでしょうか? 政治屋さん選挙屋さんになっていませんか? 選挙の前だけ握手活動をし、素晴らしい公約を掲げ、弁舌さわやかにマイクを握り、皆さまが掲げた公約、どれくらい実現できましたでしょうか?
 100%実現できなくてもわたくしは良いと思います。ただひたむきに、腹をくくって歯を食いしばり、泥臭く公約実現に向けて奮闘できましたでしょうか? 新型コロナは前代未聞の国家の危機、地域社会の危機となりました。政治家の皆さまはこの危機下においてどのような活動をされましたでしょうか? 今回わたくしはこの危機下でいろいろな政治家の皆さまを見てまいりました。政治家たるもの、国家の危機、社会の危機において汗をかき、市民、県民、国民を守る活動ができるのか、自分を犠牲にしてでも社会を守ることができるか、真の政治家とはこういった危機の時に動けるかどうかだと心より思うところであります。
 わたくしは医療者です。医師免許を持つものとして国民、県民、市民の健康を守ることは使命であり、覚悟を持って今回のコロナに立ち向かってまいりました。政治家の皆さま、今一度この危機下に自分が何をしたのか、思い返してみてください。そしてこれからやってくる社会に対し、全力で身を粉にして奮迅していただけましたら幸いでございます。
 卯の花の 匂う垣根に 時鳥 早も来鳴きて 忍音もらす 夏は来ぬ――、
 長いコロナの時代から復活を遂げ、沖縄県にも待ちに待った夏がやってまいりました。沖縄県は楽しい、美しい、おいしい、幸せの島です。多くの皆さまのご来県を「うとぅいむち(おもてなし)」の心でお待ち申し上げております。