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[コロナ危機] 傷つく人々を全力で支援 費用負担は応能で

財源負担問題の国民的議論を

『日本の進路』編集部

 第1次に続いて第2次補正予算が成立し、通常国会は閉じた。
 一般会計歳出は当初予算と合わせ総額160・3兆円、過去最大だった19年度(104・7兆円)の1・5倍に。補正の財源は全て国債で今年度の国債発行額は90・2兆円となる。
 未曽有の国民的危機にはあまりにも「遅すぎる」「少なすぎる」対策だが、大企業や大銀行、大金融資産家には十分すぎる財政・金融支援であろう。しかも、給付金事務に大企業が食いつき利益を貪り、パソナのような白アリも集っている。
 他方、傷つく人々や、頑張っている医療関係者や社会インフラを支える人々への支援は「雀の涙」、それもまだ多くは届かない。
 国民の命と暮らしを守るには、毎月10万円程度の給付など直接的な生活支援、中小零細事業者への大規模な支援がますます必要である。所得が少ない人ほど負担が重い消費税も全面的に見直す必要がある。
 新型コロナウイルス感染症も、経済恐慌も長く続く。金融恐慌も避けられない。医療・保健体制の再建強化と傷つく国民への支援は喫緊の課題である。

 問題は財源である。来年度予算案の編成が始まる。財務省は、国民からいかに取り上げるか策を練っていると伝えられる。
 費用負担は「応能」で。余裕ある人・企業が負担する。これこそ「社会正義」である。
 われわれは5月号で、「まずは、不要不急の財政支出を見直せ」と、辺野古埋め立て工事中止を挙げた。イージス・アショア配備は停止になった。武器の爆買いなど全面的に見直したらどうか。約170兆円に上る米国債も売り払え。
 「そのうえで不足分は持っているところから、財政で潤ったところから。大企業から、富裕層から」と主張した。小栗崇資教授の論文を紹介し「大企業の内部留保への特別課税」を提案した。不公平税制を見直し、富裕層の所得税や相続税の累進性強化も提案した。
 「払える人が払う」、これが正義である。大企業の膨大な内部留保の原資は、本来労働者に払われるべき賃金であり、国家すなわち国民に払われるべき法人税だった。われわれの提案は、コロナ禍という未曽有の国民的危機に際して、労働者国民に返してもらおうというささやかな提起にすぎない。

「世代内」の不平等から目をそらさない

 財源問題で野党は逃げているか、赤字国債発行である。
 他方、政府の財政制度等審議会(財務大臣諮問機関)の6月1日の財政制度分科会では、「将来世代への負担先送りをさせてはならない。コロナ収束後、いっそうの財政再建が必要」と強調する発言が相次いだという。「現在対将来」という捉え方をすることによって、「世代内」の極度の不平等から目をそらさせてはならない。野党には「とりあえず借金でまかなっておいて、今後ある程度長期間かけて返済していくという方法が合理的」という考え方もある。「とりあえず」は、急ぐから借金は当然かもしれない。しかし、「時間をかけて返済」では、「世代間対立」を煽る政府に対抗できない。何よりも現在ある不平等を隠し、結果的に貧困層ほど負担を強いられることになる。
 前例がある。東日本大震災、東電福島第一原発事故対処の復興財源が、「復旧・復興のための財源については、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担の分かち合いにより確保しなければならない」(菅政権の「復興構想会議」答申11年6月25日)となった。

東日本大震災「復興」財源は誰が負担したか

 現実はどうだったか。11年11月30日に成立した「必要な財源の確保に関する特別措置法」では、当面の支出を「復興国債」発行で賄うとともに、所得税の25年間2・1%上乗せ(増税規模約7・5兆円)、個人住民税の10年間年1000円上乗せ(同約0・6兆円)、法人税の3年間2・4%上乗せ(同約2・4兆円)の臨時増税10・5兆円で穴埋めすることになっていた。増税は今も続いている。ところがいまだ最終的にいくらになるかわからない原発処理費などを中心に圧倒的な不足は明らかになっているし、その使われ方も問題だらけだが、それはここでは触れない。
 「今を生きる世代全体で連帯し、負担」との言い草で、「均等」に負担が押し付けられた。実際は、貧困層に負担が重い「連帯税」だった。所得税は課税所得に対して一律2・1%上乗せだし、個人住民税に至っては所得にかかわりない「均等割り」に、一律1000円上乗せされた。
 法人企業に対する法人税は、資本金額1億円超程度の企業もトヨタ自動車のような巨大企業も一律2・4%上乗せだった。それすらも12年から法人税基本税率が30%から25・5%に減税されていて、実質は減税だった。しかも第2次安倍政権は、それすら期間を2年間に圧縮し打ち切った。
 「今を生きる世代全体で連帯し、負担」などという空言に騙されてはならない。当時与党だった今の野党、とりわけその幹部にはこの教訓をしっかりと反省してもらわなくてはならない。
 さらに腹立たしいのは、「今を生きる世代全体で連帯し、負担」で借金は残さないと言いながら、政府長期債務が増え続けた。11年度末に727兆円だった債務残高は、19年度末には956兆円。周知のように保健衛生費も、年金支給額も、中小企業費も国民生活に関連する歳出は大幅に削られ、国民の社会負担は増えてこの結果である。いったい誰の懐に入ったのか。
 コロナ危機対処には、「奪われた富を今こそ奪い返せ」「大企業の内部留保を吐き出させろ。富裕層に累進課税を、大企業法人税に累進性導入で増税しろ」。これこそがリアルな主張ではないか。

「余裕ある人・企業の負担増を」マスコミにも登場

 そうした中で注目すべき見解がマスコミにも登場している。
 財界の新聞と目されている日経新聞紙上でも、みずほ総合研究所の元日銀理事のエコノミストが、「傷つく人々を全力で支援し、最後はその費用を負担能力に応じて分かち合う、という形にすることが、社会正義にもかなう」と提案。
 毎日新聞の位川記者は、「余裕のある人・企業に負担増を求めるしかない、と私は考える。現在の日本の税制は高所得者や資産家、グローバル企業に優しすぎる」と問題提起。そして、三木義一青山学院大名誉教授の発言を紹介して「国民的議論」を呼びかけている。
 これらの提案に賛成である。今こそ国民的議論を起こさなくてはならない。税と財政を通じた所得の再分配は政治の中心課題である。
 いつまでも日銀引き受けの国債発行に頼れないのは間違いない。インフレが起こったらやめるという極論まであるが、それは経済的「平時」の楽観論ではないか。今は、IMFや世界銀行なども言うように第二次世界大戦に至った1930年代に匹敵するかそれ以上の大恐慌のさなかである。しかも、金融恐慌の爆発も迫っている。未曽有の経済社会の混乱の始まりに位置している。
 差別と貧困、格差社会からの脱却が迫られている。アメリカ国民は果敢に、まさに命がけで街頭に出て闘い始めている。日本も抱える課題は根底では共通である。
 この危機を乗り越え、どのような新しい日本を築くのか、国民的議論と行動が求められる。