「韓国は敵ではない。共同すべき大切な味方である!」

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin

東アジアの対立をあおり紛争を待望する同盟国アメリカ

青山学院大学教授 羽場 久美子

本稿は、羽場久美子青山学院大学教授が、「韓国は『敵』なのか」緊急集会(8月31日、東京都内)での発言に大幅に加筆したものである。(一部タイトルは編集部)

 集会のタイトルは「韓国は『敵』なのか」ということですが、私は、「『敵』ではない、共同すべき大切な味方である!」という立場で話させていただきます。私は元々ヨーロッパ研究の国際政治学者ですが、21世紀に入って足かけ20年にわたり、東アジアの地域協力について研究してきました。

1 世界で緊張が高まり、歴史的転換期にある

 現在は非常に緊張が高まっている状況です。国際政治学者として最初に言いたいことは、今が歴史の転換点にあることです。
 昨年が第一次世界大戦終結100年だったわけですが、100年、200年、あるいは300年に一度の大きな転換点です。第二次世界大戦開戦80年、冷戦終焉30年という節目でもあります。
 欧米中心の近代世界から新しく中国やインドなどアジアが急速に発展している中で、われわれはどのような位置に立っているのかということを問い直す時期にきています。
 アメリカのハーバード大学教授、グレアム・アリソンも言っています。こうした「世界的な権力の転換期に戦争が起こる」ということです。そして、戦争は隣国と起こる。近隣国との領土問題、国境問題から起こるということです。
 現在、東アジアで起こっていることはまさにそうした近隣国との争いの激化です。東アジア全体が、非常に不安定化してきています。
 特に日本は、残念なことに、大切な隣国3カ国すべてと、領土、国境、歴史問題をめぐって対立しています。第二次大戦後、不幸な朝鮮戦争はありましたが、その後は戦争なしに発展してきたこの地域がきわめて危うくなっている。戦争の足音がひたひたと近づいていると危惧します。
 戦争が偶然から勃発しないための条件は、隣国と仲良くすることです。戦争は、隣国との関係の中で、偶発的に勃発するケースがほとんどです。現代の戦争は、中世のように戦闘準備して、陸の境界線を境に、軍人(武士)がぶつかり合う構図ではなくなりました。偶発性、心理戦、ゼノフォビア(外国人嫌い)、さまざまな可能性を含んで、小さな衝突や小競り合いが起こり、それが大きな戦争に発展していくのです。
 韓国は、日本の隣国では唯一、アメリカを仲介とする同盟関係にありました。ところが、慰安婦問題や徴用工問題から両国の対立が高まり、特にここ半年くらい、日本が経済面で韓国をホワイト国から除外したころから緊張関係が一気に激化しました。韓国の市民も反日デモや不買運動に参加し、強い反日ナショナリズムが起こっている。
 今回、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)での安全保障の情報交換の共同を韓国が破棄しました。安全保障でも対立する、大変重大な段階に入ってきていて、きわめて危険な状況です。政治的には戦争前状況といってよいような状況と言えると思います。
 両国は問題の重大性を察知し、すぐに双方が対話と譲歩の方向に向かうべきです。チキンゲームをやっている段階ではありません。

2 対立をあおっている同盟国アメリカ

 日本はアジア大陸の外側を覆う、3000キロに及ぶ島嶼国です。これは近代の大国が海に出て植民地や影響力を獲得してきたことを考えると、日本が近代化する条件でもあり、また翻って、中国・ロシアなどの大国を、太平洋に出さないための自然の要塞でもあった。それ故、この自然の要塞をアメリカが利用し中国・ソ連という社会主義国が東に出ないように分断政策をとってきたこともあり、東アジア大陸の近隣国とほとんどよい関係にないわけです。北方領土でロシアと係争を抱え、韓国と竹島、あるいは北朝鮮とは拉致問題、中国とは尖閣諸島と問題を抱えています。歴史的にも多くの国は、隣国との境界線で対立の根をはらんでいます。
 そうした中で、日本は太平洋のはるか向こうの、アメリカという国しか親しい同盟国を持っていないところに危うさがあった。それも第二次世界大戦で日本が真珠湾攻撃をし、戦争を終わらせるために日本に原爆を落とした国でもあります。アメリカは果たして日本を信用しているのでしょうか。
 その同盟国との関係がトランプ政権の誕生の中で今崩れ始めているといえます。きわめて危うい状況です。「同盟国」のトランプ大統領は公然と「日本は守りたくない、自分で守れ」と言い、リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)と安倍首相に直接言い、大量の武器を日本や台湾や韓国に売りつけている。何のためか? 近隣国、特に中国の軍事力拡大に、東アジアのアメリカの同盟国が対抗せよと言っているのです。
 北朝鮮のミサイルに関しては、アメリカに届く長距離核ミサイルは絶対に困るが、中距離・短距離はよいと言っている、すごく危ないことですね。「弱い核を開発しろ」とも言っている。東アジアの局地戦争は容認する構えです。
〈東アジアでの紛争は期待されている?〉
 香港では民主化運動が本土を揺るがし、不安定化が広がっています。平和なデモ隊は急速に暴力化し、警察とぶつかり合っている。警察が銃を構えると世界中のメディアがそれを衛星放送で映し出している状況です。
 東アジアの分断が、急速に進んでいるわけです。歴史的にはきわめて明快な論理、すなわち東アジアで局地紛争が起こってほしいという戦争待望論です。誰かがアジアの急速な経済発展をよく思わず妨げているような状況です。
 背景に、米の衰退、米経済の頭打ち状況があります。他方、東アジアは世界の発展と繁栄の中心になってきています。IMFや世銀などの見通しでも10年後、20年後、30年後には、中国やインドなどアジア諸国がアメリカを抜いていく。
 アメリカは自国の衰退は望まない。トランプ大統領のあけすけな自国ファーストは歯止めが利かなくなり、露骨な自国生き延び作戦に入っているということです。
 その結果、東アジアはどういうことになっているか?
 日韓関係ではこの2年だけでも、徴用工への賠償命令判決、韓国海軍駆逐艦の海上自衛隊への火器管制レーダー照射、日本の輸出優遇対象国リストから韓国を除外、韓国の日本商品ボイコット、GSOMIA破棄等、一挙に関係が悪化している。庶民まで反日デモ、日本製品不買運動に参加している。
 なぜこうしたことが起きているか。この背後に、対立を期待し、あおっているアメリカという国の存在があることを忘れてはならないと思います。
 香港では、ウクライナ危機の時と同じように、アメリカの政府関係者がデモ隊を激励したり、デモ関係者がアメリカを訪れたりしています。「マスク禁止条例」が出ましたが、マスクは普通の風邪をひいたときのマスクではない。催涙ガスや火炎瓶にも対応できるような戦闘用のマスクをデモの最前列の人たちがかぶって鉄パイプで警官と闘っていますが、それはどこから配られたのか。そもそも顔全体を覆うマスクをかぶっていては、学生や市民かどうかも見分けがつかない。平和なデモ隊と、最前列の暴力をふるっている人たちは、同一の香港市民ではないように見えます。BBCが撮影した議会突入のビデオを見ると、めちゃくちゃに構内が壊されている。一般市民が行った行動のレベルをはるかに逸脱しています。「民主化」を要求する市民のデモなら、市民のデモとして平和的にできることをやるべきで、警察をも殺せるような暴力を容認すべきではない、と思えます。

3 東アジアの分断政策の推進

[1]

 北朝鮮ミサイルについては、アメリカと北朝鮮2国で問題解決を試みている。ICBM長距離核ミサイルは爆破してアメリカに届かないようにする。他方で中距離・短距離はOKだというわけです。意図するところは、東アジアでの局地戦争でしょう。北朝鮮がどれだけ短距離ミサイル実験を行ってもアメリカは容認している。
 アメリカ自身、INF(中距離核戦力)全廃条約を2019年2月ロシアに破棄通告し8月に失効しました。中・短距離ミサイルは拡大の方向です。また、劣化ウラン弾のような「弱い核」は使えるようにしたいと開発を急いでいます。「強い核」は地球を滅ぼしてしまうかもしれないが、「弱い核」を含む小さな戦争をたくらんでいるといえます。これまで中東などでは紛争が絶えなかったが、恐るべきことに東アジアでも危機が起こればそうした紛争介入ができる状態をつくろうとしています。東アジアの安定と持続的繁栄を望む国民性から、われわれは許してはならないと思います。

[2]

 香港の民主化暴動は時に暴力的な挑発を行い、中国がいつ武力介入に出るかを待ち望んでいるようにも見えます。介入すれば、アメリカが東アジアに軍事仲介する口実ができるわけです。
 中国の経済成長を止め、東アジアを不安定化させるため、分断政策がさまざまな形を通じて取られているように思います。

[3]

 今、東アジアで起こっていることを、内政問題や政府レベルの二国間関係だけでとらえるのではなく、こうした世界的規模で見る必要があると思います。
 欧米中心の軍事力・経済力・価値観、いわゆる欧米近代といわれる理念で、19世紀、20世紀と世界をリードしてきました。21世紀の初めまで、いわゆる「アメリカのユニラテラリズム(単独行動主義)」が世界を守ると思われていました。しかし冷戦が終焉して21世紀を迎えると、アジア各国、特に中国やインドが急速に発展してきた。だが、アジアはまだ欧米に代わって世界をリードする価値観はつくり出せていない。そうした移行期にあるわけです。アメリカはその流れを押しとどめようとしている。時の流れを、元に戻そうとしているのです。
 日本にいる中国人研究者の友人、朱建栄さんが言っていましたが、アメリカには「6割の壁」というのがある。アメリカ経済の6割を超える国が現れると猛烈に叩く。日本に対してのバッシングがそうだったですし、ドイツにもそうだったし、今まさに中国を叩いている。
 だから、今、「第一次世界大戦前状況がある。戦争が始まる可能性がある」「東アジアで何か起こるのではないか」と、アメリカやヨーロッパで盛んに言われているのはこうしたことです。
 それまでの大国が経済的にも軍事的にも頭打ち状態になり、次の新しい国々が台頭してくる。ナショナリズムが成長し、また長く平和が続いたので、戦争を知らない世代が多数を占め始める。戦争なんて過去のことで今は絶対に起こらないと思っている。
 そうしたときに、第一次世界大戦が勃発したのです。戦争の結果、大国は滅び新興国が力を握る時代になります。
 東アジアで何か起こることは、欧米の利益、とりわけアメリカの利益になるということを見ておかないといけないのではないか。
 トランプ大統領の露骨な「自国ファースト」政策を笑ってばかりいられないわけです。アメリカが何を狙っているかを見抜いて、では私たちは何をすべきかを考えなくてはならないと思います。

[4]

 今は、東アジアの国々が対立しているときではありません。やるべきことは日中韓の連携。市民、大学、若者レベルで手を結ぶこと、連携が必要です。東アジアの対立している国同士が手を結びながら、安全保障と平和、発展に向けて言いたいことを言い合えるような話し合いの枠組みが必要だと思います。

4 6カ国協議を平和と繁栄の機構にしていくことが重要

 私は、「6カ国協議」の枠組みで地域対話を現実的なものにする仕組みにできないかということを提起しています。
 ご承知のように、6カ国協議というのは北朝鮮の核をめぐるアメリカ主導の枠組みでした。私は、アメリカ主導でなく東アジアの主導による、「東アジアの安定と平和と繁栄のための6カ国協議」が必要であると提案したいと思います。日本、中国、韓国に、北朝鮮、アメリカ、ロシアがそろえば、東アジア安定化の話し合いができる。世界の話し合いだってできる。北朝鮮を除いたとしても、世界秩序の話し合いができる。世界をリードする最重要国が現在、東アジアに集結しているのです。
 市民、大学、若者レベルで始めてはどうでしょうか。すでに大学間では連携を進めつつあります。まずは日中韓の大学を核とし、ロシアの大学とも話し協力し合う。
 「東アジアで戦争させない」そうした連携を進めようではありませんか。
 つくるべきは、平和と安全保障の制度化と発展。ミサイルは短距離・中距離も飛ばさせない。東アジアで紛争は起こさせない。東アジアで局地戦争が起こって荒廃すれば、悲しむのは私たちの家族、親戚、共同体。漁夫の利を得るのは米欧。東アジアがもう一度不幸になる選択を、私たちは行わない!
 日中韓は対立しない。共同で東アジアを安定させ、その力で世界を繁栄、発展させる。このことを本気で考えていかないと危ういところにきていると思います。皆さん、力を合わせましょう。
 経済と文化と市民を基礎に継続的対話の場を!

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin