持続可能な農業・農村再生への取り組み(下)

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin

全日本農民組合副会長 鎌谷一也(前鳥取県畜産農業協同組合長)

2、地域からの農と食の再生(未来づくり)への取り組み

②広域農業生産法人の取り組み

 飼料稲の取り組みを行う中で、畜産と提携すべき耕種側の組織の必要性を痛感する。とくに、高齢化が進み60歳以上が9割(65歳以上8割)といった情勢の中で、地元で集落営農法人に取り組む。畜産側で飼料稲の栽培などコントラクターの取り組みを強めたが、連携対象の耕種側は、地域に密着し世代を超えて地域の農地・農業を守るべき組織・農家であるべきという思いで、コントラクターでの利用権設定はせず、全面受託を原則としてきた。一方、当時の農政上も、集落営農法人等を組織すべきという課題が登場していた。
 そうした情勢の中で取り組んだのが広域集落営農法人(小さな農協づくり)である。こだわったのは、中山間地域であるからこそ条件の悪いところも、良いところもすべてを網羅する法人である。良いところだけでは、経営的には良いかもしれないが、悪いところを維持していくためには、良いところも含めて経営管理しなくては、維持が困難となる。さらに、企業等に虫食い状態にされては地域全体の農業を守れなくなる。また、急いで取り組まなければ、世代交代・相続等で管理が困難となる。そうした背景を考えての取り組みであった。
 総合農協の理事に立候補しての取り組みで、当初農協の出資法人化を目指したものの、農協側の了解が得られず、モデル的取り組みという位置づけをしていただいて取り組んだ。合併前の旧町単位での組織化を行い、現在10年が経過、以下の通りとなっている。
 地域全体を支える組織確立から、水田の有効活用・事業強化、そして現在、新たな再生への取り組み、の段階を迎えている。
 農業生産だけでなく、農村機能の維持継続、結集力の維持、農村文化・暮らしの等の継承に力点を置き、どうしていくか。経済的な基盤を強化しつつ、その上部構造の維持継続こそ重要な課題となっている今日である。
 まさに農協の役割が真に問われるととともに、消費者組織である生協についても、産直等の主体的な連携が不可欠となっている。

・水田の集積252㌶(全体の74%)
※集落数30集落、全水田面積340㌶
・構成員541人(組織率77%)、職員17人
・米作付142㌶
・白ネギ・キャベツ・レタス作付8.5㌶
・飼料作物50.5㌶(飼料稲22㌶、飼料米9.6㌶、飼料米SGS13.2㌶、飼料用ソルガム4.4㌶、和牛放牧1.3㌶)

 米作を中心とした水田、農家の所得確保のみならず、中山間地域では重要な保全機能を果たし、農村の暮らしや文化の源となってきた。この水田を守るためにも、消費者との産直はきわめて重要となる。TPPなどの輸入自由化、業務米の拡大等いよいよ米価の下落等が懸念されるが、価格を含め栽培の継続は重要な局面にある。畜産の産直では、自給率向上や、環境保全を含め、「牛を食べていただくと○○aの水田が保全できます」と主張し、理解していただいてきた。しかし、これは牛肉や牛乳だけでない。今や、「中山間地域の米を食することは、日本の農と食だけでなく農村文化、農村自体を守ることにつながる」と声を大にすべき局面にあるのではと危惧している。そのことによって、農家―法人・畜産―農協―生協―消費者の関係がより意識的に形成されるのではないかとも考える。

③共生の里づくりの取り組み

 広域農業生産法人で農業の生産基盤を守るとともに、農村の暮らしや環境全体を守っていくための仕組みとして提起したのが、共生の里づくりであった。「食と農の再生」の戦略的な手段として提起したものである。
 農畜産物(産直商品)を通じての産直など協同組合間協同も大切であったが、それ以上に地域自体の再生、および地域に対する生協の関わり方・役割を模索した。農業生産法人でも、農地・水・環境保全機能としての多面的機能の維持、農業体験の分野などの地域活動はカバーできるものの、どうしても地域活動には無理がある。そして、農村経済や暮らしとの関係において、グローバリズムに対抗できるありようを考える場合、地域のコミュニティーの確立と、開かれた経済圏とする上での信頼できる外部組織等の連携、ものとひとの交流、そして商品等とお金の循環を必要とした。そのため、地域だけではなく、都市との交流も含めた生活圏市場の一形態(生活に密着した市場、地域の循環経済と産直による都市と農村の循環)として取り組んだ。
 2001年3月11日、東日本大震災のまさにその日に13団体で共生の里づくり推進協議会を設立した。地域の農業団体は、広域農業生産法人八頭船岡農場の他に、採卵鶏から6次化を進めている(有)ひよこカンパニー、エリンギを主とする(有)北村きのこ園、鳥取いなば農協。山・林業関係では八頭中央森林組合、日本きのこセンター。畜産関係では、鳥取県畜産農協、東部コントラクター。それらの生産関連部隊と連携し取り組むのが消費者団体である鳥取県生協であった。そして、生産・消費の取り組みをサポートするのは、若いメンバーで構成するNPO鳥大人材バンク、教育・行政の鳥取環境大学、八頭町、鳥取県であった。
 限界集落での生協農園の開設と交流、生協組合員化による物資の供給、各組織間の連携や各団体での体験交流、また農泊事業等の取り組みが進んでいる。いよいよ高齢化と地域福祉が深刻な課題となり人口が減少化する中で、各団体の連携と外部組織との交流連携は不可欠となる。国は、まち・ひと・しごと創生戦略の中で小・中・高生の農村体験を現行の30万人から、2024年には倍増すると言っているが、それと同時に生消の連携交流人口についても、強化することがますます重要となる。

④協同組合と地域との連携によるバリューチェーンの形成~「みんなの牧場」設置~

 産直交流拠点であったコープ美歎牧場に、新たな会社形態の農業生産組織を発足させ、600頭規模の酪農団地(育成牛を含めれば950頭規模)を設置した。事業費は導入牛の購入費用含め、25億円。借入金は18億円の事業である。事業はすでに昨年2月にスタートし、現在ではほぼ予定の飼養頭数になっている。
 この事業も、産直の高度化という位置づけの下で、持続可能な農畜産業の確立と地域と食の再生を図るとするものである。10年前と比較すると酪農戸数は半減し、乳量も減少、一方TPP等経営環境はいっそう厳しさを増す、その危機感からの取り組みであった。
 地域の酪農畜産基盤を守る核として酪農家も出資し一緒につくる牧場。地域の酪農家・畜産団体と連携し、酪農肥育の地域一貫経営をサポートする牧場。雇用を通じての後継者等人材育成、飼料米(SGS)・飼料稲(WCS)の利用による耕畜連携の強化、さらにバイオマス発電による再生エネルギーの確保と消化液(液肥)の活用による資源循環の促進などを目的とする牧場、また、先端技術面でも企業に独占されないよう農民サイドで確保、地域につなげていく、というかなり挑戦的で壮大なものである。
 政府の言うバリューチェーンという産業政策に対し、生産者・消費者が本当にどういう関係をつくっていくのが大切なのか。グローバル化の中で、バリューチェーンの名の下に企業・資本が、生産現場から製造加工・販売まで、支配を貫徹してくる。生産から、商品、価格、さらに開発分野まで握られてよいのか。
 それに対し、本来であれば、生産から消費までのチェーンを形成し、生産者と消費者の信頼と連携の下で、真に必要なニーズに応える(使用価値に基づいた)バリューチェーンをつくる試みも必要と考えられたからである。大手小売りが、生産現場に入って組織する時代である。本来、自らの問題でもある食や農に対し、消費者・生協組織も主体的な取り組みが求められてくる。少なくとも、10年、20年先には、生協の関与はもっと必要となるという思いであった。
 鳥取県生協やコープしがの理事会にそれぞれ数回参加して、説明と議論をさせていただいた。理事の方々は非常に明晰で賢く、課題と問題に対し、消費者・生協として本当に何をすべきかという視点で、厳しい意見や励ましの意見もいただいた。そのことにより、新しい〝みんな〟の「みんなの牧場」が誕生したのである。生協の出資と協力があって初めて地元金融・農業金融団の支援も実現している。
 現在、生協の出資は下記の通りで、議決権はもっていないが、将来どういった関わりが生まれてくるのか。経営への参画や人事交流、新たな酪農・畜産の共同商品開発、地域への取り組みや連携の強化など、協同間協同・産直のイノベーショナルな展開が楽しみである。

議決権のある株式 1者10株上限 農  民 6者51株  
    農協団体 1者10株 61株
議決権のない株式   農  民 11者1097株  
    農協団体 1者2040株  
    生活協同組合 2者6000株  
    地元企業等 2者7500株 16637株

最後に

 生産者・消費者の現場レベルでの直結した関係と主体的かつ独立的な取り組みによる事業基盤の強化は重要である。しかし、それだけではなく、ソフト面および活動面での社会情勢を切り開く社会運動を展望するセクションが求められている。
 JA中央会が解体される中で、本当の意味での協同組合セクターの司令塔が必要であるとともに、アメーバ的なネットワーク、協同と相互扶助の関係、かつ開放的な関係性が、海外へのネットワークも含めて必要となる。その中に、協同組合、とりわけ、日本の協同組合を代表する生活協同組合の役割があるであろう。もちろん、農協も従来の歴史を踏まえ、耐え抜きながら、孤立無援であろうと、地域の中で、農家の生活と暮らしを守るために頑張る組織である。だが、そこに生協との強力なタイアップができれば、何も恐れることはない。

 食と農、そして環境、子供たちを大切にするところにこそ、暮らしと生活を守る運動の存在意義があるといっては過言であろうか。そうした幅広ネットワーク運動の国内、国際的な広がりを願うものである。

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin