2015年11月11日国民連合:神奈川 丹羽宇一朗 講演会要旨

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国民連合・神奈川では2015年11月11日に行われた、丹羽宇一朗(前中国大使)氏を迎えて、「神奈川から東アジアの平和を開く 日中関係打開を一緒に考えよう」と題する講演会を開催しました。

以下は、その時の丹羽宇一朗氏の講演要旨です。

講演要旨

神奈川から東アジアへの平和を拓く
日中関係打開を一緒に考えよう

日中友好協会会長・前駐中国大使 丹羽宇一郎 氏

 皆さん、こんばんは。
 今日お集まりの方は、日中関係について、いろんなことをご存じだと聞いております。気が休まるような皆様にお会いでき、大変うれしく思っています。
 最近、ロンドンやニューヨークから帰ってきた私の友達が、こう言いました。
 「日本に帰ってきて、いちばん驚いたのは、どの新聞を見ても、日本のことばかり書いてあることだ。世界の中心に日本がいるような記事が多い。ロンドンやニューヨークでは、日本の記事はどこにあるか探さないと見つからない。日本にずっといると、日本や安倍総理を中心に世界が回っていると思ってしまうのではないか」。私は「そう思う。日本人はかなり偏った考えになってしまう」と応えました。友達は「安保法制問題でデモがあったり、いろんなことがあったけれど、そういう記事は探さないとないよ」と言っておりました。
 私もニューヨークに10年いて、日本に帰ってきたとき、そう感じましたが、今はすっかり日本になじんで、それが普通だと思っています。皆さんも否応なくそうなっているのではないかということです。
 そこで、今日は私が最近感じていることを3つほどお話しまして、足りないところは、後ほど、お話させていただければと思います。1つ目は、中国とアメリカの首脳会談の真実の姿はどうであったか。2つ目は、今に通じるペロポネソス戦争の「ツキジデスの罠」についてであります。もうひとつは、習近平国家主席の「中華民族の夢」の本当のねらいは何だろうかという話を少し申し上げます。そして、最後に日本の将来をどう考えるか、ということにしたいと思います。

米中会談の真実の姿は

 最初に、2015年9月の米中首脳会談で何が話し合われたのか。この時の内容を記した「ファクトシート」によると、2時間の会談で宇宙、地球環境、ハッキング、北朝鮮、南シナ海、イラク空爆等々、4~50項目くらいあります。共同声明は出しませんでした。その中に、大変注目すべきことが1つだけあります。それは中国とアメリカが、もし、お互いに引き金を引くような偶発的な事件が起きたときは、閣僚級の会談を即刻やるようにしようと確認したことです。南シナ海、ウクライナなど偶発的な事件がどっかで起きる可能性があります。
 案の定、南シナ海で中国が主張する領海、12カイリ以内に米イージス艦が入りました。それで、翌日には両国の軍隊のトップが「お互いに、引き金を引くのをやめましょう」とテレビ会談をやりました。いざという時はこうしようという筋書き通りに動いています。2、3日前にフロリダで、中国軍とアメリカ軍が軍事演習をやっています。中国とアメリカの首脳会談で、何回も確認されたことが日本の新聞は全然書いていません。
 米中で「米国は3カ月に1回くらい航行する」と言っているようだ。アメリカは中国の軍隊が、あの岩礁を埋め立て、滑走路をつくったり軍事基地をつくったりしたら、「これ以上、進めたらダメよ」という話をしています。それに対して、習近平主席は「その通りにする」とは絶対に言っていません。だから、アメリカは3カ月に1回は、「許さないぞ」という構えを見せるでしょう。そこまでは了解点にあると思います。アメリカがどうして今までと違って、強気に出ているのか。中国は今までと違ってアメリカとの妥協を一切しない。それぞれ国内問題を抱えているからです。
 オバマさんは大統領選挙も始まります。共和党が中国に非常に厳しい。クリントン女史は環太平洋経済連携協定(TPP)や中国への対応についても、「オバマさんは弱腰。もっときちんとやらないと選挙に負けるじゃないか」と。大統領選挙に勝つためには、今までと違って、少し厳しくしなきゃいけないというのが、イージス艦の例です。
 一方、中国はどうか。「30年近く、国内総生産(GDP)成長率が10%近くあったのが、最近は7%とか6・9%。おまけに、共産党員が悪いことばっかりやっている。習近平主席はこれを厳しく取り締まってきた。私が「これ以上、やると、中国の幹部から返り血を浴びるから、そろそろ緩めないと。『水清ければ魚棲まず』です。少し、汚しておいた方がいいんじゃないか」と幹部に言ったら、「違う。ここで止めたら、余計に返り血を浴びる。『同じ悪いことやっているあいつらをなぜ捕まえないんだ』という声が出てくる。だから、やめるわけにはいかない」として、続いています。
 蠅と虎にたとえ、蠅は何万人と捕まえた。全部、裁判にかける。虎はまだ数頭で、これをやめるわけにはいかない。密告がある程度になると調査に入る。日本も中国と同じです。毎日のように何百件と密告が入っています。例えば、官僚が100万円近い時計をいくつも持っていたり、外国製の洋服を着たりしていると「あの給料で買えるわけがない」と密告される。中国はこれを続けると思います。そうやって、中国は国内で共産党に対する信頼を得なければいけない。その上に、対外的に弱腰を見せるわけにはいかない。
 習近平主席は、中国人民解放軍の権限を掌握し「習近平体制」を確立したと思います。海外にもどんどん旅行して、かなり強気な発言をするようになっています。お互いに選挙だとか、いろんな国内事情を抱えており、対外的には強気なことを言う。折り込み済みの話し合いをしたと思います。
 どこかの総理が米イージス艦が南シナ海に入ると、何かあれば日本の海上自衛隊がすぐ助けに行きますと言っているようですが、アメリカにしてみれば、中国と軍事演習をやるくらいですから、助けにならないでしょう。日本はあまりにも軽率に「アメリカの後をついていけばいい」と思っておりますが、アメリカは喜びません。日本の米軍支援は「水か弁当を持ってきてくれるだろうから、断ることはないだろう」という程度の話だと思います。
 米中首脳会談で「いざというときは、話し合いをしよう」と決めましたから、完璧に米国と中国が、ケンカ別れするということはまずありません。

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