地域経済一覧

[持続と循環の食料自給経済へ]奈須 りえ

地方にも都市部にも求められる地域循環経済

 

大田区議会議員 奈須 りえ

 鈴木先生のご講演は、これまで進められてきたグローバル化を総括した非常に意義深いものでした。
 NHKスペシャルが報じた「2050に起きるかもしれない食料を求める暴動」はそれだけでも、大きな衝撃でしたが、先生が出された試算は、それよりずっと前2035年に日本が飢餓に直面する可能性をリアルに示しており、食料自給への不安を具体的な危機として私たちに突き付けました。先生は、食料自給率がここまで下がり、飢餓の危機にさらされている背景にある「TPPなど自由貿易協定」と「一連の法改正(種子法廃止→農業競争力強化支援法→種苗法改定→農産物検査法改定等)」など、この間、法や制度が支えてきた公の役割を規制緩和により壊し、市場経済の自由競争にさらすことで、グローバル資本に利益をもたらす構造をつくってきた政府を厳しく批判しておられ、大変に共感いたしました。地方議員としてこの間の制度改正から、農業など一次産業だけでなく、都市部においてもグローバル資本の投資対象が拡大し弊害が生じていることを実感してきたからです。 続きを読む


[持続と循環の食料自給経済へ]山下 公一

希望は若い人たちの農業への参加

 

大牟田市「いちのたんぼの会」 山下 公一

棚田での園児たちの田植え

 

 大牟田市では今日、15名が集まってオンライン講演会に参加しています。大牟田市櫟野は中山間地で、そこで長年にわたって無農薬、無化学肥料栽培を頑張ってこられた山下公一さんの農地に集まって、農作業を楽しむグループとして2003年にスタートしたのが「たんぼの会」です。週に2日、午前中に作業をしています。鈴木先生がお話しになったように、種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改定と続く政権の動きが大変気にかかりまして、種子法廃止に関して山田正彦さん、国連の家族農業の10年に関して関根佳恵さんの講演会を開いたり、映画「タネは誰のもの」の自主上映会に取り組んだりしてきました。なお福岡では今日、筑豊地区と筑紫野市でも同じような会が開かれています。山下公一さんから、集落の状況なども含めて、報告していただきます。
(樋口茂敏) 続きを読む


[持続と循環の食料自給経済へ]高松 幸彦

「改正漁業法」―― 沿岸漁業でも農業とまったく同じ攻撃が

 

全国沿岸漁民連絡協議会共同代表(北海道北るもい漁業協同組合所属) 高松 幸彦

 

 私自身は先生のご講演を聞かせていただいたのは今回で2度目です。最初は自分が共同代表として所属する「JCFU(全国沿岸漁民連絡協議会)」が開催した〝改正漁業法に関する勉強会〟でした。
 安倍政権下での、漁業法の「70年ぶりの改正」というわりには浜を対象にした説明がほとんどないに等しい状態で、国会審議においても衆参両院合わせてもわずか約21時間余り、「数の論理」による乱暴な国会運営でした。このため法案を通してから水産庁の担当者が説明に各地を回るというお粗末なありさまです(改正漁業法は、2018年12月成立、20年12月1日施行)。いまだに大多数の漁業者が法改正の中身を理解できてない状況です。これは当事者である漁民を愚弄し、〝漁業人口の94%にあたる家族漁業経営体を軽視〟していることの表れにほかならないと思います。まさに農業改革で農協の弱体化を狙った時と構図的には似たものがあります。 続きを読む


[持続と循環の食料自給経済へ]三角 修

生産者と消費者は「運命共同体」

JA菊池組合長 三角  修

 JA菊池の三角です。お世話になっています。鈴木先生のお話、久しぶりに「鈴木節」を聞かせていただきありがとうございました。
 先生がおっしゃられましたようにですね、私は農協というのは地域環境を守るという大きな仕事もあると思います。また片方には当然、食料を、日本人の胃袋を満たすという大きな仕事もあると思っています。そのへんにつきましては今日最後の方で、生産者と消費者は「運命共同体」なんだということをおっしゃっておられましたけど、私もまさにそのとおりだと思っております。

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[持続と循環の食料自給経済へ]藤本 好彦

農を土台とした地域の文化と風土を、次の世代につなげたい

山梨県議会議員(南アルプス市園芸農家) 藤本 好彦

 

急がれる!健康な土づくり

 山梨県は、果樹農業が盛んであるため、圃場では窒素・リン酸・カリウム等の資材の堆積が目立ち、果樹の順調な生育を阻害したりするなど、病気も増えています。栽培規模の拡大、機械化、栽培作物の単一など、効率化を推し進めたことで、土壌の成分の偏りが危惧され弱体化が懸念されています。
 県は農業者が不要な化学肥料の施用を防止し、おいしさや栄養価を高め、環境に与える負担を軽減し、適正な施肥を行い健康な土づくりを通じて健康な農作物を育てられるよう、1979年度から、県内約120地点の主要農地において、土壌診断を進め地力に関する調査を実施しています。 続きを読む


[持続と循環の食料自給経済へ]浄慶 耕造

「企業農業」ではなく「中山間地の有機農業」の全国発信をめざす

養父市議会議員 浄慶 耕造

 

 鈴木先生のお話、非常に明快でかつ「怖い」話でしたので、心の中にずっしりと響きました。
 われわれの養父市、話がありました「国家戦略特区」に2014年、最初の5地区のなかの一つとして「農業特区」に指定されました。当時市長は、「中山間地の革命児」などと多くのメディアで持ち上げられました。
 養父市はどういうところかといいますと、2004年に平成の大合併によって市になったわけですが、当時の人口が3万人弱、現在は2万2千人で高齢化率39%の少子高齢化の地域です。かつて経済は、鉱山、林業、養蚕の山村経済の上に商業の隆盛を誇った地域でしたが、ベースの産業の衰退と「大店法」の廃止に伴う郊外店の進出によって「ひっそり」とした中心市街地になってしまいました。 続きを読む


[持続と循環の食料自給経済へ]北口 雄幸

農業参入の「ワタミ」が20年もたたずに撤退

北海道議会議員 北口 雄幸

 北海道からはですね、いわゆる国の「規制改革会議」などで農地に民間企業が参入できるようにして、農業に民間企業が参入しやすくする規制改革が進められたわけですが、参入した民間企業が早くも撤退した事例などについて少しご報告をさせていただきたいと思います。
 全国的な居酒屋チェーンの「和民」があります。この「和民」は「ワタミファーム」をつくって、全国で11カ所、そのうち北海道では3カ所、農場を展開し、野菜や卵、それから牛乳などを生産しております。全国の農地面積は630ヘクタールというふうに聞いております。
 そのうち北海道のせたな町、道南の方の瀬棚農場でありますけれど、平成16年度から国の「構造改革特区」を活用し、ワタミは外食産業向けの有機野菜や有機乳製品の生産を目的に設立、参入しました。ところが、この3月末をもって閉鎖、撤退をするということであります。 続きを読む


核ゴミの最終処分地問題

原発政策最大のアキレス腱 今ならまだ間に合う

北海道議会議員 市橋 修治

 日本原子力研究開発機構は昨年1月、北海道幌延町の深地層研究期間の延長を決め、8月には500mの追加掘削を道と幌延町に提案した。期間延長間もなくの追加掘削提案は道民の大きな不信を招くことになった。そんな折、北海道の西部の町と村に突然の衝撃が走った。考えもしなかった「高レベル放射性廃棄物の最終処分地」を巡る閃光だった。

 「トイレなきマンション」と言われた原発政策最大のアキレス腱が急速に動きだした。 続きを読む


球磨川大水害から ■ いつでもどこでも起こり得る

温暖化と戦後の土地利用、森林・河川政策などの人災

水害がない流域の未来を考える

つる 詳子

 2020年7月4日に球磨川流域を襲った水害から9カ月。いまだに被災地はその爪痕を強く残したままである。護岸の樹木がなぎ倒され、見通しが良くなった球磨川の両岸は、補強用の黒いフレコンバッグで覆われ、泥出しや家財搬出を終えた窓、ドアがない家、柱だけになった家、解体して家屋がなくなった更地と、殺風景な景観が広がっている。 続きを読む



南西諸島軍事要塞化 ■ 馬毛島基地化の西之表市長選・市議選

市民は「基地建設ノー」の意思を示した

西之表市議会議員 長野 広美

 全国からも注目された鹿児島県西之表市の市長および市議会議員選挙は1月31日、投開票された。市長選は、馬毛島基地に反対する現職・八板俊輔市長が勝利した。市議会は、反対派7人で、賛成6人、中立1人と勢力図が変わり、今後の議会運営は困難が予測される結果となった。 続きを読む


南西諸島軍事要塞化 ■ 馬毛島基地建設反対の西之表市長

独立国日本として、今さら「生地」を米軍に差し出すわけにはいかない

八板俊輔 市長に聞く(聞き手、山本正治編集長)

 

 

 

 

◆2期目当選おめでとうございます。選挙結果をどう受け止めておられますか――
 過半数の支持を受けて当選させていただきました。前回は、候補者が乱立したこともありましたが、今回は5103票で前回を大きく上回る支持をいただくことができました。大変心強く思っています。
 同時に、島の経済基盤の確立や人口減少などに対する市民の皆さま方の心配なども、選挙を通じて実感しているところです。そうした課題に市を挙げて、団結して取り組んでいこうと考えています。

日本は植民地と同様の状況だ、真の独立国と言えるか

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地域循環経済に向けて

カギは経済構造転換――核は農林漁業

東京大学 鈴木 宣弘

 「Go To トラベル」事業の議論の根本的誤りは、経済社会の構造そのものをどう転換するか、という視点が欠如していることである。「Go To トラベル」は都市部の3密構造をそのままにして、感染を全国に広げて帰ってくるだけで、都市部の3密構造を転換するという視点がない。 続きを読む