「日中不再戦九州自治体議員の会」訪中団 ■ 報告 西 聖一

戦争をしない、させない日本にするために

訪中団長・熊本県議会議員 西 聖一

程永華先生(左)と

 国際政治に目を向けると、ロシア・ウクライナ紛争を皮切りに、多くの内紛の惨劇が繰り返されています。また、この日本も米中間の対立により、北朝鮮・韓国・中国との関係も悪化しており、政府はそのことを理由に、防衛費を倍増し、「武器輸出三原則」もないがしろにし、各法律に緊急事態条項を加え、挙げ句は憲法9条を改正して、戦争のできる国へ変えようとしています。
 「台湾有事は日本有事である。その覚悟を問われる」と発言した大物政治家の発言にあるように、台湾有事が、日中戦争の引き金になろうとしています。


 台湾に近い沖縄県では、辺野古新基地建設問題と同時に、自衛隊施設・ミサイル基地等の軍事体制が構築されつつあります。また、九州各地でも港湾や空港が「特定重要拠点」に指定されるなど緊張感が増しています。
 このような中、戦争をいかに食い止めるべきかという危機感を持ち、私たち九州自治体議員は団結して、「日中不再戦・平和友好を進める会」を立ち上げて取り組み始めました。会の最初の取り組みとして、4月23日から28日の訪中団を結成し、北京・南京を訪れ、日中友好交流を実施してまいりましたので、その概要の一部を報告します。

中国外交部との意見
交換会から始まった旅

 最初に北京にて中華人民共和国外交部を表敬訪問し、アジア局参事の張梅先生との意見交換を行いました。
 私からは以下のような発言をさせていただきました(この後もさまざまな意見交換の場で同様の発言を行う)。
 私たちは、「日中不再戦、平和友好を進める九州自治体議員の会」を代表して、本日皆さまと友好を深めにまいりました。
 先の第2次世界大戦では、日本が中国に侵略し、多くの中国市民に犠牲を与えたことは誠に遺憾なことであったと考えます。
 また、その日本も米軍との戦いの中、沖縄での激戦や原爆投下を受け、多くの市民の犠牲者を出して敗戦しました。
 しかしながら、日本も、そして中国も戦後復興を成し遂げ、世界の経済大国となり、特に中国におかれては、今や世界のトップクラスの経済大国となっています。

中国外交部で

 それは、世界大戦を反省し、未来に向けての互恵関係を結ぶことが重要であるとして、1972年の日中国交回復をしたことが、大きな要因だったと考えます。相互互恵の関係を保つ中、日中友好交流の一つとして、先に経済大国となった日本で、多くの中国の青年が日本で学び、母国に持ち帰って、今日の中国の技術発展力ならびに経済力の礎になったものと考えています。今は、逆に日本の青年が中国で学ぶ時代になっていると考えます。このような交流を通じて日中友好を続けていくことは、両国の未来発展に向けて大きな意義があると考えます。
 さて、世界では大きな紛争が多発しています。このような中、先日、日本の岸田総理が訪米し、「日米同盟のより強固な関係」を表明しました。このことは、米中間の対立の中で、中国に最も近い沖縄や九州各県にとって、「台湾有事」が発生し、戦争に巻き込まれるのではという切実な懸念となっています。
 日中国交回復50年、そして日中平和友好条約が締結されて45年を経て今日に至っていますが、その関係が今危うくなっているからこそ、国交正常化時の共同声明にある台湾についての約束を堅持することが重要です。
 私たちは、これまでも、そしてこれからも平和で互恵の関係を保ち、経済、文化、観光交流を続けていくことを望んでいます。決して戦争などという対立を起こしてはならないと考えます。
 そのための行動として、「日中不再戦、平和友好を進める九州自治体議員の会」を立ち上げました。どうか、われわれの思いを受け取っていただき、日中相互の友好を継続していく取り組みを行っていこうではありませんか。この訪中を契機にさらなる日中友好の交流の輪が広がることを期待しています。
   *   *   *
 この発言に対して、どのような対応をされるのか緊張しましたが、私たちの発言に大いなる賛同をいただき、これからの友好を促進していくことが、両国にとって何よりも大事であるということなどが意見交換されました。
 また、台湾有事については、中国側関係者は、「何故、同じ中国の領土である台湾を軍事攻撃しなければならないのか? 中国と台湾は両岸交流が友好的に行われており、これからもその関係は続ける」ということであり、日本で喧伝されている「台湾有事」は、何も心配ないようであった。もちろんこの意見は、軍事当局では違うのであろうが、政府や中国国民は台湾を巡って日本と戦争を行うという考えはみじんも感じられなかった。これがまさに中国の現実だろうと感じられた。
 このことは、元駐日大使で中国日本友好協会副会長の程永華先生、劉江永中国清華大学国際関係院教授、中国国際友好連絡会の皆さま、江蘇省人民代表大会常務委員会張愛軍副主任、王華議員とそれぞれの会場の場でも、全く同様な意見であった。

今生きている者が努力しなければならない

 さらに、今回、北京では中国人民抗日戦争記念館、南京では南京大虐殺記念館を参観させてもらいましたが、中国の修学旅行生や大学生、家族連れ、カップルなどさまざまな方が見学・慰霊をされていました。明らかに日本人の一行と分かる私たちに対しても、全く敵意を持った目で見られることもなく、ごく普通に接してくれました。記念館のどこにも日本を憎むようなスローガンはありません。そうではなくて悲惨な戦争の過去を認識し、将来二度と起こしてはいけない、今生きている者が努力しなければならないと結ばれていることに、私は大変感銘を受け、やはりこれからも友好交流の輪を広げていくことが大変重要であると感じました。
 南京大虐殺記念館では、慰霊碑に対して訪中団として献花の場を提供していただきました。「わたしたち、沖縄を含めた九州の自治体の議員から行動を起こし、日中不再戦、平和友好を促進するため、中央政府を動かすこの行動は、両国の未来平和に必ず通じるもの」と表明させていただきました。
 さらにもう一点ご紹介したいのは、中山(孫文)陵の近くにある江蘇・福岡友好桜花園には、九州で34次まで続いた「日中友好九州青年の船」の記念碑もありました。多くの九州の青年が中国を訪れ、友好交流が行われてきています。実は私も13次の団員で、そのご縁で、中国への理解促進に連なり今に至っています。乗船して40年後の今回、訪中団の団長として、日中友好の懸け橋としての役割を受けたことに天命を感じたところです。日中の青年交流がこれからの大きなカギになるものと考えます。
 日中交流は2000年も前から続いていますし、1972年の日中国交回復後は、相互互恵の関係を保ちながら、平和と発展を実現してきた両国です。現在の関係悪化は、全くおかしい話であって、政府の掲げる台湾有事=日本有事という発想自体がナンセンスで、歴史を認識し、これからの両国の互恵関係を維持することでこそ、日本の平和が維持できます。
 以上、今回の訪中団はこれからの大いなる一歩としての足跡を残したことを披露し、「日中不再戦・平和友好を進める」広範な国民連合の大いなる取り組みであることを報告して終わります。
 最後に、中国外交部、中国日本友好協会、中国国際友好連合会、中国政府の関係方面の皆さま、そして共に参加してもらった団員の皆さま、広範な国民連合事務局にも心から感謝を申し上げます。