大半の酪農家が廃業してもおかしくない
9月18日、釧路市で約1000人が決起大会
酪農経営を守ろうと、北海道釧路・根室管内の農協や生産者約1000人が9月18日、釧路市で決起大会を開いた。
冒頭あいさつした釧路酪対の徳田善一会長は「釧路・根室地区だけでなく、全道・全国の酪農経営が過去に経験したことのない危機的状況に陥っている」と述べ、国に対して緊急かつ強力なテコ入れ策を講じるよう求めた。
酪農家の4人が壇上に立ち、自らの思いを語った。
浅野達彦・釧路地区農協青年部協議会会長は、「われわれ青年部では、担い手育成の一環として大学生の受け入れ授業を行っているが、彼らからも『このまま酪農業界を目指して大丈夫ですか』といった不安の声が聞かれる。くやしいのは、そんな彼らに『この業界は大丈夫。酪農は楽しいし、努力は必ず報われる。だからぜひ頑張ってほしい』と胸を張って伝えられないことだ。酪農情勢は極めて厳しい。現下の状況は生乳生産基盤そのものが揺らいでしまいかねないほど深刻なものがある。酪農家の自助努力だけではもはや限界だ。コロナウイルス、ウクライナ侵攻、世界的なインフレ、急速な円安など……。敵は多く、これまでの前例やルールが全く通用しない相手だ。それに立ち向かうにはこちらも力を合わせ、前例のない対策を打ち続けるしかない」と主張した。
伊藤邦子・JA根室地区女性協議会会長は、「今の酪農情勢は、一言でいえば『踏んだり蹴ったり』。私はこの世界に飛び込んで今年で18年目になる。これからも酪農経営を続けていきたいが、最近は将来への不安ばかりが頭をよぎる。いっそやめてしまおうかと考えることもないわけではない。そんな時に思い浮かぶのは息子の顔。酪農業を継ぎたいと言ってくれているが、現情勢下ではすんなり任せるとは言えないのが実態だ。生き物を相手にしている私たちにとって、安易なコストカットは牛の命を削ることになってしまう。少しだけ弱音を吐かせてもらえば、経営はすでに限界に達している。日本の食料を生産している私たちがこれだけ苦しい思いをして頑張っている。国にはもう少しお金をかけるところを考えてほしい」と訴えた。
山本志伸・標茶町酪農振興会連合会会長は、「ウクライナ戦争をきっかけに、食料自給率の向上や食料安全保障が議論になっている今、生乳が余っているのではなく、外国産の乳製品と置き換える時がきたのではないか。需給調整は国の責任だ」と述べ、別海町の丹羽博文氏は、「今回の酪農危機は、未曽有の危機である。大半の酪農家が廃業してもおかしくないほどの深刻なものだ。国には万全の対策を求める。力を合わせ、日本の食・酪農を守っていこう」と、力強く訴えた。
この後、「根釧地域の基幹産業である酪農・畜産業と地域経済を守り抜く」とする大会決議を満場の拍手で採択。佐藤克幸・根室地区農協青年部連絡協議会会長の音頭で「ガンバロウ三唱」で団結を固めた。
根室酪対の望月英彦会長が閉会あいさつ。「朝飯も食わず、牛舎も母ちゃんや息子に預けてこの会場に来られた方もたくさんいるはず。危機にひんしている根室・釧路の酪農民1700戸の心を一つに、『持続可能な酪農』の実現のため皆さんと共に頑張る」と締めくくった。
(「酪農乳業速報」などを参考にさせていただいた)