沖縄を再び戦場にさせてはならない
自主・平和・民主のための広範な国民連合
岸田首相とバイデン米大統領は5月23日の首脳会談で、「中国をめぐる諸課題への対応」を検討し、「日米同盟の抑止力・対処力を早急に強化」を確認した。
米国は、ウクライナ戦争に軍事資源を集中し対中国に手が回らない。その分、日本が前面に立った「対中国軍事同盟」の強化であり、アジア版NATOだとも言われる。日本は、「敵基地攻撃能力」で、自衛隊発足以来の「専守防衛」原則を公然と投げ捨てる。英国BBCは国際放送で「日本は平和主義を放棄」と報道した。韓国でのサプライチェーンなど経済のみの「約束」とは大違いだ。当然にも、中国などアジア近隣諸国は、日本が軍拡競争に乗り出したと身構える。沖縄では、「再び戦場にするな」の危機感が高まっている。日本を守る「平和戦略」、アジア共生の外交重視こそ政治の責任である。「専守防衛」の原則を堅持しなくてはいけない。
首脳会談はロシアのウクライナ侵攻を非難した。だが、ロシアを非難し制裁、国際社会の結束は言うが、戦争を止める話は一切聞かれなかった。「停戦」しなくては、ウクライナ国民の犠牲は止まらない。
日米政府当局者には、戦争の犠牲者のことは頭にない。NATOによる際限のない武器「援助」で戦争は続く。それは誰の利益になるのか。
岸田首相を先頭に「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」などと、「中国敵視・台湾有事」の世論を煽る。「『台湾有事は日本有事』とは、日本が中国と戦争をすることですよ」と、安全保障担当の元内閣官房副長官補だった柳澤協二氏は「勇ましい」政治家たちに問う。沖縄県民をはじめ日本国民が、さらに中国国民も犠牲になると言うことだ。
その「有事」を起こさせないことこそ最も重要である。ウクライナ戦争を見るまでもなく戦争は始まってしまうと止めるのは容易でない。アジア太平洋戦争では、県民の4人に一人が犠牲となった沖縄地上戦、東京大空襲をはじめ米軍の焦土作戦爆撃、最後は広島と長崎の悲劇と、文字通り地獄をいくつも見ずしては終わらなかった。
歴史を忘れてはならない。
昨年4月、菅政権の日米首脳会談が「台湾問題」に踏み込んだ。以来、「日米安保」は「対中国軍事同盟」に公然と変質してきた。
バイデン大統領は会談後の共同記者会見で、「台湾有事」への米軍介入を意図的に「失言」した。台湾「独立」をけしかけ、台湾有事を起こさせる策動が強まっている。米国務省は5月初めウェブサイトから、台湾の独立不支持と自国の一部との中国の見解を認める表記を削除。元国防長官らは相次いで「台湾は主権国家。承認すべき」などと発言。
こうした中で自民党外交部会長佐藤正久は、「自衛隊艦隊に台湾海峡を通過させろ」などと発言。公海とは言え、これまで海上自衛隊が避けてきた海峡通過は公然たる軍事挑発だ。
しかし米国自らは、「あいまい」なままだ。国務省も、大統領本人も、会見翌日には、「政策に変更無し」と。台湾海峡をめぐってアジア人同士を闘わせる「策略」がまた一歩進んだのだ。
中国政権が、この「台湾独立」の策動をどこまで容認できるか。会談後、中ロは連携して爆撃機を日本列島を周回させた。
沖縄と全国におかれる在日米軍および自衛隊基地は文字通り「戦場化」の危険に再び直面した。
「日中不再戦」「沖縄を再び戦場とさせない」「第3の被爆地をつくらない」、対アジア平和外交こそが求められる。
避ける道は一つ。
50年前、体制の違いもあって対立していた日中間の最大の対立点は、台湾の扱いだった。国交正常化の際に田中角栄首相は、「台湾は中国の不可分の一部であり、内政問題に干渉しない」ことを確認し、中国に約束した。この原点に返ることである。
地域の平和安定は両国の利益であり、平和安定のための首脳外交と沖縄をハブとする東アジア諸国民の平和ネットワーク構築が求められる。日中両国は深い経済的結びつきとなって発展と繁栄が可能となる。