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「沖縄返還50年」を前に ■玉城デニー沖縄県知事インタビュー

自立型経済の構築へ 辺野古反対は県民の総意

聞き手 山内末子(広範な国民連合全国世話人、沖縄県議)

来年5月、沖縄返還50年を迎える。50年を振り返り今後を展望することは日本全体の課題である。沖縄県の玉城デニー知事に伺った。聞き手は、山内末子全国世話人(沖縄県議)。文責、見出し含めて編集部。

山内末子 来年5月、沖縄が「復帰50年」を迎えるにあたって、知事は、50年を振り返り、今後50年の沖縄の展望をどう描かれていますか?
玉城デニー知事 復帰50周年の大きな節目である2022年は、新たな振興計画のスタートの年になります。
 1972年5月の本土復帰以降、10年ごとの3次にわたる沖縄振興開発計画がつくられました。県の「沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検報告書」では、これまでの沖縄振興策の展開によって多くの成果が上がっていることが示されました。
 しかし、その一方で、一人当たり県民所得が全国最低の水準にあるなど、自立型経済の構築はなお道半ばにあるとともに、離島の条件不利性、米軍基地問題など沖縄の特殊事情から派生する固有問題や、子どもの貧困の問題、雇用の質の改善等の重要性を増した課題、新たに生じた課題なども明らかとなっています。

新たな振興計画について

 復帰50年の節目にスタートする新たな振興計画については、総点検の結果やアジア経済戦略構想、新沖縄発展戦略等を踏まえるとともに、SDGsを反映させ、アフターコロナに向けた将来を見通すなかで、社会・経済・環境等の三側面を一体的に捉え、新時代沖縄を展望する観点から骨子案を作成しました。
 現在、来年からスタートする「新たな振興計画」の最終とりまとめを行っているところです。
 新たな振興計画の特徴としては、現行計画の柱である「強くしなやかな自立型経済」と「誰一人取り残すことのない優しい社会」の二つを基軸に沖縄らしいSDGsを取り入れ、新たに「持続可能な海洋島しょ圏」の枠組みを加えたことなどが挙げられると思います。
 沖縄振興にかかわる取り組みに、県民一人ひとりをはじめとする社会全体が参画することで、社会・経済・環境の三つの側面が調和した「安全・安心で幸福が実感できる島」と「持続可能な沖縄の発展」、さらに「誰一人取り残さない社会」をめざしていくことが可能になると考えています。
 また、そこでは、脱炭素社会の実現に向けた長期目標である2050年を見据えつつ、再生可能エネルギーの導入拡大、そして持続可能性を見据えた上での、沖縄らしい島しょ型エネルギー社会の実現等をめざしていく必要があると考えています。

「5つの将来像」とSDGsについて

 沖縄県が2010年に策定した「沖縄21世紀ビジョン」で示した県民が望む5つの将来像とは、①「沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島」、②「心豊かで、安全・安心に暮らせる島」、③「希望と活力にあふれる豊かな島」、④「世界に開かれた交流と共生の島」、⑤「多様な能力を発揮し、未来を拓く島」です。
 新たな振興計画においては、この沖縄らしいSDGs推進に向けた取り組みの柱として、12の優先課題を設定しています。具体的には、基幹産業として持続可能で責任ある観光の推進、日本とアジア・太平洋等の架け橋となる物流・情報・金融の拠点の形成、人間力を持った多様な人材の育成等を掲げているところです。
 これまで沖縄県は、21世紀ビジョン基本計画に基づき、民間主導の自立型経済の構築に向けさまざまな施策を展開してきました。これらの取り組みにより、平成29年度の県内総生産は4兆4141億円となるなど、県経済は着実に成長してきました。
山内末子 コロナ禍などで、県政運営は困難を伴っていますが、まもなく玉城デニー県政3年を迎えます。振り返られて、今後の決意などをお伺いします。
玉城デニー知事 私はこれまで、「自立」、「共生」、「多様性」の理念の下、全ての人の尊厳を守り、誰一人取り残すことのない社会を実現するという信念を持ち、沖縄が抱える課題の解決に取り組んでまいりました。
 まず、基地関係では、一昨年2月の辺野古埋め立てに絞った県民投票で圧倒的多数で反対の民意が示されたことは、大変重要な意義があるものと考えています。復帰50年を迎える現在においても、全国の0・6%しかない県土面積に70%余りの米軍専用施設面積があるのは、異常な状態としか言いようがありません。

遺骨土砂問題でハンスト中の具志堅隆松さん
の訴えを聞く(糸満市平和祈念公園、6 月23 日)

基地問題は「自分事」と全国発信を強める

 辺野古新基地建設問題及び日米地位協定の問題解決に向けた機運を醸成するため、日本全国各地で「トークキャラバン」を実施し、また米国議会やアメリカの市民社会へも働きかけるなど、広く情報発信したところであり、多くの皆さまにこの沖縄における、米軍基地問題などを「自分事」として捉えていただける、考えていただける契機になったものと考えています。この行動はこれからもぜひ継続していきたいと思っています。
 経済分野においては、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大が、宿泊業、飲食業をはじめとして多岐にわたる業種で多大な影響を及ぼしています。しかし、自立型経済に向けて、着実に成果が見えていたところです。
 沖縄らしい優しい社会については、子どもの貧困対策を最重要課題と位置づけ、さまざまな施策を総合的に展開してまいりました。また、子どもの虐待防止に向け、通称「子どもの権利尊重条例」を制定するなど、全ての子どもたちが夢や希望を持って段階的にしっかりと成長できる社会の実現に向けて取り組んでいます。
 離島振興については、定住条件の整備や地域の特色を生かした産業の振興に取り組んでいます。
 一方では、首里城の火災に始まり、昨年1月の豚熱の発生、そして現在は、特に、新型コロナウイルスにより県民の生活、社会経済に甚大な影響が生じる事態となっています。
 このような厳しい沖縄の社会経済の中で、県民の皆さま、事業者の皆さまが置かれている状況を鑑み、私が就任当初から掲げていた誰一人取り残すことのない社会を実現するための施策の重要性は、コロナ以降、いっそう強く実感しているところであります。
 就任3年目を迎え、改めてこの信念をいっそう強く胸に刻み、今後の沖縄が抱える諸課題の解決に全身全霊で取り組んでまいります。
山内末子 ありがとうございました。オール沖縄の一員として知事を支え頑張ってまいります。知事のいっそうの奮闘を期待します。