復興を食いつぶした大企業、失われた故郷
自主・平和・民主のための広範な国民連合
今年2月13日23時7分、10年前の大震災の余波というM6・3、最大震度6強の地震が東北・関東を襲った。
ハリウッド映画のジャンルの中に「地球人類滅亡」がある。大別すると、①地震(火山爆発、津波)、②原水爆放射能、③ウイルスなど感染症、④小惑星地球衝突である。私たち日本人は、「人類滅亡4パターン」の二つを経験し、現在③の真っただ中にいるのだ。
10年前の災害はまだ終わっていない。2月の「余震」は、現在進行中の「復興」が真に国民・住民のものになっていないことを教えている。これからも続く災害の中で、正しい道を選択すべきという警告ではないだろうか。
復興は誰のものだったか
東日本大震災の復興に投じた資金は、11年度から20年度までに約40兆円だ。ほとんどが道路・港湾などのインフラ整備である。これは阪神大震災での投入公費6兆円の6倍以上だ。震災の範囲を必要以上に拡大させ、むさぼり尽くす大企業の姿が目に見えるようだ。
ゼネコン・大企業は大いに潤った。しかし、農業生産は激減、水産業などの小規模経営者は大変だ。頼りになるのは国が4分の3を補助する「グループ補助金」だった。国は10年間で約3500億円を支出した(個人負担が875億円必要)が、受給者の多くはスーパーの進出などで売り上げが伸びず、施設・設備の維持経費・自己負担金の借金返済で苦しんでいる。
復興のための財源は、個人納税者が所得税に2・1%を乗じた金額を納税する「復興特別事業税」である(37年度までとなっている)。しかし、法人復興特別税は14年度に廃止された。大企業はずるい。19年度の大企業の内部留保は約460兆円に膨らんでいる。復興を名目に労働者の「取り分」・資産を奪って大企業が大儲けしたのである。
同じようにコロナ・パンデミックの今、労働者とりわけ低所得者が食うや食わずに苦しんでいるときでも政府・日銀に金融緩和を続けさせ大企業、金融資産家は大儲けだ。
原発事故処理は終わらない
2月の地震で福島原発のプールの水が溢れた。報道ではさらりと触れたが大事故である。水が切れたら核燃料の温度は上がり続け溶融・爆発する。原子力ムラが意図的に進めた10年前の「軽く見る姿勢」が原発事故を引き起こしたのだという反省のカケラもない。東電経営者はいまだ誰一人あの大事故の責任を取っていない。
東電と国は廃炉目標を40年とした。しかし、19年にデブリが破壊された原子炉の上部にも存在することが分かった。放射能が高く、近寄ることもできない。廃炉処理の第一歩はデブリの除去である。めどすら立たない。
冷却水はデブリを取り出すまで絶対に必要だ。だから放射能汚染水はたまる一方だ。政府・東電は困って海洋投棄すると言っている。ここでも漁民が犠牲になる。
福島原発の廃炉費用、賠償金、中間貯蔵費を加えると少なく見積もって総額22兆円に達する。これらは、日本中の国民の電気料金に包括的に上乗せされている。
その中から原子炉を持つ電力会社に金は出る。この10年間原子炉が非稼働でも出ている。だから美浜原発のように償却期間が過ぎても廃炉にしないのだ。この10年間、電力不足は一度として起こっていない。
福島原発事故で避難指示が出た地域の住民は約8万8400人いた。しかし、現在は約1万5千人、事故前のわずか17%である。被害者は、十分な保護もなく全国に散らばされている。今もって差別に苦しむ人も多い。被害の範囲は限りなく広く深い。
私たちは、これを機会に震災・事故を利用して国民資産を奪い続けた大企業のやり口を十分に知る必要がある。「ポストコロナ」では、決してその手口を許さないでおこう。もう国民は奪われてはならない。その備えを心すること。今から必要である。
(西澤 清)