JA菊池代表理事組合長 三角 修
本稿は、8月17~19日に熊本市で開催された第16回全国地方議員交流研修会での三角修組合長の報告要旨である。文責編集部
まずは、先ほどからお話があったように3年と4カ月前、あのような地震がございまして全国の皆さま方から本当に温かいご支援をいただきました。ありがとうございました。(一同拍手)
私どもJA菊池の宣伝を少しさせていただきます。私どものところは熊本市のベッドタウンという感じのところで、熊本市の中心部までJA菊池の本所から40分、50分というところです。全国にJAは607くらいありますが、そのなかでも人口増加しているJA管内というのは私のところと、あといくつかあるかないかだと思います。
そのようななかで、販売高が約283億円という数字を誇っておりますが、8割方が畜産関係でございます。肥育関係がおおよそ90億円、牛の肥育です。そして85億円が酪農、牛乳です。283億円は607JAのなかでも22~23番目の販売高じゃないかと思っております。
8万2千トンくらいの牛乳生産は、昨年JA菊池だけで宮崎県全体を追い越すことができました。あとは鹿児島県に来年か、再来年ぐらいに追いつけるんじゃないかと思っております。
グリーンコープさんのNon-GMO牛乳、お飲みになっている方、会場にいらっしゃるでしょうか? (結構な数の手が上がる) ああ、ありがとうございます。グリーンコープさんの牛乳は私どもの牛乳でございまして、大阪近くまで行っているんじゃないかと思います。それと、コープ神戸さんに「すこやか牛乳」というのをお出ししているんですけど、それも京都あたりまで販売しております。
また、お米につきましては11年連続で、「特A」を受賞しておりまして、「ヒノヒカリ」というおいしいお米がございます。
それと私は花卉農家でございまして、熊本のカスミソウは全国で40数%のシェアをもっております。カスミソウをぜひお使いいただきたいと思っております。ちなみに花言葉は「感謝」でございますので、旦那さんの誕生日、奥さまの誕生日に感謝の気持ちを込めて、カスミソウを贈っていただければと思っております。
あと、水田で作る「菊池水田ごぼう」があります。これは米を収穫したあとにゴボウを作っているものです。普通は畑でゴボウを作りますが、畑ゴボウというのは非常に大きくて色が黒くて「ガツン」という感じなんですけど、私どもの「菊池水田ごぼう」は白肌で、細くて、柔らかくて、香りがある。そのようなゴボウで、今年3月に「GI」(地理的表示登録)を取ることができました。このGIというのは「地域の農林水産物や食品のブランドを守る」制度ですが、まあ、皆さん方がご存じなのは、「桜島小みかん」とか、「近江牛」だとかと思います。
「ECO+コメ」→「えこめ牛」
JA菊池の特産品という思いで、菊池管内で取れた飼料用米を牛に食べさせて飼育した、「ECO+コメ」→「えこめ牛」という名前で売り出しております。
なぜエコか? 牛のエサのトウモロコシは、ほんとんどが北アメリカから来ています。あの長いミシシッピ川を下って、ニューオーリンズに行き、そこから1カ月間、船に載せられて、横浜や博多の港に着く。その間に、膨大な油を使い、二酸化炭素を出してくるわけですよね。いかがなものかという思いも片方にはございます。しかし、これをすべて「イヤ」「NO」ということをすれば、日本の畜産のエサの原料は当然足りない。まあ、そのとっかかりというか、一部でも少しでもという思いで飼料用米を牛に食べさせて、そして大きくするということでございます。今では東京の方の一流レストランあたりでも使ってもらっております。
地下水と土を育む農畜産物
JA菊池の特産品ということで「地下水と土を育む農畜産物等認証」熊本県第一号として、先ほどごあいさつされた蒲島県知事から熊本県第一号の認証をいただくことができました。この受賞は、私はすごくうれしかったですね。
熊本市の飲み水は、世界でもここだけしかないほぼ100%、地下水で賄われています。こんなところは他にないんじゃないかと私は思います。ですから、熊本市民の飲み水を私たち農業者が育む力をもっているという自負の下にやっているわけですね。
阿蘇の外輪山に降った雨を、少しずつためながら、お米を作る、田んぼで。その水をためることによって、田んぼがダムの役割を果たして、30年、40年後に熊本市内の水前寺公園だとかそういうところに噴出してくるんですよね。
私たちの農業というのは、人間の胃袋を満たすことばっかしじゃなくって、飲み水も作る。そして動物も育てる、その動物もアニマルセラピーだったり、バイオセラピーだったり人間の心を癒やす、そういう働きを農業はもっていると思っております。
つまり、まあ、大きく言えば、生命産業かなという思いももっております。
それともう一つ、食農教育ということで「えこめ牛を使った『料理甲子園』」をやって、もう6年になります。菊池郡・市に高校が5つございます。その高校生にえこめ牛を使った創作料理を作ってくださいませんかというコンテストです。やっぱり若い人の発想は違いますよね。私たちからすれば「エッ」と思うようなものがやっぱり出てきます。そのなかでグランプリの作品を、私の農協の隣に「道の駅」があって、そこで1カ月間メニューとして出すんです。「お肉がごろっとビーフシチューコロッケ」は、非常に評判がよくって、1カ月間だったのが3カ月間、出していただきました。高校生たちの励みにもなっているんではないかなと思っております。
三つの提案
①食料自給率の向上と環境負荷低減へ
「自給率が高く、環境負荷が少ない食料品へのポイント付与」の提案です。
日本の自給率、この前37%という数字が出ていましたけど、日本の自給率を上げるような食料品。それに環境負荷、やはり外国から食料や飼料が来るときにフードマイレージ(食材が産地から食される地に運ばれるまでの、輸送に要する燃料、二酸化炭素の排出量をその距離と重量で数値化した指標)が大変な数値になる。そのような環境負荷がかかってないような食べ物、食料品に、何か「ポイント制」のようなことができないかと思っているんです。
結局、これは国としての取り組みですね。
分かりやすく言えば、牛の場合だったなら、まあ日本の草だけで大きくなった牛ならば、これは100%自給ですね。それから暖房を使わない。私たち小学校の頃、ミカンは9月、10月に青い、少し黄色くなったのを運動会では食べていましたよね。それが今はもうこの時期に真っ黄。この頃食べている黄色いミカンはしっかり暖房機、油を使って早く出荷して、お盆とかのお供え物にする。当然需要があるから作っているわけなんですけど、私は問題があると思っています。
持続可能な開発目標(SDGs)で持続可能な地球にするためには、化石燃料等はできるだけ使わないことが必要ではないか。この季節に真っ黄色のミカンは食わないことも必要と思うわけです(一同拍手)。まあ、それは私自身の反省でもあります。自分とこでも、あんまり早くスイカを出さんでもよかと思っています。自分のところですよ(笑)、私のところもスイカ生産がございますから。
今日は国会議員の方、いろんな先生方がおいででございますので、やはりSDGsの一つとして、国としてこのような自給率が高い食品、環境負荷が少ない食品については何かポイントをつけて、国民意識としての考えをまとめていくことはどうだろうかということを一つ、提案をさせていただきたいと思います。
②生産基盤の確立
二つ目は、生産基盤の確立です。
先にTPP11、そして、日欧EPA、そしてまた今度アメリカとのFTAです。
農業は、今やっとやっとこの前のリーマン・ショックから立ち直り始めたと私は思っております。
そのなかで後継者も育っていっているのであります。私のところでは、畜産だけで227億円くらいの売り上げ、それを334戸の畜産農家で稼いでいます。一戸当たり7千万円くらい、それは儲けではありませんよ(笑)。そうしたなかで、40歳以下の若い後継者、俗に言う後継ぎがいる農家は38%なんです。38%いるっていうのは北海道と私たちぐらいではないかなと思っております。たまたまですけども、若い後継者がいますから鍛えたいと思っています。
鍛えるためにはやはりある程度の売り上げが必要です。今からアメリカとのFTAとかあると不安です。これから15年かけて関税がゼロになる、あるいは最低になると、283億円ある私のところだけで12億から25億円の売り上げ減になるという試算です。当然利益も減る。
こうしたことに対処できる生産基盤の強化が必要になるわけです。
③中山間地の保全
一年に一度、秋の彼岸の頃になると、彼岸花が畦道を真っ赤に染め、色づき始めた稲穂の黄金色と絶妙なコントラストを見せてくれます。「あ~日本人に生まれてよかった」「農村に生まれてよかった」と思うわけです。しかし、彼岸花をきれいに見てもらうためには、花が出てくるなと思う頃合いを見計らって草を刈らないとダメなんです。労働が必要なんです。タダではないんです。
段々畑状態になっている田んぼは、ほとんどが5アール未満であり、中には1アールにも満たない田も多くあります。昔の人が数多くの石を積んで石垣を造り、わずかばかりの主食である米を作るため、多くの汗を流し造られたものです。
段々になっている千枚田は、石垣と稲穂、そして畦の緑と彼岸花の赤、それは確かに美しい。水を引いて稲を育て、畦草を切って石垣を築き、わずかばかりの米を出荷することによって現金を手にしているのです。いくらにもならないんですよ、5アールとして5万円にもならない。
田んぼは、ダムの役割を果たして水を涵養し、水は地下深く潜り、30~40年の歳月を経て、私たちに〝命の水〟として供給されます。ありがたいことです。田んぼで米が作られることで、水が育まれる。稲作は環境保全でもあるわけです。
しかし、中山間地の農業は大変なんです。やっと実ったなと思うとイノシシが来ます、猿も来ます。
彼岸花を見て、心安らぐ人は少なくない。美しい花、美しい風景はセラピー効果をもたらす。農業は、胃袋を満たし、心を豊かにする生命産業です。彼岸花を毎年美しく見ることができるのは、経済至上主義ではない。米作りができているからなんです。それを私たち農家なり、JAが守っていかなくてはならないんです。
「彼岸花はタダではありません」ということです。
都市の皆さん、地方議員の皆さんに、日本農業を守る提案を三つほどさせていただきました。よろしくお願いします。ありがとうございました。