第3分科会 討議および政府要請の報告
公的責任を強め、誰もが安心して暮らせる社会保障の確立を

全国地方議員交流研修会第3分科会では、座長を鹿児島県議会議員上山貞茂さん、静岡県西伊豆町議会議員河内ひとみさんが務め、鹿児島大学名誉教授伊藤周平さんを助言者に討議が進められた。
労働・生活保護――貧困を生み出す構造の転換
分科会の最初は、東京都足立区議会議員小椋修平さんより、派遣労働、生活保護問題を中心に、小椋さんのこれまでの活動の中から事例報告を含む問題提起を受けた。それぞれの項目で積極的な質疑や討論が行われ、必要な課題や、厚労省に対する要請内容などが確認された。
労働分野では、労働者派遣法の改悪などを背景に非正規雇用が拡大し、正規・非正規労働者の賃金や雇用条件の格差が深刻化していること。非正規雇用から抜け出せず、スキマバイトや個人請負などで生活費を確保する人も増えている。個人請負労働者は、労働災害や病気などが起きた際に社会保障からこぼれ落ち、住居喪失や生活困窮に直結する危険があること。このため、職業訓練と生活保障を組み合わせ、安定した雇用につなげる仕組みを充実させることが求められることなどが確認された。
生活保護問題では、本来制度を必要とする人に制度が十分届いていないことが大きな問題となっていること。社会的偏見や「バッシング」、制度の複雑さなどが申請をためらわせる要因となっている。また、窓口で申請を諦めさせる「水際作戦」への対策として、相談・申請時のやり取りを録音・可視化し、申請権を保障する必要があること。親族への「扶養照会」についても、家族に知られることを恐れて申請を断念する例があるとして、廃止を求める意見が出された。さらに、住居確保給付金を失業者だけでなく、高齢者、障害者、病気やけがなどで働けない人を含む生活困窮者が利用できる家賃補助制度へ拡充することの必要性が確認された。
また、無料低額宿泊所などを利用した「貧困ビジネス」や生活保護費の搾取については、第三者機関による監査・指導、公的な住居確保、住宅扶助費の引き上げなどが求められ、生活保護を「生活保障」と位置づけ、「生活保護は国民の権利」であることを政府が明確にして広く周知することも重要な課題として確認された。
年金――「減らない年金」と最低保障の確立
分科会は次に、助言者である伊藤周平鹿児島大学名誉教授から、対政府要請行動の要請内容について、なぜこの内容になったのか、その背景などを含めて、各分野について問題提起が行われた。
年金問題では、物価高のなかで年金の実質的な生活保障機能が低下していることが問題となった。特に基礎年金を中心とする低年金・無年金者や高齢女性の生活困窮が深刻であり、年金額を物価上昇に見合う水準とする必要性が指摘された。そのため、マクロ経済スライドを直ちに停止・廃止し、物価上昇に見合う年金改定を行うこと、基礎年金の給付水準を引き上げること、低年金・無年金対策を強化することが提案された。また、「減らない年金」の仕組みと最低保障年金制度の構築、公的年金積立金の活用・取り崩しについても議論された。
医療――患者負担を軽減し、受診する権利を保障
医療では、窓口負担、高額療養費、国民健康保険料など、患者・住民の負担が重くなっていることが課題となった。経済的負担によって必要な医療を受けられず、病気が重症化することは、人権・生存権の観点からも問題であること。
具体的には、高齢者の医療費負担増に反対し、窓口負担の将来的な廃止・軽減、低所得者への保険料・一部負担金の減免拡大、高額療養費制度の負担上限引き上げへの反対、OTC類似薬の保険外しの中止などが提案された。また、国民健康保険への国庫負担を増やして保険料を引き下げること、子どもや高齢者の医療費無料化を国の制度として進めることも求められた。
介護――人材不足と地域格差を公的責任で解消
介護の現状は、特に訪問介護事業所の減少・廃業、介護人材不足、介護職の低賃金、利用者負担の増加が深刻化し、とりわけ人口減少地域では民間事業者だけではサービスを維持できない状況が生じている。この現状をふまえて、座長である静岡県西伊豆町議会議員河内ひとみさんが、事例報告を交えて問題提起を行った。
静岡県西伊豆町の事例では、訪問介護事業所の減少や社会福祉協議会の赤字、山間部における長い移動時間などにより、現在の報酬体系では訪問介護が赤字になりやすい状況が報告された。その結果、介護サービスを受けられる地域と受けられない地域との格差が広がっている。対策として、国庫負担を拡大して介護保険料を引き下げること、介護職員の処遇を公費で改善すること、事業所が撤退した地域では自治体が直接サービスを担うこと、公務員ヘルパーなど公的雇用を導入することが提案された。さらに、地域間のサービス格差をなくし、ケアプラン有料化に反対することも求められた。
質疑討論では介護を家族だけに負わせないため、ドイツの制度を参考に、家族介護者への現金給付や社会保険料・労災保険などを保障する仕組みを導入することも提起された。
財源――公的負担の強化
社会保障の財源については、保険料中心ではなく、税によって公的責任を強める必要があるとの議論が行われた。
社会保険料は低所得者ほど負担が重くなりやすいため、法人税・所得税の累進性を強化するなどして財源を確保する考え方が示された。一方、消費税を社会保障財源とすることについては意見が分かれ、引き続き検討することとなった。
社会保障の充実は
平和の基盤
分科会では、社会保障を単なる福祉政策としてではなく、人権、貧困・格差、地域社会、そして平和に関わる問題として捉えることが強調された。
貧困や社会的孤立が広がり、高齢者、障害者、生活困窮者、子どもなどが社会から排除される状況を放置すれば、社会の分断や差別が深まり、誰もが安心して生きられない社会につながる。
そのため、国と自治体が「自助・共助」だけに責任を委ねるのではなく、公的責任によって生存権を保障し、「一人も残さない、誰も見捨てない」社会をつくることが必要であるとの認識で討論は締めくくられた。
