私たちの手で「未来の沖縄像」打ち出そう
対談
儀保 唯(沖縄県議会議員)
+花谷史郎(石垣市議会議員)
必要だった政策の
アップデート
花谷史郎(以下、花谷) あくまで私の周囲に限ったことですが、そこまで強く政治に関心がない友人からは、「次はデニーさんでなく、新しい人を」という声が上がっていました。日常的にある程度新聞を読んでいるような方がそういう感覚を持っていることについて、危機感を感じていました。特に石垣、宮古などではこの間、オール沖縄が推していた候補者が負けることが多かった。
また今年3月の辺野古でのボート転覆事故やワシントン事務所問題等々が全部、イメージとしてデニーさんのマイナスの評価となってしまった。そのことがSNSで増幅され、いま問題にもなっているわけです。
改めて沖縄県知事選ではこのSNSというものが選挙に対して良くも悪くもかなり強い影響を与えることを示しました。そのSNSですが、県外からの発信がほとんどだったということも含めて、「沖縄のことは沖縄が決める」ということに対して、東京からのすさまじい圧力があったということが言えると思います。

儀保唯(以下、儀保) 古謝さんが第一声で「国や大企業のせいにしない沖縄をつくる」と言いました。これを聞いたときに沖縄の歴史的構造や今の政治状況を十分知らない人には違和感を覚えずに受け止められてしまうと思いました。
私はこんにちの沖縄の状況を見るとき、歴史的な構造支配、言い換えれば植民地支配という点こそが問題だと思っています。この植民地支配の継続と強化を狙う勢力が今回の知事選に際して、どう組織的に動くかという分析が十分でなかったという反省があります。
その上で「オール沖縄」は、「これ以上の基地負担は許されない」「基地が経済を阻害している」という自民党の一部など保守や経済界も含めた組織でした。この点は照屋守之さん(前自民党県連会長)が強調していましたが、そこが崩れた時点でやれることがあったのではないかと思います。そのとき、保守の方々と話ができていたのか。そこは諦めずにこれからも自民党も含めた保守の方々に働きかけていきたいですね。
併せて、官邸や自民党はすごい資金力も権力もある。これに私たちが対抗するには「時間」しかない。この時間で勝つためにもう早めに候補者を決めて、まとまりをつくるしかないと思います。
花谷 デニーさんを推して闘ったのは間違いではなかったと思います。その上で、やはり「デニーさん頼み」だったという点は否めなかったという思いをもっています。今後、ある種の「中堅世代」「ミドルパワー」の人材を発掘して、育てていくことが大事ではないでしょうか。特に首長選挙では、こちら側の候補者を複数人挙げて、県民に事前に選考してもらうというのも一案かと思います。そうした切磋琢磨みたいなものを身内のなかでもやっていく必要があったかと。
この点は政策についても言えると思います。「オール沖縄」の原点は「建白書」ですが、これと併せて新しい提案というものも出して、政策についてもアップデートし続けることが必要だったのではないでしょうか。
儀保 県民の生活実感の問題です。数字で見ると県税収入も過去最高で、最低賃金も約6%伸びているなど県全体での経済は数字的にいいと言えますが、県民一人ひとりの肌感覚とは違ったのかもしれません。この点でもデニー県政の優位な部分というのをキチンと伝えるには時間がなかった。
併せて、SNSを中心としたイメージ操作で、デニー県政の良さを伝えようとしても、なかなか聞いてもらえない場面もありました。それでもそれを乗り越えるためには、デニー県政に疑問をもつ方々に対して、やはり私たち地方議員が地道に訴え続けないといけなかった。
花谷 当たり前ですが、沖縄にとって基地問題は最重要課題です。普天間基地の閉鎖・撤去、辺野古新基地建設反対は当然ですが、併せて、その後の跡地利用における経済的な利点をデニーさんを支える私たちの側から提案する必要があったと感じています。相手国の標的になる基地がなくなれば、平和的な環境ができると同時に、経済的な利点を含むポジティブな提案が求められるのではないでしょうか。かつての大田県政時代に「基地返還アクションプログラム」「国際平和都市形成構想」というものがありましたよね。
一挙にすべての米軍基地が返還されるとは思えません。それこそ20年後、30年後を見据えた話になると思います。ですから、20~30年後に沖縄社会の中核を担っているであろう20~30歳代の方々中心に構想ができるといいですよね。基地問題について「反戦・平和」という側面は大変貴重だと思います。その上で、「基地がない未来の沖縄像」ある意味「夢」が持てるような構想は必要だと思います。
儀保 いま県内では那覇空港や那覇軍港の浦添移設などについて「世界に開かれたゲートウェイ」と銘打った「GW2050 PROJECTS」が進められています。地元企業も参加していますが、本当に県民に開かれたプロジェクトなのか疑問です。私たち沖縄県民が自分たちの力で基地の跡地利用をどうするのかという構想をつくっていくことも必要かと思っています。
花谷 今、唯さんが言ったことはすごく大事なところと思っています。保守も含めたこちらの体制を組み立て直そうといった場合にその点は重要ですね。
儀保 経営者の方の意見も生かしながら、こちら側の構想の実現をめざすような組織化が必要ですね。もっと経済や農業、建設など業界の分野ごとにこちら側から意見を聞きに行くということをやっていきたいですね。
「地域外交」の継続
強く求めたい
花谷 この点は中国との関係をめぐっても同じだと思います。今回の知事選では「デニーさんが再選したら沖縄は中国に乗っ取られる」というデマが飛び交いました。でも、中国との経済交流が本格化すれば、経済界にとっても有益なはずです。当然、戦争の危機も遠ざかります。こんな提案についても経済界の方々と話したいですね。
儀保 デニー県政が力を入れてきた「地域外交」は知事が代わろうとも沖縄にとっては大事です。古謝新知事にはこの「地域外交」の継続を強く求めたいですね。
花谷 国政レベルでも若手の国会議員が訪中するなど、いい環境変化も出てきました。ぜひ、沖縄と中国との経済協力を具体的な形にしたいですね。そうなると県民の対中感情も大きく変化すると思います。
儀保 今回、知事選と同時に市町村議員の選挙もありました。保守、革新というわけでなく、「中立」的な新しい議員さんが何人も誕生しました。こうした議員さんとも新しい政策について話せると思います。
花谷 そうですね。今回の知事選でデニーさんの再選を勝ち取れなかったことはとても残念ですが、次の局面に向けて、私たち地方議員がやらなくてはいけない課題が見えてきたと思います。ともにがんばりましょう。
