主張 「持続可能な日本へ」転換が急がれる

少子化は急で人口激減、他方、累積国家債務は世界一

『日本の進路』編集部

 イラン戦争で物価高が加速されて国民生活は危機的で、7月は物価高がさらに深刻化する見通しだ。
 だが、総務省が発表した国勢調査結果も衝撃的だ。2025年、413万の外国人を含む日本の総人口は1億2304万人余、減少数、減少率ともに過去最大。国の見通しより15年も早いペースで少子化が進む。
 これが「縮む日本」の姿だ。それは日本社会の、根本的な部分でのゆがみを映している。人がいなくなるという文字通り「社会の持続」が問われた以上、「社会構造を根本から見直す抜本的な改革が必要」との見解がマスコミでも公然と語られるようになったのは当然だ。
 新しい日本、「自主・平和・民主の日本」をめざす広範な国民連合は、「国民生活が持続可能な日本」への課題にしっかりと立ち向かいたい。
 ホルムズ海峡危機はわが国のエネルギーと食料供給の根本的脆弱性を改めて暴き出した。本誌はすでに先月号で、「再生可能エネルギーの地域自給」と「安全安心な食料の地域自給」の確立を喫緊の課題として提起した。気候危機対策と国土保全も急がれる。
 あまりに急テンポな少子化が暴くように、望む人誰もが安心して子どもを産み育てることのできる、元気に子どもの育つ社会実現は喫緊の政治課題である。若者の多くが低賃金で不安定な生活を余儀なくされている、この問題が根本だ。大幅賃上げと安定雇用の実現が急がれる。
 これら「国民生活が持続可能な日本」のためには大規模な財政投入が必要だ。
 だが、その国家財政危機も深刻だ。毎年40兆円前後の借金で乗り切って巨額な政府債務が積み上がって返済が財政を極度に圧迫する。これまた持続不可能である。
 税・財政の抜本改革と国民生活維持のための歳出増など、国民中心の所得再配分政策確立が急がれる。

多くの若者は食べるのに精いっぱい

 昨一年間に国内で生まれた日本人の子どもの数は67万1236人で「過去最少」である。死亡数ははるかに多く158万9489人にのぼる。
 外国人、それも20~30歳代の若者が大半の35万人の増加で、人口減はいくらか緩和されているのが現状だ。それでも年間約60万人もの人口減少は加速している。
 外国人はすでに日本社会を支える重要な存在だ。外国人排斥の排外主義など日本社会の存続にとっても許されない。
 一人の女性が一生に産む子どもの数という「合計特殊出生率」は1・14。これも過去最低を更新している。地方別に最も高かったのは沖縄県で1・52、次いで宮崎県の1・46だが、それでも人口維持水準の2・07にはほど遠い。最低は東京都の0・96である。日本は趨勢的に人口ゼロに向かっているということだ。
 もちろん結婚や出産に関する価値観の多様化は当然である。社会全体の豊かさであるウェルビーイングにどうつながるかという視点、女性も男性も働きやすく家事や育児を平等に担える、そうした社会の仕組みを整えていくことが大事だという意見も当然で支持できる。人口減少は地球環境への負荷低減だと評価する意見すらある。
 それでも政府は岸田政権以降、「異次元の少子化対策」を打ち出し支援を一定程度進めた。だが効果は十分でない。高市首相は「わが国最大の問題は人口減少だ」と言うが、積極的に取り組む姿勢はない。しかし、「子ども・子育て支援金制度」で今年4月から公的医療保険料に上乗せして「支援金」を徴収し始めている。国民の負担増だけが確実な政治だ。

非正規を中心に
大幅賃上げこそ打開策

 だが、生存ギリギリの低賃金でこき使われる非正規不安定雇用の蔓延で、多くの若い労働者にとって結婚や出産・子育てなど夢のまた夢だ。最大の問題はここだ。経済的な不安や将来への見通しが立たないことから、結婚、さらに出産・子育てに踏み出せないのだ。
 収入が少なく不安定な非正規雇用の激増である。若者の非正規割合は1991年と2024年を比較すると(男性)、15~24歳は21・4%から51・0%に、25~34歳でも2・8%から14・8%に急増している。この4月までの1年間でも、1・2%の雇用者増だが、内訳は「非正規」が2・2%増で、実数で「正規」の倍、非正規が46万人増なのである。
 男女とも非正規労働者の賃金は、30歳未満だとそれでも正規の80%程度にとどまっている。だが、年を取っても横ばいで増えない。だから、格差だけは拡大し、50歳代には50%で、非正規の賃金は正規雇用の約半分という格差となる。
 こうして非正規雇用男性の50歳時点での未婚率は約60%で、正規雇用男性の約20%と比較して約3倍の差ができる。また、20~30代の既婚率においても正規雇用の約4分の1程度にとどまる。経済的理由から結婚できない、あるいは出産をあきらめざるを得ないのだ。
 まずはすべての若者に安定した生活を見通せるようにすることが最も重要だ。非正規労働者の賃金は最低賃金ぎりぎりだ。新規の非正規雇用募集賃金がますます最賃に近づいているとのレポートもある。最賃の大幅引き上げと、すべての労働者の大幅賃上げと同一労働同一賃金原則の実現が不可欠だ。そもそも正社員の削減を補う「非正規雇用」などなくさなくてはならない。
 単身で生活保護の受給水準をやや上回る程度の賃金だと税や社会保険の負担はとりわけ重く、大幅軽減が必要だ。さらに若者に大きな負担の高等教育費の負担軽減、欧米では普通の大学学費無償化と奨学金返済の免除・給付型への転換、さらに若者に特化した住宅支援なども重要だ。

目前だけの財政で良いか

 一方、日本政府の借金、政府累積債務は年々増加しており、2025年度末時点で1344兆円弱と過去最高。GDPの2倍を超えて先進国(G7)の中でも突出している。
 そうした中で6月5日、補正予算が成立。ガソリン補助延長が中心だが、財源は赤字国債発行だ。それでも地方でガソリン自動車に頼る国民などには一定の恩恵だ。
 だがすでに、ガソリン補助金は22年から昨年末までに約8兆円を使っている。電気・ガス料金の軽減もいくらかは家計に役立つが、23年からですでに約5兆円以上投入だ。これはすべて国民の税金だ。自民党の河野太郎議員ではないが、「ロールスロイスやフェラーリに給油するガソリン価格まで、財政の補助で引き下げる必要はない」。
 いま秋の臨時国会に向けて消費税の議論が始まっている。食品消費税の税率1%でも本当に実現されれば助かる国民が結構いるのは間違いない。だが、減税の恩恵は高所得の高額消費者ほど大きい。しかも、農家や飲食店などの経営には負の影響が出る。財源の手当もないなど、問題は尽きない。さらに期間限定の2年後はどうなるのか。
 防衛費をGDP3・5%にと言う米国の不当極まりない要求を自維与党は受け入れる方針だ。この連中に任せておいたら国家財政も国民生活も破綻する。
 根本的なこの国の将来を見据えた根本政策と短期を組み合わせた税財政政策を定めることなしに当面の給付だけではダメだ。国民はもらえるものはもらうが、見抜いてもいる。とくに負担を背負わされる若者は鋭い。

消費税導入以来の根本的見直しを

 膨大な累積債務について、財務省は金利が想定より1%上がった場合、国債の利払い費は9年後に3倍の34兆円強になると試算する。そうなったら毎年の政府予算も組めないほどだ。財務省は、だから消費税引き上げが避けられないと言いたいのだろうが、それでは国民生活が成り立たない。
 厳しい国民生活の打開のためにも税の問題、とくに消費税の問題について国民的議論が必要だ。
 だが、国民は一様に貧困化ではなく、笑いが止まらない部分もある。
 

 一部の巨大企業は莫大な利益を上げている。国内上場企業の本年3月期の純利益は5年連続で過去最高を更新し、前期比13%増の58兆円と巨額である。
 また、純金融資産保有額が1億円以上の「富裕層」が165万世帯(3・3%、2023年)、その純金融資産総額は364兆円にも上る。一方、金融資産を保有していない世帯はおおむね全世帯の2~3割程度とされ、二人以上世帯で約25%前後である。単身世帯では約35%前後が金融資産非保有で、若年層ほどその割合が高い。むしろ大学卒業時に、数百万円の奨学金ローン返済という借金を抱える若者も多い。
 きわめて不均衡な日本社会である。企業も個人も、持つべき者と持たざる者の二極化が急である。
 歴史的に見て直近の転換点は1989年4月の消費税導入だ。
 消費税減税が課題となっている今、当面のことだけでなく、今日の問題の起点である消費税問題を根本的に検討すべきだ。
 1989年消費税導入以来37年間の消費税収総額は571兆円に上る。他方、法人税、所得税、住民税の税収総額は606兆円も減った。
 「この収支の対応関係を見れば消費税は主に大企業の法人税、主に富裕層の所得税の減税の穴埋めに使われたことが分かる」、と「不公平な税制をただす会」は指摘する。

所得再分配が必要だ

 上場企業純利益5年連続過去最高は、こうした税制などでの政府の支援の結果でもある。グラフは1989年の消費税導入以来の法人大企業の決算状況である(資本金10億円以上。財務省:法人企業統計)。売上高はほぼ変わらず横ばいだが、経常利益は4倍近くになる。
 海外生産や投資収益で経常利益が増える。が、非正規雇用の激増もあり労働者賃金総額は横ばいで増えない。他方、法人税などの税負担は大幅に低減だ。
 こうして純利益からの株主配当は約11倍に。金融資産で潤う「富裕層」が165万世帯にもなるのも当然だ。さらに設備投資などにも回らず社内にとどまった「内部留保」の公表分だけでも約600兆円。
 不公平な税制をただす会の試算では、消費税導入以前の税制に戻しただけでも法人税収が32兆円余、所得税で28兆円余増収になるという(2025年10月)。巨額に積み上がった「内部留保」に課税を求める声も強い(本誌20年5月号「打開の財源―大企業内部留保の活用を」小栗崇資教授参照)。内部留保は、雇用や市場拡大につながらず、経済の悪循環、「失われた何十年」を招いただけだからである。
 金融資産課税の不公平も若干の手直しでは不平等は解決しない。金持ち優遇を是正する根本的見直しが必要だ。
 戦後の自民党政治、とりわけ40年近くの消費税導入以来の政治は、大企業と高所得者、金融資産持ちを優遇して、国民大多数をあまりにも犠牲にしてきた。米国にもむしり取られてきた。
 もう限界だ。国民生活最優先に政治を根本から切り替える時だ。