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食料・農業 農の自立と国の独立を

飢えるか植えるか

東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘さんの情勢報告

 いま、恐るべき事態が進行していますので情勢報告をさせていただきます。私は、20年前から食料危機への備えを訴えてきました。今回のホルムズ海峡の封鎖で日本人の飢餓のリスクは一段と深刻化しました。

 日本の食料自給率は38%というが、肥料はほとんど輸入、タネも野菜では9割が輸入という自給率の低さを勘案すると私の試算では最悪9・2%に近づいている、大変なことだと警鐘を鳴らしてきた。しかし、それさえ甘かった。ホルムズ海峡の封鎖に直面し、11%というエネルギー自給率の低さを勘案すれば、日本の実質的な食料自給率はもうすでに数%しかない。これがわれわれが今直面している危機的な状況です。

 そのようななかで農家はさらなるコスト高に苦しみ、さらにやめる人が増えるような状況になっている。
 一方で消費者の皆さんも、食料品価格が上がったら、所得も減っているし、やっていけません。
 消費者も苦しい。農家も苦しい。農家の皆さんにとって必要な額と、消費者が払える額にギャップが生じています。
 だから簡単なんです。そのギャップを埋める所得補償を農家の皆さんにきちんとやれば消費者の皆さんは安く買えて、農家の皆さんは所得が確保されて、そして増産できて自給率を上げていけるんですよ。
 今こそそれをやればいいのに政府はそういう政策だけは絶対やらないと言ってます。そして米は作るな、そして備蓄は減らせ、輸入を増やせといまだに言ってるわけですよ。
 これはまさに、自国政府が自国民を飢えさせるような「セルフ兵糧攻め」と言ってもいいような状況になっています。これを私たちは変えなきゃいけないわけです。
 ところがなんと、こうした状況において、政府がやるべき政策はフードテックだと言い始めたんですよ。フードテック(編集部注:農水省の本年2月の資料によると「食分野の新しい技術及びその技術を活用したビジネスモデル」)って何ですか。
 今まで頑張ってきた農家の皆さんはいらない。農業は地球温暖化をもたらす悪者だったんだと。だからこれからは代替的食料生産、植物工場や昆虫やらですね、バイオニック(生体工学)にしていくんだということを大々的に打ち出しました。これですね、「よく考えたら」すごく整合性が取れているんですよ。今頑張っている農家を支える政策をやらない、そしてフードテックにシフトしていくという。ということはですね、まさに頑張ってきた農業・農村をつぶして、一部の企業がこれからそういうもので儲けるような、そういう流れを作っていくということを表明しているわけです。
 だから、このような状況を続けたら、本当に日本の農業・農村は破壊されて、そしていざとなったら今回のように物が入ってこない。国民みんなが飢え死にしてしまいます。
 それをどうやって止めるか。今日ここにお集まりの皆さんとですね、全国でも立ち上がってくださっているこの皆さんの力で、この流れを変えていかなきゃいけない。変えられるのはみんなの力です。
 私は「飢えるか、植えるか」運動と言っています。飢え死にしないよう、みんなで植えよう。一人一人がさらにリーダーとして、各地でみんなで作り、みんなで食べる取り組みを強化する。全国各地が、ローカル自給圏をどんどん構築して、地域の食と農の自立、独立を広げていく。日本の独立を回復することができます。
 そのためにですね、ぜひみんなでいっそう協力して頑張っていきましょう。ありがとうございました。