主張 ■ 米・イスラエルのイラン侵略戦争と高市訪米

イラン問題でも重荷を背負わされた日本

「脱米入亜」でグローバルサウスと共に平和・繁栄の未来へ

『日本の進路』編集部

 悪い冗談だろう。3月20日、日米首脳会談に臨んだ高市首相は冒頭から「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルド(トランプ)だけだ」と媚びを売った。
 トランプ大統領はホルムズ海峡を巡り「NATOと違い、日本は責任を果たそうとしていると確信している」と日本にいっそうの協力を迫った。それに対し高市首相はにこやかに笑いながら、米国を支持し日米間で緊密に意思疎通を続けていくと約束した! 日本は重荷を背負わされた。
 トランプは最も重視していた訪中までをも延期せざるを得ないほど追い詰められている。そうしたときに、高市首相はトランプに会いに行ったG7で最初で唯一の首脳となった。トランプにとって対米投資11兆円など多額のプレゼントを背負った、文字通り「鴨ネギ」だった。
 高市首相は、自己の「台湾有事」発言で強硬化した強大国中国に対抗する上で「強固な日米同盟が不可欠」と焦り、トランプ訪中前の首脳会談を選んだ。結果、トランプは「対中」で脅せば日本は何でも言うことを聞くと確信したであろう。日本の「イラン対応」は取引材料となった。
 「対米投資などでトランプ氏の関心をつなぎとめることが日本の国益だという、対米関係の従属性を国際社会に印象付け、日本の影響力が一層低下した」(「琉球新報」社説)との指摘はその通りだ。

 世界の多数がイラン侵略戦争に怒り、即時の終結を求めているとき、高市の日本は「日米同盟強化」で衰退し世界で孤立する米国との道連れにあえて踏み込んだ。
 アジアの一員として未来を切り開く、選択の時を迎えた。

「事前協議」なく中東へ

 米国とイスラエルは2月28日、イランへの野蛮極まりない侵略戦争を始めた。「4週間で終わる」と豪語したトランプだが、事態は世界経済を巻き込み、泥沼化の様相をみせている。
 沖縄、横須賀などの在日米軍基地からも中東地域への派兵が始まった。日米安保条約の「事前協議」の規定もまったく無視された。高市政権は追及しようともしない。日本が主権国家でないことがまたも暴露された。
 米国とイスラエルは、イランの国家最高指導者ハメネイ師、つづいてラリジャニ国家安全保障最高評議会事務局長を爆殺した。露骨な国家主権侵害であり、テロであり、国連憲章など国際法違反である。米軍による小学校爆撃で児童など175人以上が殺されるなど、民間人への大量虐殺も続く。
 全世界の人びと、米国以外のほぼすべての国々がこの蛮行を糾弾し、即刻の停戦を求めている。
 イランのペゼシュキアン大統領は3月11日、「この戦争を終わらせる唯一の方法は、イランの正当な権利を認めて賠償金を支給し、今後、侵略が再発しないように確固たる国際的保証をすること」と表明した。
 イラン人民の抵抗は当然であり、この停戦提案を断固として支持する。

海峡は開かれている

 高市首相は日米首脳会談でも、「ホルムズ海峡の実質的な閉鎖」とイランを非難した。
 だが、現実はどうか。
 イランの革命防衛隊は5日、「米国・イスラエル・欧州諸国、それらの支援国に属する軍用船と商船の海峡通航を禁止」と発表した。同時に軍高官は、「イランはホルムズ海峡を封鎖していない。国際協定に従って通過船舶を扱い、商船に偽装した軍艦のみを拿捕する」と述べたという。
 要するに、イランに敵対しないかぎりホルムズ海峡は開かれている。
 最近もインドは2隻を海峡通過させた。インドのジャイシャンカル外相は、最も効果的な方法は「イランとの直接対話」だと強調した。インドはイランが米国による経済制裁を受ける中でも「戦略的自律」を重視し、チャバハール港の開発などを支援してきた。
 イランのアラグチ外相は15日の米CBSテレビの番組で、ホルムズ海峡での船舶の安全な航行について協議を望む第三国との対話に前向きであり、「多くの国から打診を受けている」と話した。フランスやイタリアもイランとの協議を始めたと伝えられる。
 ベッセント米財務長官でさえ16日、海峡でタンカーの航行が再開しているとの見方を示し、イランやインド、中国のタンカーが海峡を通過したと話した。
 これがホルムズ海峡の実際である。
 イラン外相は共同通信に応えて20日、日本が関係船舶の海峡通過を求めるなら「当然、イランは通過を支援する用意がある」と言明、さらに、「イランの友人」である日本が「侵略行為を終わらせ、この不当な戦争の完全な終結を確かにする役割を果たせるよう望んでいる」と期待まで表明した。
 高市首相は応えられるか。

断末魔のトランプ

 トランプは議会にも同盟国にも、説明なく奇襲作戦を強行した。
 そもそも攻撃が始まる2日前にはジュネーブで米・イラン両国の核協議が行われており、次回協議の開催場所や日程まで決まっていたという。
 だからであろう。米国のテロ対策を担う情報機関のトップが17日、「イスラエル側の圧力によって始められたものだ。良心に従えばイランで続く戦争は支持できない」と辞任した。上司に当たる国家情報長官も18日、昨年6月に米国がイランの核施設を爆撃して以来、「イランは(核開発に必要なウランの)濃縮能力を再建することは試みていなかった」とする声明文を米議会に示した。
 米国民もこの侵略戦争を支持していない。開戦当初で59%がイラン攻撃に反対した。15日時点でも作戦支持率の平均は44・3%で、米国の軍事介入初期では異例の低さだという。
 トランプにとっては中間選挙がすべてである。支持率アップも可能かとネタニヤフに唆されてイラン攻撃に踏み切ったが、すべて裏目に出ている。ベネズエラでの蛮行、グリーンランドへの野望表明、最近は「次はキューバ」という妄言も。
 米国は世界中で泥沼に入り込んだ。これはトランプの断末魔であり、「帝国アメリカ終焉の時」を全世界に示している。

国際政治は決定的に
変わった

 スペインのサンチェス首相はイラン侵攻が始まると即座に、「一方的な軍事行動は拒絶する」とトランプを正面から批判した。同政権は1月、米国がベネズエラに軍事介入した時も批判している。
 スG7諸国は当初、イラン侵攻に対してはバラバラだった。だが半月後の今日、トランプが求めたホルムズ海峡への軍事介入を、ドイツもフランスもイギリスも、トランプの盟友のはずのイタリア・メローニ首相も「介入する意思なし」と宣言。欧州以外でも、カナダはもちろんオーストラリアも介入に反対している。
 原油価格高騰は全世界人民を苦しめ、世界経済を危機に向かわせている。トランプはロシアとの原油取引規制も緩めざるを得なかった。ベルギーのデウェーフェル首相は14日、「ロシアとの関係を正常化し、安価なエネルギーへのアクセスを取り戻すべきだ」と公然と述べた。欧州には対ロシア融和論すら強まっている。
 中国やロシアはもちろんのことインドなどグローバルサウス諸国の大半も、BRICSや上海協力機構の主要参加国であるイランとは緊密な同志国である。
 これが世界の現実、昨日までの世界ではない。

世界の端で萎れた日本だ

 高市首相はなぜこの世界の現実にリアルに対応しないのか。
 高市首相がワシントンで語ったように、強国化する中国を敵視し、力で対抗するには「強固な日米同盟が不可欠」だからだ。
 第1次トランプ政権の米国は19年、ホルムズ海峡で民間船舶護衛の有志連合に参加を求めた。当時の安倍政権は拒否した。代わりに自衛隊護衛艦を近海に派遣する道を選んだ。同時に安倍氏はイランを訪問し、最高指導者ハメネイ氏と会談するなど独自外交を展開した。米国の戦略の枠内だったが、この程度は進めた。
 高市首相にはこの程度の自主性すらない。「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」などとうそぶくが、これでは世界の趨勢に逆らって端っこで萎れた日本ではないか。
 衰退したアメリカからは、「日米同盟が弱体化すれば、米国はもはやアジアで主要なプレーヤーでいられなくなる」との見方も伝わる。
 「日米同盟」も世界構造の激変に問われているのだ。「日本が米国を必要としているのと同様に、米国もまた日本を強く必要としている」。これが今回の日米首脳会談が示した基本的特徴である。

習近平に屈したトランプ

 国際政治が変化したことは、トランプが「G2」と呼称した米中関係に象徴的に表れている。トランプは14日、中国に協力を求め「協力しなければ訪中を延期する可能性がある」と「脅し」をかけていた。しかし16日には一転、護衛艦問題にひと言も触れないまま、「交戦中にホワイトハウスを空けるのは良くない」と訪中延期を習近平に請うた。元々中国は友好国であるイランと戦争中のトランプを北京に迎えることなど不可能だった。
 「G2」などと言っても米中両国の国際政治での力関係は明らかとなった。トランプはいちだんと追い込まれ、中国にとっては好都合の展開となった。
 米シカゴ商品取引所の大豆先物は16日、「ストップ安」で取引を終えた。昨年10月の米中首脳会談で合意の米国産大豆を中国が購入する実現可能性に懸念が浮上したからだ。11月中間選挙に賭けるトランプには内政が決定的で、カギは対中経済関係だ。
 「G2」は、国際政治の全体構造が変わり、基本的にグローバルサウスに有利に展開し始めたこの局面で、トランプの米国が支配力を維持しようと画策した覇権政治手法に他ならない。
 この局面に中国がどう対応するか。

アジアに生きる日本へ
国の進路を転換する時

 高市首相は「中国の脅威」に備えるという。だが、中国が何をしたというのか?
 日本政府は2022年の国家安全保障戦略で中国を敵視して、「力による一方的な現状変更やその試み」に「深刻な懸念」を示した。だが、その論理は高市首相らが、米国を批判しないことで明白に破綻した。東シナ海でも南シナ海でも、中国がどの国の指導者を殺したか? 戦争を仕掛けたか? 「力による現状変更」論は、口実に過ぎないことが暴露された。
 ただただ、「強国化した中国」という現実を認めたくない、衰退し「失われた30年」の日本を直視したくないだけだろう。高市首相らの中国・アジア蔑視、排外主義が根本から問われている。
 日本と中国との悠久の歴史的文化的関係、今日の経済関係での重要さは誰も否定できない。
 両国関係を安定発展させる上で「台湾独立」の策動は論外だ。「台湾は中国の不可分の一部」の原則承認は1972年の国交正常化の際の両国間の最大の政治的課題だった。今も変わらない。最近も台湾の「行政院長」なる人物の「私的」という口実での日本訪問を高市政権は容認した。日中国交正常化以来初の暴挙である。
 これでは日中関係は安定しようがない。中国側が高市首相発言で日中関係は「国交正常化以前に戻った」と判断し、態度を硬化させているのは当然でもある。
 少なくとも、「台湾有事は存立危機事態」なる中国敵視発言を撤回させなくてはならない。国政に責任を持とうとすれば与野党問わず「台湾独立」の策動を止めるべきである。「自立の日本」へ舵を切るべきだ。
 「脱米入亜」アジアに生きる日本だけが、イラン戦争が教える日本の生きる道である。