危機感とプレッシャーの中で当選!
人権を大事にする社会へ 女性議員をもっと増やそうね
髙良さちか 参議院議員
儀保 唯 沖縄県会議員
司会 山内 末子 沖縄県会議員

座談会参加の、写真左から儀保唯さん、髙良さちかさん、山内末子さん。その隣は親川裕子・髙良さちか後援会共同代表。髙良さんが抱いているのは儀保県議の子どもさん(9カ月)。(ベビーベッドも設置された沖縄県議会「てぃーだ平和ネット」会派室で)
県民が軍拡反対の意思を示した
山内末子(以下、山内) 憲法学者から政治家への初挑戦で、何もかもが初体験の選挙戦だったと思いますが、振り返っての感想を伺います。
髙良さちか(以下、髙良) すべてが初めての経験でした。しかも、最近の首長選挙では「オール沖縄」の敗戦が続いていた中での選挙です。出るからには絶対に勝たなければならない選挙だというプレッシャーを抱えながらの選挙でした。暮らしや物価高対策に基地問題など争点は多岐にわたる中、負けてしまったら県民が辺野古容認に転じたというお墨付きを与えてしまうのではないかという、非常に危機感を感じながら闘っていました。
山内 全国的に争点が物価高対策、経済対策という中で、基地問題とくに辺野古基地建設について最近の選挙ではぼかす、あるいは争点ずらしをする傾向がありました。さちかさんは今回、明確に反対の意思を示して闘いましたが、その意図についてお聞かせください。
髙良 辺野古問題は裁判で敗訴となり、現状は土砂が投入され工事が止まらない。終わった問題だというイメージがあるので、特に若い世代に選挙で訴えた時にどう受け止められるか不安でした。しかしきちんと争点にし、問題を浮き彫りにする。言わなければ伝わらない。そう思って工事の正当性やこのような税金の使われ方が果たしていいのか? それを糸口にして、問題が浮き彫りになっている性被害の問題や社会の中で長きにわたり女性の人権がないがしろにされている日米地位協定の問題など、説得力を持って訴えてきました。
また、戦争準備、軍備強化への反対を強く訴えました。沖縄、南西諸島をはじめ、日本全体に広がっているこの問題を、自分事として受け止める仲間を広げたい。そういう仲間が増えてきたことはとても重要だと思います。国会でそういう仕事をしっかりやっていきたいですね。
選挙現場に赤ちゃんや子どもたち
山内 今回、女性の皆さんの支持がとても多かったと思います。特に女性議員の応援が目立っていたように思いましたが、どうでしたか?
髙良 本当にそうですね。とてもありがたかったし、頼もしかったです。特に、儀保唯さんたち若い女性議員が子どもを産み育てながら公的な仕事をこなし、選挙でも一生懸命に街頭で訴える姿には私も勇気づけられました。市民から特に同世代の女性の皆さんからも共感を得られたと思います。赤ちゃんがそばにいて子どもたちがそばにいる日常…それが選挙の現場にある。子どもたちのために闘っている女性議員の緊張感がとてもよく伝わってきました。
山内 「さちかさんを国会へ送ろう」との若い議員の頑張りに勇気づけられたというさちかさんです。唯さんは街宣活動しながらおむつを替えたり授乳をしたりと、これまでにない選挙のスタイルでしたね。県民からの評価も高く、注目が集まりました。
唯さんは特に沖縄県議会で初の産休を取った議員ですね。会派室にもベビーベッドが置かれて、子育て出勤をしている議員です。今回の選挙にかけた思いを伺います。
儀保唯(以下、儀保) さちかさん自身が小学校一年生の母親です。子どもにとっては環境が変わる怖い時期ではなかったのかなと思います。本来ならいつも子どもと一緒にいたい時期ですよね。そうした中で選挙に出る決断をされたことを、同志として応援したいと思いました。
実は選挙期間中だけでなく、支援者からもよく言われることがあるんです。それは「子育てしながら働く女性、前に出ている女性は恵まれている。旦那さんの理解がある。実家の支援がある。仕事がある。正社員だから働けているんだ」という言葉ですね。それが頭から離れないんですよ。
「恵まれているから仕事ができる」と言われない社会、どんなことがあっても女性がやりたいことが当たり前にできる社会をつくるのが政治の役目だということを、さちかさんを通して、またこの選挙を通してより強く深く考えるようになりました。なので一生懸命応援しました。
男に遠慮しなくて いいんだよ
山内 やる気があっても周りの理解が得られず、社会進出・政治の道を断念せざるを得ない女性もいます。周りの環境を整備する制度をつくる必要がありますね。これにどう取り組んでいけばいいでしょうか?
髙良 今回の選挙の選対で全体を見渡していたのが山内末子さんでした。女性が全県的視野で選挙をつくってきたわけで、政治現場の成長だったと思います。沖縄にとって画期的でした。これからも全体を見渡せる視野をもった女性議員を増やしていきたいですね。市町村議員を育てていきたい。
女性議員を増やすためには、大きなテーマでなく身近なテーマ、たとえば水の安全や生活に根差した活動に、女性たちが参加する機会を増やしていくことですね。それらの活動を議員の誕生へつなげ、制度を変えていくステップアップにしていきたい。今回、ある女子学生から「さちかさんのチャレンジ・当選によって、女性だからといって遠慮しなくていいんだ。男性によって妨げられたことを希望に変えていいんだ」と言っていただいたことは、とてもうれしかったですね。
女性活躍のため 実効のある法整備を
山内 社会で活躍したいとの思いはあるが、家族の理解や職場の理解、地域の理解が得られないという女性も多いと思います。そういう環境を改善していくためにどうしたらいいのか。現場を経験する中で、どう感じていますか。
儀保 私たち女性は常に多くを求められ過ぎていると思います。子育てもしなければいけない、働かなければいけない。女性に対して社会も個人も求め過ぎています。
私が産休を取った後に議会に復帰すると、同僚男性議員から「子育てを言い訳にするな」と言われました。私は言い訳と言われないように、より頑張らねばならないんでしょうか? こうした発言は、家事・育児を女性が担うのは当たり前という意識の表れです。家事・育児が社会の中で認められてないということです。
議員の仕事、子育て・家事の仕事、他のすべての仕事が対等であるという意識に改革していかねばならないと思います。それにはやはり男性の働き方改革が必要なのではないでしょうか? 子育ても仕事も同じ評価が得られるという視点がとても大事ではないでしょうか。
女性活躍社会が言われますが、女性たちはきちんと家庭でも活躍しています。家事は活躍の場ではないのか、と言いたいですね。女性活躍社会と言えるための制度の確立、国の法整備をさちかさんに取り組んでいただきたいと思います。女性活躍推進法など法律はいろいろあっても、それが実行されてない現状があります。
山内 無理にでも義務付けることが必要ですよね。最近は企業でも、育休などの取り組みが強化されてきていますが、やはりまだまだ一般的ではないですよね。それを広げていくにはどうしたらいいんでしょうか。
儀保 育休を取る人が堂々と取りやすいシステムが必要ですよね。休んだ人をカバーすることも大事。財政的支援等も必要だし、いろいろ考えていきたい。さちかさんが国会でどんどん風穴を開けていってほしいと思います。さちかさんの力がとても必要です。
沖縄の現実を国会で 訴えたい
山内 今度の参議院選挙では、全国的に参政党などの躍進が目立ちました。沖縄も同様な結果が出ていますが、俗に右傾化と言われる政党、そのことについての意見を聞かせてください。
髙良 参政党がここまで躍進したことに驚きましたし、怖いと思いました。沖縄政策から見ると暮らしや物価高対策、辺野古新基地建設反対とも言っており、県民の求めに応えた政策を出しています。ただ果たして、参政党が主張している安全保障政策や排外主義、不平等を多くの人が望んでいるかというと、そうではないのではないかと思います。国会でどのような議論になるのか、理性的な対応が求められてくるかと思います。他方、既存政党の伸びが危機的状況であるのはとても悩ましい。
儀保 参政党がまずは生活を第一に訴えたことが県民には響きやすかったと思います。自分の生活に余裕がないと他のことが考えにくいですよね。余裕がないと戦争のこととか考えにくいのが現状なんですね。
参政党の排外主義的な主張については、「人権って何?」ということを考えるきっかけにもなったのではないでしょうか。理解が得られているということとは違うのではないかと思います。
国が人権を侵害すると、その被害は大きいんですね。政治を身近なものにして、私は法律家として、さちかさんは憲法学者として、人権を大事にする社会をつくりたい。日本の教育は人権についてはなってないと思う。人権の成り立ちをわかりやすく伝えるさちかさんとともにやっていきたいですね。
生きることを政治の真ん中に据えて、 議会で政治家としてどういう方向性を持って活動していくのか。女性が選挙に出ることに対しては、たくさんの課題ややりにくさがあるのが現実ですが、女性議員を増やすことが大事です。そのためには自分がやってみせることが大事だと思っています。その姿を若い人たちに見せるだけで、勇気を与えることになると思う。末子さんたち先輩からつないできたことをやはり数を増やしてつないでいきたい。それが私の大きな役目だと思っています。
山内 最後に、さちかさんに国会議員としての意気込みを伺います。
髙良 憲法学者としての研究から、実践者として国会で仕事ができることに喜びを感じています。憲法が保障する権利を一つ一つ丁寧に、人権を守ることが生きやすい社会になるということをわかりやすい言葉で説明をしていきたいですね。
国民の人権を守る。国民の理解を得る活動をする。かみ砕いた言葉で伝えていく。人権をよしとする社会にする。沖縄の歴史がずっと人権がないがしろにされてきたことをしっかり国会で訴えたいと思います。
「生きるを政治の真ん中に」このキャッチフレーズは政治家髙良さちかの原点です。憲法が生きる社会、だれもが生きやすい社会の実現に向け全力で頑張っていきます。