自立の国を実現しエネルギーと食料の自給確立へ
『日本の進路』編集部
米・イスラエルによるイラン侵略戦争は、世界を危機事態に直面させ、激変を促している。
目前の対処でも大変だ。英国フィナンシャル・タイムズは5月20日、「世界エネルギー危機、近づく臨界点」と題して論評し、すでに世界の80カ国近い政府が「危機がより危険な新局面に入りつつあるなかで経済を守るため緊急措置を進めている」と伝えた。
日本の輸入原油は一次エネルギー供給の4割を占めるが、その95・4%を中東に依存する。この危機はわが国経済の根幹を揺らす。ところが高市政権は根拠なく「供給を継続できる見込み」と逃げ続ける。すでに運輸部門やナフサなどの供給不足や価格高騰、結果としての製造業で生産調整も始まるなど、影響は広範な領域に広がっている。
また、国際的に取引される肥料の約3分の1がホルムズ海峡を通過する。WFP(世界食糧計画)は、この戦争によって世界の飢餓人口が過去最高レベルの3億1900万人を上回ると警告する。すでにEU(欧州連合)では「食料安全保障は肥料の安全保障から始まる」と、肥料の域内生産拡大と備蓄に乗り出している。
日本はそもそもカロリーベースの食料自給率38%とただでさえ低い。肥料が止まり生産を支える石油の高騰も重なり深刻な事態も予想される。
そうでなくとも気候変動危機は地球環境とわが国の農業生産や国民生活も危険にさらしている。化石燃料依存のエネルギー政策の限界だ。
われわれはこの戦争のもたらした危機を、チャンスに変えなくてはならない。再生可能エネルギーへの転換、食料もエネルギーも国内自給体制確立を実現する時だ。
時あたかもコロンビアで4月下旬、「化石燃料からの移行に関する第1回国際会議」が開催され、日米を除くG7諸国など50カ国以上が参加した。「脱炭素」へ各国が支え合う画期的な会議となった。
危機の時代の真っただ中の今、食料とエネルギーの自給・安全保障確立は国民生活防衛と国家存立のための喫緊の課題である。
夏から秋さらに深刻な影響
当面、特にナフサ不足と価格高騰への危機感が高まっている。ナフサの取引価格は2月末から1カ月で2倍に急騰し、高止まりが続く。
ナフサは、主にプラスチックや合成繊維などの「石油化学製品」の原料となり、生活に欠かせないプラスチック容器など日用品から包装材、医療用品、農業資材、自動車部品や家電、建材などの工業製品まで幅広く素材となって国民生活の中に深く浸透している。
人工透析回路など医療用品の不足により緊急治療が滞りかねない事態で、生命の問題にも直結する。また、食品トレーなどの容器や食品包装用フィルムの値上げや不足による食品価格引き上げや供給低下が国民生活を直撃している。
農業への影響も重大だ。すでに農業資材や肥料などの値上げも始まっている。肥料に欠かせない尿素はナフサ同様で通常の倍以上の価格で取引されており、農家経営を圧迫する。
価格高騰に円安も重なって海外への支払いも増え、国民の負担増だ。
夏から秋、さらに冬、「油断」の危機的事態も考慮しなくてはいけない。
食料とエネルギーの安全保障という戦略的中長期の根本的対策とともに、目前の国民生活と経済への緊急対策も重要な課題だ。
米国に破壊された「自給」
イラン戦争が暴き出したわが国エネルギーと食料のきわめて危機的状況は、戦後自民党の対米従属政治の帰結にほかならない。
国民の命の源、食料供給。戦後復興を基本的に終えた1965年には食料自給率(カロリーベース)は73%あった。コメは基本的に100%以上の自給だった。わが国は食料自給が基本的にできていた。それが今や38%にまで低下した。
日本は島国で、国土面積が限られ、農地面積も狭く、海外のほうが大規模で効率がよく、輸入は当然かに言われるがそうではない。
鈴木宣弘教授(広範な国民連合代表世話人)が繰り返し暴露しているが、食料自給率が下がった最大の原因は、日本を支配した米国が日本を米国産農産物の一大消費地に仕立てあげようとしたことにある。米国で生産過剰で余剰となった小麦を売るために、「米を食うとバカになる」という主張が載った本を、「回し者」に書かせるということすらやった。輸入小麦のパンと脱脂粉乳が基本の学校給食も始まった。
莫大な補助金付きで生産された小麦などの輸入が急増し、わが国ではコメ消費量が減少、生産過剰となった。
エネルギー自給。これまた日本は資源がないから自給は無理、輸入が当然と普通に考えられている。学校教育もマスコミもそうだ。
だが、第2次世界大戦前のエネルギー自給率は80%前後、石油だけが基本的に海外依存だった。戦後は1960年に自給率はおおよそ60%で、ほぼ石炭と水力が構成した。
石炭生産は60年ごろがピークでわが国エネルギー源の約55%だった。
ところが「エネルギー革命」のかけ声の下に、第2次中東戦争を通じて米国系メジャーが押さえた中東産原油の輸入が急増する。輸入量は60年代の10年間に5倍化した。北海道や九州に多くあった炭鉱は閉山に追い込まれ、最盛期45万人の炭鉱労働者が職を奪われた。
米国は、石油火力に続いて、原発も日本に押しつけた。だが、周知のように3・11の悲劇的破局を迎える。事故から15年経過しても、いまだ廃炉への道筋すら見通せない。他方、再稼働が進められるが、「核のごみ」の最終処分のめどはまったくない。
今こそ米国のエネルギー支配、食料支配から脱却しなくてはならない。
地域自給で繁栄の地域・日本
エネルギーと食料の自給体制確立への転換が急がれている。
輸入依存の化石燃料依存脱却の鍵は再生可能エネルギーの拡大にある。
地域環境と調和する太陽光や風力、地熱発電などもっと進めなくてはならないが、ポイントは水力だ。
水力は非枯渇性の再生可能エネルギーであり、日本の利用可能な水力資源は中国、米国、カナダ、ブラジルに次いで世界第5位の規模である。1960年にはエネルギー源の15%(総発電量の51%)を支えていたが、その後、黒四ダムを最後に大規模な増強はない。国内最大のエネルギー源であり今こそ利用を追求すべきだ。とくに小水力発電は低コストで地域のエネルギー自給に貢献できる。
また、陸地面積に占める森林の比率・森林率はOECD加盟国の中で第3位。森林はわが国の貴重な資産であり、エネルギー源としても重要で、薪炭の利用とともに、地域資源活用のバイオマス発電をもっと進めなくてはならない。
エネルギーの地域自給確立は、地方、地域の自立的発展のカギとなろう。
食料自給では、日本農業を支えてきた小規模・家族農業への支援を厚くすることが近道だ。国連が食料安保に不可欠な存在と位置づけていることからも明らかだ。所得補償政策による農業経営支援が不可欠で、地域一体となった地産地消の推進も重要だ。
地域や集落でエネルギー・食料自給を確立することは、米国や大企業からの地域と国民生活の防衛になる。
今こそ、エネルギー・食料の地域自給体制確立に転換すべきだ。
