瀬戸際の日本農業と百姓一揆

日本の食を守るため、再び立ち上がる時が来た

 
令和の百姓一揆事務局長 高橋宏通さんに聞く
 
 
 
 
 「令和の百姓一揆2026」が3月29日に迫った。編集部は実行委員会事務局で奮闘する高橋宏通事務局長に2月9日、インタビューした。
 
 令和の米騒動で消費者の農業に対する関心が高まりました。ただ米高騰で「農家は儲かっているのでは」「もっと大規模化すれば」などさまざまな意見があります。農家の実情を知ってほしい。

 農家は政府の農業政策に振り回されてきました。とくに米政策は戦後の食糧難から増産、食生活の洋食化も含めて減反政策、米国からの要求で農畜産物自由化が進められました。全体として、工業製品を輸出する貿易立国が柱で、輸出産業を促進するために農業は犠牲になってきました。食料は輸入に頼ればいいと食料自給率は年々下がり先進国のなかで最低レベルとなっています。その結果、農業では生活できなくなり、農家の減少、高齢化、耕作放棄地の拡大など、農業・農村は衰退し、食料自給率は1965年の73%から38%まで低下し続けています。最近の米騒動で「増産」と言われたのに、需給に応じた生産へと転換してしまいました。
 さらに世界的な気候変動による酷暑や台風などの災害、異常な円安による肥料、燃料、飼料などのコスト増も重なり、農業の衰退は加速しています。米だけでなく野菜、畜産物、果樹などの農家の数は激減、平均年齢は70歳近く、このままでは日本から農業者(百姓)がいなくなってしまうという瀬戸際まできています。
 お米だけでなく、日本の果物が食べられなくなるとか、牛乳が飲めなくなるとか、野菜が食べられなくなるとかという危機です。国民の命の問題です。気候変動や紛争など世界的な食料危機が言われる中、いつまでも輸入に頼ることはできません。
 農業・農村の衰退を止め、国産の食料を守ることを国民全体に訴えるために、昨年3月「令和の百姓一揆」を立ち上げ、東京でトラクターと4500人の行進を行いました。以来、全国26都道府県で令和の百姓一揆実行委員会が結成され、百姓(農業者)の声を伝える取り組みが広がってきました。この1年間、農業や食料について各地で農業者と消費者の連携・理解が進んできたことも成果だと思います。また各政党の皆さんの協力も進んだと思います。

農業の特殊性

 農業は工業などと比べて特殊性があります。なによりも国民の命にかかわる食料です。とくに紛争や世界的な気候変動により輸入が途絶えると国民は食べること、生きることが難しくなります。国産を増やして自給率を上げることは何よりも大事です。最近の物価高、とくに食料品の高騰は深刻です。貧困の拡大もあります。
 さらに農業は、気候や土地条件などに大きく影響されます。普通のサラリーマンなら時給いくら、月給いくらと分かって働いています。農家は朝から晩まで働いて作物を作っても、いくらで売れるか分からない、働いても収入が保証されていません。農産物価格を市場原理のみにゆだねることは農家の収入減につながります。豊作になってたくさんとれたと思っても価格が下落し箱代にもならないことも多々あります。いわゆる「豊作貧乏」です。不作になれば価格は上がるが、生産量が少ないので手取りは増えない。基本的には単価×生産量が売り上げです。ここから機械代、肥料、燃料代、飼料など経費を引けば、手元にほとんど残らないばかりか、赤字になることもしばしばです。
 土地条件で言えば、大規模化できるところはいいですが、日本の農地の多くが大規模化しにくい中山間地です。平地だけでは米の需要をまかなうことはできません。そもそも大規模化に伴う効率にも限界があると言われています。いま大規模化している米農家や酪農が安泰とも言えない状況があります。
 農水省が推進する「スマート農業」、全面否定はしませんが、これ以上農家を借金漬けにしないでほしい。また、「乾田直播栽培」(畑状態の田んぼに直接稲の種を播く栽培方法)も推進されています。除草剤などでコーティングした籾をドローンで空から播くわけで、省力化にはなるかもしれません。米国などの種子メーカー・薬品メーカーの利益にはなりますが、安全安心な食料という観点からいかがなものか。唯一連作障害が起きない水田があるのに、農水省の「みどりの食料システム戦略」に逆行します。
 農業者はわずかになれば、農道整備、用水の水管理もできなくなります。集落人口が減れば、学校、商店、鉄道など維持できなくなります。農地や山林の放置が災害の拡大や熊など害獣被害が広がっています。中山間地農業や小規模農業を維持・支援して、農業を中心に第一次産業が成り立つ地方政策が大事です。都会だけでは社会は成り立ちません。
 

持続可能な農業こそ  国民の命を守る

 令和の米騒動で「生産者は喜んでいるじゃないか」という声があります。ここ何十年も低米価で苦しんできた生産者が一番望むのは、長期的な政策、つまり持続可能な安定的な農業政策です。あまりの高値に消費者の米離れを心配している農家が多々います。それがなければ、機械の導入などもできませんし、ましてや新規就農者も増えません。。
 令和の百姓一揆は、「すべての農家に所得補償を」と訴えています。農家が持続して生活できるよう国が一定の所得補償をする。そうすることで消費者が安定した価格で農産物を買える。つまり、所得補償は、生産者が赤字経営で苦しんだり、消費者が価格高騰で苦しんだりしない、両方の利益となるものです。農業の現状と所得補償の必要さを、全国の消費者の皆さんへの理解を深めたいと思っています。
 命にかかわる食料を市場原理に任せるのは危険です。食料は投機の対象にさせてはならないと思います。不作の時、誰かが買い占めをすれば消費者がいちばん被害を受けます。
 貧困問題も深刻になっていますから、国内の食料生産を促進し、自給率を上げ、国民全体にまんべんなく、食料が行き渡る食料システム、食料安全保障の確立が大事です。
 いまの農政は現場の農家の声がほとんど反映されていません。農家の声を農政に反映させることが最重要課題です。

再びの決起を、農業者と消費者の連携を

 3月29日、令和の百姓一揆2026を行います。昨年同様に、日本農業・農村の衰退を止め、「日本の食と農を守ろう」をスローガンに、すべての市民が安心して国産の食料を手にするために「すべての農家に所得補償」を求めます。生産者と消費者のいっそうの連携強化をめざします。
 会場は昨年と同じ、青山公園南地区・多目的広場です。トラクターは5、6台で先頭に軽トラも含めたパレードと思っています。また、提灯行進を計画しています。午後2時半集会開始、4時にトラクター&軽トラ出発、人の行進は5時からの予定です。
 あわせて、全国各地でも東京と同時開催を呼びかけています。
 さらに、地方議会での農業と食料を守る趣旨の意見書採択運動も進めていきたいと思っています。
 皆さん! 一緒に立ち上がりましょう。(インタビュー・文責編集部)