大討論2026

弱肉強食の世界に抗う

外交は戦争の芽を摘む闘い

新外交イニシアティブ(ND)代表 猿田 佐世さん

 私たちがいる世界は一言で言うと弱肉強食の世界が進みつつあるんですね。それをトランプさん風に言いますと、ピース・ストレングス(力による平和)。これは弱肉強食のことです。
 その弱肉強食の世界にどのように抗って、日本を私たちが住みたいと思う国にしていけるのかどうか。外交とはそういう闘いだと思っています。
 この弱肉強食の世界の中で、大事にしなければならない思考の軸は、軍事力強化か外交重視かです。今の日本政府の基本政策は、日米と同志国で中国を囲い込んでいくもので、軍事力を強化していく方向です。
 日本はなぜ中国を敵対視しているかというと、民主主義陣営であるわれわれは、権威主義陣営である中国に対峙しているんだと。権威主義の方が悪いということが前提になっているわけですね。そのために東南アジアのASEANの国々と手をつないで頑張ろうということになる。
 しかし、東南アジアは中立です。アメリカと中国のどちらの側にも立たないで、うまくバランスを取りながらやっています。しかし徐々に、やっぱり中国の方が経済的に重要だし大事だということで、中国に傾いています。
 アメリカはベネズエラやグリーンランドでああいうハチャメチャなことをやっている。権威主義なのか民主主義なのかわかりませんよね。ヨーロッパの主要国も極右化が進んでいて、全部トランプさんみたいな政治になる可能性があるんです。
 普遍的価値(人権・民主主義・法の支配)を守るのが民主主義ですよね。強者は守らなくても強いわけだから、これは弱者を守るための概念です。憲法9条を持つわれわれとしては、「力によらない平和」を普遍的価値の1丁目1番地にしていかなくてはいけない。
 こうした世界の中で外交の役割は何でしょうか。戦争は防げない場面もあるのかもしれない。でも戦争が起きないような環境を最大限整備し、戦争の芽を摘んでいく。そのためには各国間の信頼醸成と相互依存の促進が大事です。
 中国とは経済でものすごくつながっているので、関係を切ろうと思っても切れないんです。日本製品の中に中国の部品が細かく入っているんですね。それ抜いたらめちゃくちゃ困るんです。レアアース止めると言われて、あんなにビビっている日本政府。
 切られて困るなら、切られるようなことするなって話です。政府は経済安全保障といってどんどん切る方向に進んでいるけれども、違うんです。お互いが欠かせない存在になることこそが安全保障なんです。
 高市政権は中国との外交をちゃんとやってくれていませんが、政府以外でも外交に大きな影響を及ぼすことができます。核兵器禁止条約は、市民がつくった条約と言われていますね。市民でも条約をつくることができる世界なんです。だから民間のレベルで外交を推進していきましょうよ。そういうマルチトラック(重層)外交を提言しているのが私の団体です。
 弱肉強食の世界で、日本は「強」の側にいるふりをしていますが、日本は「弱」なんです。それでも幸せに暮らしたいのであれば、弱肉強食に対峙していくことが必要です。
 軍事力によらない平和を推進していかなくてはならないんです。そのためには日本の国内で、民主主義や人権や法の支配が守られるような国をつくっていくことが、外交を進めるうえでも極めて重要です。